コラム

日本語教師として海外で働くには?条件や必要なものを解説

2023.05.15

海外で働く日本語教師イメージ

「日本語教師として海外で働くために必要な条件は?」
「海外では日本語教師の需要はある?」
「海外での日本語教師の働き方は?」

近年、世界中で日本語教育の必要性が高まっています。
日本語教師という仕事を聞いたことはあっても、日本語教師になるにはどんな資格が必要か、また仕事内容はどんなものなのか分からない方も多いのではないでしょうか。

国や地域によっては、日本語教師の需要が高騰し、好待遇で働ける機会も増えてきています。

本記事では、海外での日本語教師の需要とその働き方、そして外国で日本語教師として働くために必要なものについて紹介します。

海外での日本語教師の需要

近年、海外における日本語教師の需要は高まり続けています。
昨今、日本における労働者不足が顕著なことであるという課題に対し、外国人労働者を積極的に受け入れようとする動きがみられることが、大きな要因の一つです。
国際交流基金が行った「2021年度海外日本語教育機関調査」の最新結果によると、そのなかでもとくに日本語教師の需要がある地域は、以下の5つです。

  • 北米
  • 東南アジア
  • 東アジア
  • 太洋州(オセアニア)
  • 西欧

各地域ではどのような需要があるのか。
ここからは、日本語教師の需要が高い5つの地域について、日本語教育の需要の現状について解説します。

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北米

北米(アメリカ・カナダ)における日本語教育は、約8割が外国語選択科目として日本語を指定している公立・私立の中学校、高校や大学で行われています。

北米では、教育機関数、教師数、学習者数全てにおいて圧倒的に(8割以上)アメリカの方が多いですが、10万人あたりの学習者数はカナダの方が多いことが2021年度の国際交流基金の調査からわかっています。
また、日本語学習の目的に「アニメ・マンガ・J-POP・ファッション等への興味」、「日本語そのものへの興味」、「歴史・文学・芸術等への関心」の3つを挙げている人が80%以上であるのが特徴です。

東南アジア

世界中で日本語教育の需要が最も高い地域が東南アジアと東アジアです。
まずは東南アジアから見ていきましょう。

2021年に実施された国際交流基金による「海外日本語教育機関調査」によれば、地域別日本語教育機関数において、東南アジアは約30%を占める結果となり、東南アジアにおいて多くの日本語教育機関が設置され、多くの人が日本語を学んでいることがわかります。
上位3か国は、インドネシア、タイ、ベトナムで、特にインドネシアでの学習者数は東南アジア全体の60%を占めています。

この地域で日本語を学ぶ人たちの目的は、「日本での将来の就職」が約5割、「自国内での現在の仕事・将来の就職」が約4割と日系企業の進出や外国人技能実習生の増加により、コロナ禍以降も日本語教育の需要は高まり続けています。

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東アジア

東南アジアにならび日本語教育の需要が高い地域である東アジアでは、日本語教師の数は全世界の約52%、学習者数は約45%と日本語教育が盛んである現状が見られます。

特に、中国では国際交流基金による2018年度の調査に比べて、最新の2021年調査では日本語教育機関数、教師数、学習者数の全てが増加し、世界第1位となっており、日本語教育ができる人材に対するニーズが高まっています。

この背景には、中国の大学入試センター試験(高考)において、外国語選択科目として日本語が加えられ、日本語を学習する高校生が増加したことがあります。

大洋州(オセアニア)

2021年の国際交流基金の調査によると、大洋州(オセアニア)地域の日本語学習者の98%が、オーストラリアとニュージーランドの2か国で勉強しています。
オーストラリアの日本語学習者は約41万人にのぼり、中国(約100万人)、インドネシア(約71万人)、韓国(約47万人)に次いで4番目です。
くわえて、人口10万人あたりの日本語学習者人口は1,751.2人であり、世界第1位となっています。

大洋州(オセアニア)地域で約95%の人たちが、小学校から高校までの学校教育機関で日本語を勉強しています。

西欧

2021年の国際交流基金の調査によると、この地域ではフランス、イギリス、スペイン、ドイツの4か国で日本語教育機関数、教師数、学習者数の上位を占めています。
また、この地域では、大学などの高等教育機関で日本語を勉強する人が約4割、学校教育機関以外で勉強する人が約3割を占めています。

