日本語教師養成コラム
日本語教師に向いているのはどんな人?仕事内容も解説
公開日:2023.04.14 更新日:2025.04.22

監修者情報
ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
日本語は世界でも習得が難しい言語の一つと言われていますが、
日本の文化を好んで来日したり、日本語を学んだりしている人は世界中にいます。
本記事では、日本語教師の仕事の内容や需要、日本語教師に向いている人の特徴などを詳しく紹介していきます。
日本語教師を目指している方は必見です。
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日本語教師とは
日本語教師とは日本語を母語としない外国人学習者に日本語を教える仕事です。
しかし、日本語教師の性質は、同じく日本語を教える国語教師とまるで違います。
日本語教師は、「外国語として日本語を教える」仕事です。
主な活躍の場としては、国内の日本語学校や日本語教室、小中学校、高等学校などの
教育機関を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
実は、活躍の場は国内に留まらず、海外の日本語学校や現地の大学で日本語教師として働くことも可能なのです。
「日本人なら誰でも教えられるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実はそうとも言い切れません。
日本人なら当然のように使っている言葉や言い回しも、日本語学習者からすると疑問に感じることが多々あります。
たとえば、"助詞の「は」と「が」の違い"や"謝罪するときも依頼するときも同じ「すみません」を使うのはなぜか"など、
パッと答えられる方は多くないのではないでしょうか。
このような質問にも回答できる知識も日本語教師には必要なのです。
<関連記事>日本語教師になるにはどうすればいい?必要な条件や方法を解説
日本語教師の仕事内容
日本語教師は、その名の通り日本語を教えるのが本分です。
日本語学習者は、「日本で生活するうえで日常会話ができるようになりたい」「日本での進学や就職を目指している」など、
さまざまな理由から日本語を学びたいと考えています。
なかには、日本の文化や歴史、あるいはアニメや音楽などに興味をもって、
より日本への理解を深めたいという学習者もいるでしょう。
このような多種多様なニーズと、レベルに合わせた教育カリキュラムを組んで、
入念に事前準備を行ったうえで授業を行います。
ときには、学習者が日常生活で困っていることの相談に乗ったり、進学・就職をサポートしたりする場合もあります。
日本語教師はただ単に言語を教えるだけではなく、学習者と親身に向き合い、
円滑なコミュニケーションをとることも仕事の一つなのです。
<関連記事> 日本語教師の基礎知識
日本語教師の需要は?
日本語教師の需要は、急激に増えているのをご存じでしょうか。
2023年2月21日、政府は日本語教師の国家資格「登録日本語教員」の資格を新たに創設することを閣議決定しました。
2023年6月頃までに法案成立見込み、2024年4月施行となる予定です。(2023年4月現在)
日本語教師の需要が高まっている理由としては、主に以下の2つが挙げられます。
- ・在留外国人の増加
- ・AIに代わることができない
<関連記事> 登録日本語教員とは 国家資格化に伴いどう変わる?
<在留外国人の増加>
まず紹介する日本語教師需要の理由は「在留外国人の増加」です。
2019年、日本国内における労働人口割合の減少を危惧した日本政府は「出入国管理及び難民認定法」を改正。
外国人労働者の受け入れ体制を強化しました。
これにより、留学生や就労者の数が増加し、
外国人に向けた日本語教育の見直しが実施されることとなりました。
在留外国人数の推移を見ていきましょう。
「令和4年度末現在における在留外国人数について」(出入国在留管理庁, 2023年3月24日令和4年末現在における在留外国人数について | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp))によると、
2019年の在留外国人数は2,933,137人で過去最高を記録しましたが、
新型コロナウイルスの影響により、2020年(2,887,116人)、2021年(2,760,635人)ともに在留外国人数は減少しました。
しかし、2022年には3,075,213人と、過去最高だった2019年の総数を上回り最高記録を更新しました。
それに伴い、今後は留学生や就労者はもちろん、
日本で生活をする生活者を対象にした日本語教育も広く行われるようになるでしょう。
<AIに代わることができない>
2つ目の理由は「現状のAIでは代替が不可能な仕事だから」です。
すべての自然言語は、人間の心理と密接な関係があります。
言葉や文脈の背景には、個々人の経験や心理が内在されていることはもちろん、その地域の文化や慣習も含まれています。
たとえば、ビジネス日本語における「空気を読んだ言動」や、
相手との関係性によって使用する表現を変える「敬語」も日本語の特徴の一つと言えるでしょう。
まだまだAIには難しい領域かもしれません。
このような理由からも、日本語教師はAIに代わることができない仕事であり、需要が高まっているのだと予想されます。
<関連記事> 「日本語教師はやめたほうがいい」と言われるが、それは本当?
