日本語教師養成コラム

日本語教師になるには?求められる条件や向いている人&主な仕事内容

公開日:2023.04.06 更新日:2024.07.09

授業の風景

「日本語教師になる方法は?」「日本語教師に向いている人は?」
日本語は世界でも随一の難しさを誇ると言われていますが、進学や就職のため、日本の文化が好きだからなど、日本語を学習する目的はさまざまです。
本記事では、日本語教師になる方法や必要資格、日本語教師に向いている人の特徴を詳しく紹介していきます。
日本語を身につけたい方に日本語を教える「日本語教師」を目指している方は必見です。

日本語教師とは

日本語教師とは、日本語を母語としない人に日本語を教える仕事です。
義務教育で習う国語や、高校で習う現代文を教えるのとは異なります。
また、日本語教師という仕事は日本語を教えること以外にも、「日本の文化や慣習」を伝えるという役割があります。 日本で生活していくために言語以外に文化や慣習を学ぶ必要があることや、日本語を理解する上で文化や慣習の理解が欠かせないのです。 

日本語教師として活躍するには、学習者個々人の熟達 度や知識に合わせた学習計画を立てる力も求められるのです。

<関連記事> 日本語教師とはどんな仕事? 需要や向いている人の特徴を解説

日本語教師になるための条件

日本語を学習したい生徒は日本語学校に集まるため、日本語を教える場としては日本語学校が最も一般的です。しかし日本語教師の職場は、日本語学校だけではありません。 大学の留学生別科や、在日大使館なども就職先になります。
資格がない人でも、ボランティアやオンライン上で日本語を教えることができる場合もあります。
しかし、法務省告示校である日本語学校で教員として勤務する場合は、後述の3つの条件のいずれかをクリアする必要があります。
また、2024年現在、日本語教師は国家資格として動き始めました。同時に、移行措置期間もあるため、両方確認していきましょう。

<関連記事>日本語教師の基礎知識

日本語教師になるための3つの方法

国家資格の移行措置がある2024年現在、日本語学校で日本語教師として働くためには、以下の3つの条件のうち、1つ以上をクリアしていなければなりません。

  • ①日本語教師養成講座420時間カリキュラムを受講し修了する。
  • ②日本語教育能力検定試験に合格する。
  • ③大学または大学院において特定のカリキュラムを履修する。

以下ではそれぞれについて詳しく解説していきます。

方法①日本語教師養成講座420時間カリキュラムを受講し修了する

1つ目は「日本語教師養成講座」を修了するルートです。
「日本語教師養成講座」とは、文化庁が 認定する420時間の講座で、受講すれば日本語教育に特化した知識を身につけられます。 平均的な受講費用は約50万〜60万円で、 受講期間は教育機関によって異なりますが、およそ半年から1年間が一般的です。
また、講座自体は学歴問わず受講することができますが、日本語教師養成講座の修了だけで日本語学校に就職したい場合、前提 として4年制大学の卒業が応募条件となっています。
くわえて、文化庁が届出を受理している日本語教師養成講座の大半が通学制となっているため、受講者の生活スタイルによっては、少しハードなスケジュールを強いられることがあります。

しかし、なかにはビデオチャット機能を授業に採用したオンライン講座や、webからコンテンツを視聴する通信制講座を導入している教育機関もあります。通信制講座の場合はスクーリングが必要なケースもありますので、 受講形態についてはよく調べておくのがよいでしょう。

なお、同じ通学制の教育機関でも午前と午後のフルタイム制を選択できるところもあり、フルタイム制であれば3ヶ月程度の短期で修了が可能です。 自分のライフスタイルに合った受講形態を選択しましょう。
もちろん、修了するときは日本語教師として必要な素養が得られたときですが、就職活動のフォローなど修了後のサポートをしてくれる教育機関も存在します。アフターフォロー制度なども含めて調査が必要です。
ルネサンス日本語学院の日本語教師養成講座(eラーニング)では、手厚い就職サポートを行っています。

方法②日本語教育能力検定試験に合格する

2つ目のルートは「日本語教育能力検定試験」の合格です。
「日本語教育能力検定試験」とは、公益財団法人日本国際教育支援協会が例年10月に実施している試験で、日本語教員となるために学習している方、日本語教育に携わっている方に必要とされる基礎的な知識・能力を検定することを目的としています。
受講要件に年齢や学歴などの縛りは一切ありませんが、合格率は25~30%と比較的難易度の高い試験でもあります。

日本語教育能力検定試験の出題範囲は全部で以下の5つです。日本語教育に関する幅広い知識や能力が求められます。

  • ・社会・文化・地域
  • ・言語と社会
  • ・言語と心理
  • ・言語と教育
  • ・言語一般

受験料は17,000円で、日本語教師養成講座よりも安価です。
受験会場のある地域は東京や愛知、大阪を含め7ヶ所ですが、最新情報は公式HPJEES 日本語教育能力検定試験ホームをご確認ください。
教育機関によっては、日本語教師養成講座の修了と日本語教育能力検定試験合格の2つを応募条件として求められることもありますので、ダブルで取得しておくことがおすすめです。