日本語を勉強する目的も、「アニメ・ マンガ・J-POP・ファッション等への興味」(82.8%)、「歴史・文学・芸術等への関心」(79.4%)、「日本語そのものへの興味」(78.4%)の順となっているのが特徴です。

海外の日本語教師の働き方

海外での日本語教師の需要が分かったところで、ここからは実際の働き方を見ていきましょう。
海外で日本語教師として働く場合には、大きく3つの働き方があります。

  1. ① 現地の日本語学校・大学の講師
  2. ② 小、中学校、高校の講師
  3. ③ 現地企業内での日本語講師
  4. ④【番外編】ボランティア

働き方① 現地の日本語学校・大学の講師

海外で日本語教師として働き始めるとき、もっともメジャーな方法として、現地の日本語学校や大学で日本語講師として働く方法があります。

必要となる資格や採用条件もさまざまであるため、自分のスキルやキャリアに応じて求人を絞り込み、採用情報をこまめにチェックしながら就職活動を行う必要があります。

働き方② 小・中・高校の講師

義務教育のなかで選択外国語科目として日本語を指定している国も多いので、そういった国で小、中、高校の講師として働くことも、日本語教師として働く方法のひとつです。
但し、その国の小、中、高校で「仕事として」教える場合は、通常現地の教師が学校に勤める場合と同様、その国の大学で教職課程を履修後、卒業資格を取得するなど、各国において定められた経歴や資格の条件を満たす必要があります。

働き方③ 現地企業内での日本語講師

現地にある企業に直接採用されて日本語講師としてその企業で働く人たちに日本語を教える方法があります。
この場合でも「日本語教育の専門的な勉強をしている」ことが採用の条件となることがほとんどですので、自分のライフスタイルにあった方法で、日本語教師としての資格を取得しておきましょう。

④【番外編】ボランティア

「働く」とは少し違いますが、海外で日本語を「教える」ことが目的なら、日本語教師として日本語を教えながら、海外の文化や外国語を学びたい場合は、ボランティア団体の派遣スタッフとして日本語を教える方法もあります。

ボランティアとして教える場合にも、採用の際には日本語教育についての知識や技術・資格が問われる場合があるので、採用情報を詳細に確認しましょう。

日本語教師が海外で働く際の年収

海外で働く場合、給与はその国の通貨で、その国の給与水準に基づいて支払われるのが一般的です。
また、海外で働く場合はその国の「就労ビザ」が必要ですが、日本語教師としての就労ビザが発行されるということは、そこで得る給与でその国で生活していけるということを意味しています。

海外での日本語教師の仕事内容

海外で日本語を教える場合も、日本で教える場合と同じように、学習者の習熟度や理解度に合わせて、個別の学習方法を考慮しながら日本語を教えることが仕事内容です。

海外の人に向け、日本語の発音や複雑な文法をわかりやすく解説するため、教師自身の高い技術が必要とされる仕事です。
また、より実践的な日本語を教えるために日本文化を紹介する時間も必要とされるため、学習者のニーズや学習状況に合わせ適切な学習内容を構成する必要があります。

<関連記事>日本語教師とはどんな仕事? 需要や向いている人の特徴を解説

日本語教師が海外で働くための条件

募集要件により採用条件はことなりますが、一般的に海外で日本語教師として働く際に必要とされる資格や条件には大きく4つがあります。
ここからは、日本語教師が海外で働くための4つの条件について紹介します。

  1. ① 経験年数
  2. ② 年齢
  3. ③ 学歴
  4. ④ 現地の言葉の習熟度

自分の現状や保有する資格などをしっかりと把握したうえで、採用条件を満たす日本語教育機関を選びましょう。

経験年数

海外で日本語教師として働く場合、経験年数や経歴内容が採用条件となる場合もありますが、未経験者歓迎という求人も多くあります。
必要な経験年数は、教師募集をしている教育機関により異なるため、応募したい学校などの募集要件をしっかり確認しましょう。