日本語教師の就職先
ここからは、日本語教師になったあと、就職先にはどんな場所があるのか見ていきましょう。
さまざまな場所で活躍しているのが日本語教師です。
国内と海外に分けて、それぞれ紹介していきます。
<国内>
- ・日本語学校
- ・大学の留学生別科
- ・外国人労働者を採用している企業
- ・外国人技能実習生の研修センター
- ・地域の日本語教室
国内の就職先といえば、日本語学校が最初に思い浮かぶ方も多いかもしれませんが、
それ以外にも多くの場所で日本語教師は活躍しているのです。
<関連記事> 日本語教師の需要はある? 海外と国内の現状を紹介
<海外>
- ・世界各国の日本語学校
- ・日本語が選択科目として存在する教育機関
- ・日系企業
- ・技能実習生の送り出し機関
- ・公的機関による海外派遣(青年海外協力隊、国際交流基金など)
海外にも、留学準備のための日本語学校が存在します。
ほかにも「日本へ渡る人へ日本語を教える場面」があるところは、同様に就職先として挙がるでしょう。
また、私たちが第二外国語としてドイツ語や中国語を学ぶように、
外国語として日本語を学べる大学も、日本語教師の就職先になります。
<関連記事> 日本語教師として海外で働くには?条件や必要なものを解説
日本語教師のメリット
次は、日本語教師のメリットをみていきましょう。
ここでは、以下の3つを紹介します。
- ・視野が広がる
- ・やりがいがある
- ・人生経験をそのまま活かせる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
<視野が広がる>
日本語教師はさまざまな国の人と接します。
もちろん、学習者によって価値観も常識も大きく異なり、
そういった環境で働くことは柔軟さや広い視野の獲得に繋がるでしょう。
また、学習者は、日本人では気づかない日本語の不思議を感じるなど、
日本人が日本語について新たな発見をする機会にもなります。
<やりがいがある>
やりがいをどこに感じるかは人によって違います。
しかし、日本語教師は常に学習者とともにあります。
日本語を学びたい人たちが期待を胸に、教師の目の前にいるのです。
教師はそんな学習者が必要な日本語や日本の文化を教えるのです。
文明が発展するにつれ、人と人が直接顔を合わせなくても成立する仕事が随分と増えました。
だからこそ、 目の前の人を笑顔にするという単純な幸せを、
日本語教師はより身近に感じることができるといえるでしょう。
<人生経験をそのまま活かせる>
常勤講師、あるいは非常勤講師として週1~2日働いたり、
オンライン日本語教師として働いたり、ライフスタイルに合わせた働き方を選べるのも本語教師のメリットの一つです。
そんな日本語教師はセカンドライフの仕事としても人気が高いです。
日本語教師の仕事は、日本語を教えるだけではありません。
一人ひとりの仕事の経験、学習した内容、文化や慣習など、
これまでの人生において得てきたすべてが、日本語教師としての強みとなるのです。
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海外で働ける
日本語学校は海外にも多く存在しているため、日本語教師になれば海外で働くことも可能です。
現地で暮らしながら、日本ではなかなか触れられないような文化やライフスタイルを満喫できるのも、
日本語教師として働くうえでのメリットといえます。
海外移住に憧れがある方にとっては、うってつけの職業ではないでしょうか。
なお、海外で勤務するなら避けては通れないのが就労ビザです。
比較的容易に就労ビザを取得できますが、国や就労ビザの種類によって条件が異なる場合もあります。
よく調べて準備することが大切です。
国際交流のきっかけを作れる
日本語教師として海外での勤務が叶えば、国際交流に貢献することもできます。
勤務先にとどまらず、地域でのイベントや現地の方との交流を通して、
日本のことをより多くの人に知ってもらうきっかけになることができるのです。
国によっては、日本人の来訪が珍しい国もあり、その人にとって初めて会った日本人になるというパターンもあります。
小さな交流が少しずつ重なっていくことで、日本と外国間での国際交流がますます盛んになることも叶わぬ夢ではありません。