<関連記事> 【2023年度版】日本語教育能力検定試験の合格点・合格率の傾向を徹底解説

方法③大学または大学院において特定のカリキュラムを履修する

大学または大学院で「日本語教育に関する教育課程」を主専攻(45単位)または副専攻(26単位)し、卒業することによって、方法で紹介した「大学における日本語教育の副専攻修了課程に当たる知識」の条件を満たすことになります。

日本語教師になるまでのスケジュール


ここでは、2つのケースを取り上げて日本語教師になるまでのスケジュール例を紹介します。

【日本語教師養成講座420時間カリキュラムを受講し修了するケース】

  1. 12月:必要のパンフレットや見学などの準備
  2. 1月~:講座に通う(6~12か月)
  3. 7月以降:終了修了

選択する講座によって通学曜日・時間帯などが異なるため、自分が無理なく通えるものを選択しましょう。

【日本語教育能力検定試験に合格するケース】

  1. 1月~:独学で知識を付ける/試験対策講座の受講(約3~9カ月)
  2. 10月:日本語教育能力検定試験受験
  3. 12月:合格発表

試験対策講座の受講は必須ではありませんが、合格率を高めるためにぜひとも検討したいところです。

【国家資格(登録日本語教員)に合格するケース】

  1. 12月:必要のパンフレットや見学などの準備
  2. 4月~:日本語教師養成講座420時間カリキュラムに通学しながら学ぶ(約6カ月)
  3. 7~8月:日本語教師養成講座420時間カリキュラム終了修了
  4. 11月:国家資格試験 の受験
  5. 12月:国家資格試験 の合格発表

日本語教師になるために教員免許は必要?

実は、日本語教師といっても、小中学校の教師のような公的な免許は存在しません。しかし、国外含め所属する教育機関によっては教員免許が必要です。小学校で教える場合は小学校の教員免許が、中学校であれば中学校の教員免許が必要になってきます。 海外でも同様です。
また、制度上は高卒でも日本語教師になることができますが、やはり教育機関によっては学士(4年制大学卒業)以上の学位取得を採用条件としている場合もあります。

2024年からは「登録日本語教員」を取る必要がある


2024年4月より、国家資格である「登録日本語教員」が誕生しました。
これに伴い、文科省が認定する予定の認定日本語教育機関(日本語学校など)
で働く場合には、登録日本語教員の国家資格を取得しなければなりません。

登録日本語教員の資格を取得するためには、養成機関が提供する課程を修了して応用試験に合格し実践研修を受けるか、独学で知識を付けて基礎試験・応用試験に合格し実践研修を受ける方法があります。

養成機関を修了するルートでは「登録実践研修機関兼登録教員養成機関」または「登録教員養成機関」が対象となり、修了すれば基礎試験が免除されます。

(図を掲載)

日本語教師に向いている人


日本語教師に向いているのはどのような人なのでしょうか。
単純に日本語が分かるからといって、日本語教師に向いているとはいえません。

以下の4つに該当する人は日本語教師が向いている可能性が高いです。

向いている人①日本語や日本の文化が好きな人

やはり、日本語自体に興味があって学べる人でなければ、なかなか日本語教師はつとまりません。
同じく、日本の文化が好きで愛着を持っている人は、日本語教師に向いているといえるでしょう。

日本語を教える立場になる場合、日本人が知っていて当然のことだけではなく、さらに深い日本語の特性や成り立ちといったものも理解しておく必要があります。

そのためには、日本語に対して強い興味を持ち、積極的に学ぶ意志が必要です。
時間を割いて勉強しなければならないことも多々あるため、そのための過程を楽しいと思える方は日本語教師が向いています。

向いている人②人に教えることが好きな人

教師という立場になる以上、物事を教えることに興味がある方に向いています。
人に教えるためには、自分自身が日本語を深く理解しているのはもちろんのこと、それをわかりやすく人に伝えるための力や工夫が必要です。

また、中には日本語の習得に苦労する学習者もいるので、そういった人にも寄り添いながら習得を支援する役割があります。
そのためには独自の教材を作ったり、一人ひとりに合わせた教え方を考えたりすることも重要です。

人に教えていて楽しいと感じる方や、人の成功を一緒になって喜べる人に向いています。
人と関わることが好きな人におすすめです。

向いている人③適応力のある人

日本語教師になると日本について詳しい知識のない人とコミュニケーションを取ることになるので、日本とは異なる考え方や価値観といったものを受け入れられる人でなければなりません。

そのため、適応力のある人に向いているといえるでしょう。
例えば、日本人の場合は授業が始まる時間には席についていて当然との習慣がありますが、外国人の学習者の中には遅刻や無断欠席が目立つケースもあります。

また、教師と学習者の間だけではなく、学習者同士で意見の衝突が起こってしまうこともあり、このあたりも教師としてしっかり支援していくことが必要です。
海外で日本語教師として働く場合も同様に適応力のある人が向いています。

