コラム

日本語教師が国家資格になる?概要と変更点を解説ー2023年4月更新版ー

2023.04.12

資格

「日本語教師になる方法は?」「日本語教師に向いている人は?」など外国人に日本語を教える「日本語教師」に興味を持った方が気になるのは、「日本語教師は国家資格になるのか?」ということではないでしょうか。

2023年2月 日本語教師の国家資格化を盛り込んだ法案が内閣から国会に提出されました。
2023年3月 日本語教師の国家資格化における詳細を話し合っていた有識者会議の報告が文化庁から公開されました。

本記事では「日本語教師の国家資格化」について、詳しく紹介していきます。
日本語教師を目指している社会人、学生の方は必見です。

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目次

日本語教師の国家資格化とは

現行の日本語教師は民間資格です。
しかし、今、日本語教師が国家資格へ格上げされる動きがあります。
国家資格化されれば、今の日本語教師に求められる条件からの変更点はもちろんいくつかあります。
また、国家資格になることで、「日本語教師」という職業の認知度 や社会的意義、待遇の改善にも繋がるかもしれません。
とはいえ、業務という面での実態はさほど変わらないという声も聞かれます。

なぜ日本語教師を国家資格化する?

日本語教師の国家資格化については、昨今の情勢が背景にあるといわれています。
文化庁が公表した有識者会議の報告書にはその理由が次のように書かれています。

近年 、我が国に在留する外国人の数は急激に増加しており(令和4年6月末で約296万人)、これに伴い日本語学習者及び日本語教育機関も増加し続けている。留学生の増加とともに、「出入国管理及び難民 認定法」改正による在留資格の整備、技能実習 制度の創設や特定技能制度の創設等による外国人労働者やビジネス関係の外国人等の増加に伴い、(中略)今後も在留外国人数とともに、日本語学習者数は拡大する見込みである。
(中略)また、学習者数の 増加に伴い、日本語教育の担い手、特に日本語教育に関する知識及び技能等の専門性を有する人材の養成・確保が重要な課題となっている。

引用元:文化庁

このような社会情勢を踏まえて、日本語教育が今一度見直されることになったのです。
そして、議論を重ねた結果、日本語教師の質や量の確保を担保するために日本語教師の国家資格化へとつながりました。

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国家資格に変わった際の注意点

ここからは国家資格「登録日本語教員」に変わった際の注意点について解説していきます。
押さえるべきポイントは以下の2点です。

  1. 1.日本語教師になる方法が変わる
  2. 2.資格の更新が必要となる?

それぞれ解説していきます。

注意点①日本語教師になる方法が変わる

まず、日本語教師になる方法が変わります。
これまで日本語学校など教育機関による採用条件は存在したものの、日本語教師としての明確な資格や免許はありませんでした。そのため、420時間日本語教師養成講座などで専門の勉強した人も、専門の勉強をしたことがない人も、生徒さえいれば同じ「日本語教師」という肩書で仕事ができたわけですが、国家資格化するとなると違います。

現在、国会に提出されている法律案には、

『第十七条
日本語教員試験(日本語教育を行うために必要な知識及び技能を有するかどうかを判定するために行う試験をいう)に合格し、かつ、実践研修(認定日本語教育機関において日本語教育を行うために必要な実践的な技術を習得するための研修をいう)を修了した者は、文部科学大臣の登録を受けることができる。』

引用元:文部科学省

と書かれています。
つまり「登録日本語教員」という国家資格を得るためには、「日本語教員試験の合格」と「実践研修(教育実習)の修了」の2つを満たすことが必要になるということです。
また、ここで言う「日本語教員試験」というのは、現在民間機関で実施している「日本語教育能力検定試験」とは異なる、国が実施する新たな試験ですので、注意してください。

なお、現在実施されている「日本語教育能力検定試験」が国家資格化後も継続して行われるかについては、民間の団体が運営していることから国はとくに関与しない旨の発言が有識者会議内で文化庁からされています。

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注意点②資格の更新が必要となる?