年齢

海外における働き方として「年齢以上に実力が優先される」といった考えが日本では浸透している一方で「何歳以上何歳未満」といった明確な年齢基準を設けている求人も多く存在します。

周りの教職員とキャリアを合わせるため、採用対象に年齢上限が設けられている場合もあるため、応募する際には年齢条件についてもしっかり確認しましょう。

学歴

採用条件として「4年制大学卒業」などの学歴を指定する場合が多くあります。

すでに国際結婚などによりビザ取得を済ませている場合を除き、海外就職には就労ビザが必要であり、多くの国で語学教師の就労ビザ発給に学歴条件を設けているためです。

基本的には大卒資格が求められ、高卒などの場合には追加で職歴や技能が必要とされる場合があります。
但し、日本語教師としての就労ビザの発給条件は国ごとに異なりますので、働きたい国が決まっている場合は、事前にその国の就労ビザ発給条件を調べておくことが大切です。

現地の言葉の習熟度

海外で日本語を教える場合、その教育機関が「日本語を日本語で教える方法(直接法)」を採用しているか、「日本語をその国の言葉に訳して教える方法(間接法)」を採用しているかによって、現地の言葉の習熟度が求められるか否かが変わります。
直接法を採用している教育機関では外国語力はあまり問われませんが、間接法を採用している教育機関では、その国の言葉を使えることが求められます。

現地の言葉の習熟度を採用条件にしているか否かは、募集要項に記載されていますので、しっかり確認しておきましょう。

日本語教師が海外で働くために準備したいこと

日本語教師として海外で働くために準備したいことは、以下の3つのうちのいずれか一つです。

  1. ①大学または大学院において「日本語教育に関する教育課程」を主専攻(45単位)または副専攻(26単位)し、卒業する。
  2. ②日本語教師養成講座420時間カリキュラムを受講し修了する。
  3. ③日本語教育能力検定試験に合格する。

海外で働くことを考えている人は、しっかりと必要な準備を行ったうえで就職に臨みましょう。

大学または大学院において「日本語教育に関する教育課程」を主専攻(45単位)または副専攻(26単位)し、卒業する

海外で日本語教師として働くためには、日本語教育について専門的な勉強したという証明が必要です。その専門的な勉強は、大学、大学院でできます。

具体的には、大学または大学院の日本語教育課程において、主専攻45単位、副専攻であれば26単位の取得が必要です。

日本語教師養成講座420時間カリキュラムを受講し修了する

日本語教育についての専門的な勉強をしたということを証明する二つ目の方法が、420時間の日本語教師養成講座修了です。
文化庁に認定された一般の日本教員教師養成機関で、およそ420時間の講座を受け、修了します。

養成講座の受講には50万円から60万円ほどかかるのが一般的で、通学受講でなく、オンラインで受講可能な講座もあります。

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日本語教育能力検定試験に合格する

専門的な勉強をした日本語教師であることを証明する3つ目の方法が、日本語教育能力検定試験に合格することです。

多岐にわたる分野の知識について網羅的な理解が求められる日本語教育能力検定試験は、近年合格率は上昇傾向にあるものの合格率は約30%にとどまり、比較的難易度の高い試験とされています。

しかし、年齢や学歴など必要な受験資格はなく、出願すればだれでも受験可能な試験なので、受験ハードルは比較的低い試験です。
自らの日本語教師としての基本的な知識と能力を客観的な資格として証明できるので、日本語教師として働く場合にはぜひ合格しておきたい検定試験です。

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日本語教師の海外需要は増加している

今回の記事では、日本語教師になるにはどんな資格が必要か、特に海外で働く場合について解説をしてきました。
日本で働く外国人が増加していること、また、アニメ・ マンガ・J-POP・ファッション等に興味を持つ外国人が増えていることに伴い、国内外における日本語教育の需要は近年高まっています。
日本語を学びたいと考えている外国人が増えている現状に連動して、日本語教師にニーズはさらに高まっていくでしょう。

とくにコロナが終息しつつある今、日本語教師になるための準備を始めるにはちょうどよい機会だといえるでしょう。

人に教えることが好きな人、日本語や言葉に興味がある人、そして、外国の人との交流が好きな人は、ぜひ一度日本語教師を目指してみましょう。

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