日本語教師養成コラム

日本語教師を目指して大学院に通うメリットは?デメリットも確認

公開日:2024.09.24 更新日:2024.09.24

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監修者情報

松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

「日本語教師を目指しているけれど大学院ではどんなことを学べる?」
「大学院の卒業は必須なのか知りたい」
「大学院に通うメリット・デメリットは?」

日本語教師の就職の求人に大学院の卒業が求められるケースがあります。
しかし、日本語教師にとっての必須の条件ではありません。
そして、大学院に通って何をするのかイメージしにくいでしょう。 本記事では日本語教師を目指している方に向けて、大学院への進学についてと、大学院に通うことのメリット・デメリットについて解説します。
この記事が、日本語教師を目指す際に、大学院に通うべきかどうかの判断材料になれば幸いです。

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日本語教師になるには大学院を卒業する必要がある?

日本語教師になるにあたり、大学院を卒業することは必須条件ではありません。
それでも大学院に進学するメリットは多いため、日本語に関して研究したいと考えているのであれば、大学院への進学を検討してみてください。
例えば、文部科学省の認定日本語教育機関で働きたいと考えている場合は、国家資格である「登録日本語教員」が必要です。
地域のボランティア活動やNPO、小中学校で日本語を教える場合には、登録日本語教員の資格を求められることはありません。
ただし、各求人で定められている条件を満たす必要はありますので、日本語や日本文化、教育方法などについて大学院で研究した実績は就職活動の際に役立つでしょう。

参照: 文化庁国語課:登録日本語教員の登録申請の手引き

大学と大学院の違い

日本語教師の養成講座は、大学だけでなく大学院でも提供されている例があります。
例えば、秋田県の国際教養大学専門職大学院グローバル・コミュニケーション実践研究科での日本語教育実践領域や、茨城県の筑波大学大学院人文社会科学研究科の日本語教師養成プログラム、東京都の大妻女子大学大学院人間文化研究科言語文化学専攻の日本語教員養成プログラム、桜美林大学大学院国際学術研究科(グローバルコミュニケーション実践研究学位プログラム)日本語教員養成大学院課程、徳島県の鳴門教育大学大学院日本語教師養成プログラムなどです。上記で紹介した講座は文化庁の指定する「必須の教育内容」に対応しているため、今後の国家資格にもつながりやすいものです。
こうした講座は大学での主専攻や副専攻の課程と同じで、学習して修了することが求められます。
しかし、大学に通うことと大学院修士課程や博士課程に通うことは、授業を受けて卒業論文を書くか、調査をまとめて修士論文を書くかという根本的な違いがあります。
修士課程の間により長い期間調査を行い、結果をまとめて発表し、論文にまとめるという必要があります。
大学の卒業論文と違って、提出までの間に多くの論文や文献を読み、途中段階での進捗を報告していく必要があります。
大学院に行くということは、学びにいくのではなく、研究テーマを元に研究をしにいくと考えるのが適切です。

大学院に進むタイミング

現役の大学生で日本語教師としてキャリアを積みたい、大学院への進学を希望している、研究したいテーマがある、といった方は大学卒業後すぐに大学院に進学するべきでしょう。
しかし、経験を積んでから大学院に進学しても遅くはありません。
日本語教育に関わる現場で実際に働き、実務を通して知識と経験を積んでから大学院でさらに学ぶ方法もあります。
また、経済的な理由ですぐに入学することが難しい方は、一度就職して資金を貯めながら大学院への入学を再検討することも選択肢の一つです。
いずれにせよ、大学院への進学に興味関心を持った時点で、自身が置かれた環境に合わせた進学方法を検討する必要があります。

大学院に進学する場合の進路先

大学に進学する際は希望する学問の分野と偏差値、場所や知名度などが決定の要因になることが多いと思います。
一方、進学する大学院を選ぶ際は、「知見を深めたい、研究をしたい」と思えるテーマで指導を受けられるか、指導を受けたいと考える教員が在籍しているかなどを軸に決める必要があります。
大学院は少人数制の授業が多く、研究内容や論文作成などに教員から直接指導を受ける機会も多くなります。
そのため、信頼・尊敬できる教員がいるか否かは、その後の大学院生活に大きく影響するのです。

日本語教師を目指して大学院に通うメリット

前述したように、日本語教師を目指すにあたり、大学院の卒業は必須ではありませんが、
大学院での研究を行った経験を元に求人があったり、就職したりする方がいるのはいくつかメリットがあるからです。
ここでは代表的なメリットを3つ解説します。

キャリアを形成できる

日本語教師やこれから日本語教師を目指す人のうち、今後のキャリア形成やキャリアアップを考える方を中心に大学院に通っています。
中にはもともと日本語教師として働いていたものの、さらなるキャリアを求めて大学院に進学した方もいます。
大学院に進学し修士号の学位を取得すれば、取得していない人と比較すると就職先の選択肢も広がるでしょう。

例えば、修士号の学位が必要となる求人の中には、給与面で好条件を掲げているものもあります。
こうした求人はごくわずかではあるものの、よりよい待遇で働くことができます。