また、建築士や公認心理士などの国家資格は資格取得後の更新が必要であるため、日本語教師の国家資格も更新が必要という話も聞かれますが、実際はどうなのでしょうか。
結論からいえば、有識者会議でまとめられた報告では 「更新は不要」とのことです。
ただし、文化庁有識者会議の報告には

国が創設する資格を有する者として国に登録した日本語教師(以下、「登録日本語教員」という。) に対して(中略)登録後のキャリア形成に資する仕組みとして検討する

引用元:文化庁

と書かれていますので、登録日本語教員としてのキャリアアップのためにも継続的な自己研鑽が求められています。

日本語教師の国家資格の取得条件

日本語教師の国家資格の取得条件について、すでに大枠は有識者会議の報告で示されています。
それは、次の2つです。

  1. 1.日本語教員試験の合格
  2. 2.実践研修の修了

それぞれ見ていきましょう。

条件①日本語教員試験の合格

法案では登録日本語教員になるための試験について、次のように書かれています。

「第二十二条
日本語教員試験においては、基礎試験及び応用試験を行うものとし、基礎試験にあっては日本語教育を行うために必要な基礎的な知識及び技能を有するかどうか、応用試験にあっては日本語教育を行うために必要な知識及び技能のうち応用に関するものを有するかどうかを判定するものとする。」

引用元:文部科学省

つまり、試験は2種類あり、一つは「基礎試験」、もう一つは「応用試験」ということです。
また、この試験はどちらも「多肢選択式」の筆記試験で論述形式ではないことが文化庁の報告に明記されています。
さらに、試験は年に1回以上、全国各地で開催されます。
受験要件はありません。学歴や年齢、国籍も不問です。

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条件②実践研修の修了

実践研修とは、実際に外国人に日本語を教える「教育実習」のことです。
教育実習は以下の6ステップからなることが発表されています。

  1. 1.オリエンテーション
  2. 2.授業見学
  3. 3.授業準備
  4. 4.模擬授業
  5. 5.教壇実習
  6. 6.教育実習全体の振り返りを学習すること

また、教育実習の質を担保するため、教育実習担当員および教壇実習指導者の要件についても今後慎重に検討を行っていく方針です。

さらに 、留学生だけでなく、就労者、生活者など「対象別、レベル別、言語活動別の指導力を育成する多様な教育実習」を行うことが望ましく、「教壇実習においても対面授業とオンライン授業ができることも重要であり、オンラインでの実習についても、その具体的な在り方も含め検討する」としており、教室での対面授業だけでなく、オンライン授業もできる教師の育成が求められています。

現職の日本語教師や養成講座受講中の人はどうなる?

ところで、すでに養成講座を受講し終えていたり、日本語教育能力検定試験に合格していたり、また、既に現場で働いていたりする現職の日本語教師はどうなるのでしょうか。

現職の日本語教師については、法案でも経過措置が設けられることが明記されています。
経過措置の具体的な内容は、文化庁の有識者会議の報告に書かれているものの、まだ「検討中」であり、今後の発表を待つ必要があります。

但し、現職教師が国家資格の登録日本語教員になれず、日本語教師の数が減るようでは、資格創設の目的に反するため、文化庁の報告でも

制度 開始時の日本語教師の質的・量的な確保に配慮しつつ、一定の要件を満たす現職日本語教師等について、円滑に登録日本語教員としての登録を受けられるよう、また、日本語教師の学び直しの観点もあわせて、筆記試験や教育実習の免除を含めた経過措置を設ける。

引用元:文化庁

と述べています。

また、法施行時に420時間養成講座や大学などの養成課程を受講中である人も、受けている講座、課程が無駄にならないよう、筆記試験や教育実習の免除を含めた経過措置を設けることが検討されています。

いつから国家資格に変わるのか?

現在国会に提出された法案の附則第一条には

「この法律は、令和六年四月一日から施行する」

引用元:文部科学省

と書かれていますから、法案が成立すると、国家資格「登録日本語教員」制度は2024年4月1日から開始します。

日本語教師は国家資格としていっそう期待されていく

いかがでしたか。
今回は現在国会に提出されている法案や文化庁有識者会議の報告に書かれていることを基に、日本語教師の国家資格化について解説しました。
国家資格にする理由や国家資格になる際の注意点、取得条件がわかっていただけたかと思います。

国家資格になると聞くと、日本語教師になるハードルはいっそう高くなる ように感じるかもしれませんが、国は単に日本語教師になる条件を決めるのではなく、国家資格を持った日本語教師が専門家として活躍できる場の確保も制度に盛り込み 「新制度の実現を通じて、日本語教師の活躍の場が広がり、質が確保された日本語教育の一層の充実が図られること 」を目指しています。つまり、それだけニーズがあるのも事実です。

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