日本語教師は、日本との橋渡しとしての役割を担えるというわけです。
日本語教師のデメリット
では、日本語教師にデメリットはないのでしょうか。
<非常勤講師の場合>
さまざまな求人情報を見ると、非常勤講師の1コマ(45分1コマの場合が多い)当たりの給与は
1,800円~2,000円程の教育機関が多く、常勤講師に比べると収入面は不安定になりがちです。
そのため、複数の教育機関や他の仕事と掛け持ちをする場合も多いです。
また、非常勤講師から常勤講師に必ずなれるという保証はありません。
非常勤講師から常勤講師になるまで平均2年近くかかる場合もあるようです。
<常勤講師の場合>
常勤講師だから楽かというとそうでもありません。
非常勤講師とは業務内容が異なり、授業以外の業務の種類が増えます。
たとえば、学生の生活面のサポートや学校行事の企画・運営など、学校を運営するにあたり
必要な業務を任されることも多いです。
<日本語が「好き」だけでは務まらない>
日本語教師の仕事は「日本語を教える」ことにとどまりません。
日本の文化・慣習を届けることが好きだから、国語が好きだったから、
本を読むのが好きだからといって、日本語教師に向いているというわけではありません。
日本語を外国語としてとらえること、日本という国そのものの広い知識が必要で、
そこを誤解している人にとっては大きな壁となるかもしれません。
日本語教師に向いている人の特徴
最後に、日本語教師に向いている人の特徴を紹介します。
みなさんはどんな人が日本語教師に向いていると思いますか?
日本に関するさまざまなことを伝えたい人
日本語の面白さや奥深さはもちろん、日本の文化についても興味がある方は、より日本語教師に向いているでしょう。
日本語教師に求められるのは、何も言語の知識だけではありません。
日本の伝統文化や歴史遺産、さらには政治や経済、ビジネスマナーに至るまで、
豊富な知識を身につけていればいるほど、幅が広がる職業です。
そのため、ご自身が日本語や日本の文化に特段興味をもっているのであれば、日本語教師という仕事を楽しみながら歩めるのではないでしょうか。
異文化に興味のある人
日本語教師には、異文化に興味をお持ちの方にもおすすめです。
「知らない国の人たちとコミュニケーションがとりたい!」「海外の文化を知りたい!」とお考えなら、
ぜひ日本語教師を目指してみてください。
日本語教師になれば、日常的に諸外国の方とやり取りをすることになるので、日々新しい価値観に出会えるはずです。
日本に関するさまざまなことを伝えたい人
日本の文化や日本語のおもしろさ、日本について多くの人に伝えたい。
日本語教師を目指す多くの人がこれに該当するのではないでしょうか。
この姿勢は日本語教師の仕事そのものであるといえるので、
このような気持ちがある人は日本語教師に向いていると言えるでしょう。
異文化に興味があり、さまざまな国の人とコミュニケーションを取りたい人
異文化が好き、興味があるというのも大事な指標の一つです。
日本語教師をしていると、いくつもの新しい価値観に触れることができます。
新しく出会った価値観を受け入れられるか、面白いと感じられるか、
一歩踏み込んで探究できるかという点は、とくに大きいのではないでしょうか。
人一倍探求心強く、好奇心旺盛な人
他の職業も同じだと思いますが、日本語教師にも、この職業ならではの壁があります。
それが「多くの日本人は普段特に気にしない問題に答える必要があること」です。
たとえば「『1回』と『1度』の違い」や「『明日は雨が降るんだった』の『た』はどういう意味か」など、
日本語母語話者は引っかからないようなポイントについても、考えてみる必要があるのです。
「え?何か違いはあるの?」と興味を持った方は、日本語教師について学んでみてはいかがでしょうか。
コミュニケーションをとることが好きな人
日本語教師は多くの学習者と接することになりますので、「人と話すのが好き!」という方に適した仕事といえます。
人に教える立場の仕事に就くと、人と関わる機会が想像以上に多くなり、相手とのスムーズな意思疎通が非常に重要になります。
それに、日本語教師が受け持つのは多国籍な学習者たちです。
異なる文化をもつ学習者と良い信頼関係を構築するには、
適応力と受容力を発揮して積極的にコミュニケーションをとることが大切なのです。