向いている人④異なる文化や言語に興味をもてる人

日本語教師は、日本に対して強い興味や関心を持っているだけではなく、海外の異なる文化や言語といったものにも興味を持てる人が向いています。

日本語を教わる学習者は外国人ばかりなので、学習者の国の文化に関して興味や関心を持つことにより、コミュニケーションも取りやすくなるでしょう。

特にはじめのうちは日本とは異なる文化や言語に戸惑ったり、学習を進めるにあたり苦労したりすることも多いはずです。
ですが、そういった場面に直面しても工夫を繰り返しながら学習者と向き合っていける人は日本語教師に向いています。
日本語教師として働く先輩の話なども聞きながら自身の教育に取り入れていきましょう。

日本語教師の仕事内容


日本語教師は学習者に対して日本語を教える仕事ではありますが、具体的にどのような仕事内容を担当することかイメージできずにいる方も多いでしょう。
そこで、主な仕事内容を解説します。

仕事①学習計画に沿った授業

最も中心的な仕事として挙げられるのが、学習計画に沿った授業の実施です。
日々の授業の中で、日本語の発音や文法といったもののほか、会話や読み書きを教えていきます。

そのためには、教材の準備や、具体的な事業の計画づくりなどの作業も必要です。
日本語を教わるのは日本語を母語としていない外国人であることから、日本人が相手なら簡単に理解してもらえるようなことでも伝えるのに苦戦することがあります。

そのため、単純に日本語について深く理解していれば務まる仕事とはいえません。
学習者となる方も、主婦や日本の文化に興味のある学生、ビジネスパーソンなど、実にさまざまです。
学習者に合わせた工夫が必要になります。

仕事②授業に伴い発生する業務

学習計画に沿った授業を行うために必要な各種準備やテストの採点・添削、進路相談なども日本語教師の役割です。
わかりやすい授業を行うためには教材の準備もよく考えて行わなければなりません。
教材に関しては、既存のものを使うだけではなく、場合によっては自分で作成することも多いです。

さらに生徒の出席 管理、出入国手続きの支援など、学校の職員として求められる業務も行うことになります。

日本語教師が活躍できる場所


日本語教師が活躍できる場所は、実にさまざまです。
例えば、以下のようなところが挙げられます。

【主な活躍の場】

  • 日本語学校や日本語教室
  • 企業内のレッスン
  • NPO法人や日本語教室のボランティア
  • プライベートレッスン
  • 小・中・高・大学などの教育機関
  • インターナショナルスクール

活躍の場は非常に広いことがわかります。
日本国内だけではなく、海外の日本語学校や小・中・高・大学、国際交流基金による派遣なども含めると、さまざまな場所で活躍できる仕事です。

日本語教師の採用で重視されること

日本語教師の採用で特に重視されることといえば、経験の有無や指導力です。
日本語に関して深い知識を有しているのは最低限の条件であり、それをふまえて教師として教壇に立ち、実際に指導ができるのかが重視されます。

そのため、採用を勝ち取るためには実践向けの知識や経験を積んでおくことが重要です。
実際に面接時に模擬授業が行われるケースも珍しくありません。

日本語教師の求人状況


日本語教師の求人を確認してみると、ボランティアや非正規雇用としての求人が多くあります。
近年は留学生が増加していることもあり日本語学校も増えているため、日本語教師の求人ニーズは高まっているといえるでしょう。

ですが、実際にはボランティアや非正規雇用が多いことを考えると、好条件で正社員として就職可能な求人を見つけるのは簡単なこととはいえません。
好条件な求人を見つけるためには、日本語指導に関することだけではなく、英語やITスキル、進路指導の経験などが必要になることもあります。

そのため、未経験からスタートする場合はまず非常勤講師の求人に応募し、経験を積むのも良いでしょう。

日本語教師になるための自分に合ったルートを探そう

いかがでしたか。日本語教師になる方法や条件、必要資格がわかっていただけたかと思います。
1つ目は、420時間の講座を通学あるいはオンラインの形で受講する日本語教師養成講座。 教育機関やコースによって受講スタイルのバリエーションを豊富に選べ、社会人でも働きながら日本語教師に近づけます。
2つ目は、合格率は2530%と比較的難易度の高い試験ではありますがはありますが、日本語教育能力検定試験。
3つ目は大学で日本語教育を履修する方法です。 最低でも4年かかること、学費が決して安くないことは、これから日本語教師になりたい方にはハードルが高いです。 

どのルートが自分に合っているのか、よく比較検討してみてください。
今回の記事が日本語教師を目指すあなたの一助になれれば幸いです。

日本語教師養成講座ならルネサンス日本語学院におまかせください!
日本語教師の国家資格「登録日本語教員」になるためのサポートをおこなっています。
日本語教師に興味を持った方は、ぜひお気軽にお問合せください。

<関連記事> 登録日本語教員とは 国家資格化に伴いどう変わる?
<関連記事> 日本語教師の資格は難易度が高い?試験の合格率やおすすめの勉強法を公開
<関連記事> 日本語教師とはどんな仕事? 需要や向いている人の特徴を解説
<関連記事> 日本語教師が国家資格になる?概要と変更点を解説ー2023年4月更新版ー

この記事の監修者

監修者の写真

松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。