そうして円満な関係を築ければ、教室内の雰囲気も明るくなり、学習者もストレスフリーな状態で勉強に励めます。
やりがいのある仕事に就きたい人
仕事において"やりがい"に重きを置いている方は、日本語教師になって真摯に業務に取り組めば充実感を得られるでしょう。
日本語学習者のなかには、留学生や技能実習生、外国人労働者もいます。
日本で学び、技術を磨いている学習者に日本語を教えることは社会的にも意義がありますし、
身近で成長を感じられればやりがいにもつながります。
自分が教えたことが、彼らの生活に多分に影響を与えるとなると一定の責任感が伴いますが、
これこそが日本語教師としてのやりがいを生み出す源なのです。
仕事に対して大きな達成感を求めるのであれば、日本語教師を目指すのも一つの手です。
海外で働くことに興味がある人
日本語教師は海外でも活躍できますので、海外勤務に魅力を感じている方にも向いています。
海外に渡って日本語教師の仕事に就けば、現地で日本語を教えながら国際的な視野を広げられます。
現地での新たな体験は、これまでの価値観を覆すほどのインパクトがあるかもしれません。
日本語教師として働く中で、こうした刺激を日々感じることは、自分自身にも多くの学びがあることでしょう。
このような経験は、キャリアアップのみならず自己成長にも寄与します。
柔軟な働き方をしたい人
場所や時間に捉われず、柔軟なスタイルで働きたい方も、日本語教師を選択肢に加えてみてください。
日本語教師なら国内外問わず働けることは先述の通りですが、勤務時間においても自由度が高いという側面があります。
フルタイムで働く常勤講師だけではなく、特定の曜日や時間に働く非常勤講師を選ぶことも可能です。
週2~3日程度、あるいは午前中だけなど、自分が担当する授業のみ教鞭をとればよいので、
スケジュール調整の観点からも有用だといえます。
近年は、フリーランスとして日本語教師の仕事に取り組んだり、
オンラインで授業を実施したりと、ご自身に合った自由な働き方が選べるようになっています。
人に教えることが好きな人
人に物事を教えることで満足感を得られる方は、日本語教師に向いていると言えるでしょう。
日本語教師として授業を行う中で、少しずつ学習者の日本語が上達すれば大きな喜びを感じられるでしょう。
学習者に最大限寄り添って成長を見守れるというのは、日本語教師の最大の魅力です。
しかし、ときには、うまくコミュニケーションがとれないこともあるでしょう。
その際には「何がダメだったんだろう......」と改善点を洗い出したうえで修正し、
日本語教師としてのブラッシュアップを続けられると理想的です。
英語をはじめとする外国語の語学力がある人
日本語学習者のほとんどは海外の方なので、英語はもちろん、
諸外国の言語に精通している方は日本語教師としてより活躍できるでしょう。
国内では、日本語で日本語を教える "直接法"で日本語を教えるのが主流ですが、
来日して間もない学習者に説明する際に、外国語が話せると会話の面で役に立つのも事実です。
語学力があれば、日本語の習得に向けた適切なサポートや円滑なコミュニケーションも叶うので、
日本語教師になるうえでは非常に有利といえます。
多言語を操るスキルを存分に発揮するなら、日本語教師という道も検討してみてください。
日本語教師とは、世界を繋ぐ求められし職業
今回は、日本語教師という仕事について解説してきました。
日本語教師の仕事内容や需要、メリットなどについて、おわかりいただけたかと思います。
今後、日本語教師は国家資格になり、ますます需要の高い職業になると言えるでしょう。
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この記事の監修者

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格
《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。
《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。
《監修者からのコメント》
日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。