論文の書き方を学べる

大学院で修士課程を修了するためには、修士論文を完成させなければなりません。
そのため、大学院生活を通じて、論文についての基礎知識や書き方などを学ぶ必要があり、
研究活動を通じて修士論文を執筆することは、大学院に進む特徴であり、メリットの一つです。

大学院を修了した方は将来、研究者として活躍することも期待されます。
その際に自身で論文を書き上げた実績は、キャリアにも大きな影響を与えるでしょう。

研究テーマについて指導を受けることができる

大学院に通うことになれば、専門家である教員から指導を受けることができます。
中には、さまざまな専門書や教科書を監修している教員もおり、より専門的な知識を得ることができます。
また、研究テーマの設定により気になったり興味を抱いたりしている内容を、自身の研究活動を通じて探求することができます。
事前に研究テーマが研究に値するものか、指導の対応をいただけるかなどは、研究室の教員との相談の上で決まります。
日本語教師として働いている中で、日本語や日本文化、海外の人たちの学習や就職状況などに問題意識を持ち調査・研究を行いたいと考える方にとって、論文を独学で書くことは困難です。
大学院では内部での検討や批判を通した指導を受けることができるため、こうした条件の下で学術論文を執筆することは大学院に通う大きなメリットになります。

日本語教師を目指して大学院に通うデメリット

大学院に通いたいと考えている方は、どのようなデメリットがあるのかも理解しておく必要があります。
ここでは、特に注目したいデメリットを3つ紹介します。

費用がかかる

最も大きなデメリットとして挙げられるのが、費用の問題です。
具体的な費用は後ほど紹介しますが、博士まで学位を取得しようとすると、国立大学であっても500万円以上、私立大学では800万円程度かかる場合があります。
特に私立大学は、選択する大学院によって費用が大きく異なり、さらに高額になる可能性もあります。
費用的な負担が大きくなってしまうデメリットがあるため、学費などの支払いに無理が生じる場合は、慎重に検討することが必要です。

参照: e-Gov法令検索:国立大学等の授業料その他の費用に関する省令

参照:文部科学省:私立大学等の令和元年度入学者に係る学生納付金等調査結果について

就職先は学部卒と大きく変わらない

大学院を卒業すると、就職先の選択肢が増えることもありますが、院卒と学部卒では、違いがほとんどない場合もあります。
費用と時間をかけて大学院を卒業しても、将来的には期待していたほどの収入が得られないことも考えられるわけです。
日本語教師の求人の多くは日本語学校が占めており、ほとんどは求人を出す際の必須条件として大学院の卒業は定めていないためです。
ただし、大学の求人では修士課程修了が条件となっているものもあるので、こういった求人に応募できるようになるのはメリットと言えるでしょう。
なお、対象となる求人が非常に限られているため、修士課程を修了しても就職活動に活かせないケースがあることも押さえておきたいところです。

卒業までの期間

大学院に入学すると、卒業までに時間がかかることはデメリットと言えるでしょう。
修士課程は、最低でも2年間の学習が必要ですし、留年した場合は学習期間が延びてしまいます。
日本語学校に就職する場合には大学院の卒業は必須ではないこともあり、すぐに就職を希望する場合には大学院にいく必要はないことになります。
仮に、大学卒業後に大学院ではなく養成講座を経て日本語教師として働く場合、数カ月間で日本語教師として働き始めるための求人条件を満たすことができます。
そのため早く働き始めたい方は大学院への進学ではなく、養成講座の受講を検討したほうがいいことになります。

大学院進学にかかる費用

大学院進学を検討するにあたり、費用面が心配な方もいるのではないでしょうか。
実際に、大学院に通いたいと考えていたものの、費用が工面できずに諦めている方もいます。 国立と私立では費用が異なるので、以下でそれぞれ解説します。

国立の場合

できるだけ費用を抑えたいと考えているのであれば、国立大学院の進学を目指しましょう。
学部から博士課程まで、一貫して国立大学を選択すると、かかる費用は540万円程度です。
学部だけでも、入学金と授業料で240万円程度かかります。
さらに、修士課程の修了に140万円程度、博士課程まで進む場合は追加で190万円以上の費用が必要です。

参照: e-Gov法令検索:国立大学等の授業料その他の費用に関する省令

私立の場合

私立の場合は大学によって大きく異なるので、相場を紹介します。 学部から博士まですべて私立だった場合、かかる費用の相場は800万円程度です。
国立と比べると、非常に高額であることがわかります。
また、学部だけで400万円を超える費用がかかってしまうケースもあるようです。
ここから修士課程を修了するには、追加で150万~200万円以上、博士課程まで進学する場合はさらに200万円以上が必要です。
なお、私立の場合、同じ大学の院に進学する場合は入学金を免除している学校もあります。
このような制度の有無も、大学によって異なるので事前に確認しておくと良いでしょう。

参照:文部科学省:私立大学等の令和元年度入学者に係る学生納付金等調査結果について

大学院卒業後の日本語教師の年収

大学院を卒業した後に日本語教師として就職する場合、働く場所によって年収は大きく変わります。
例えば、日本語学校の場合、年収の目安は300万~400万円程度です。
この年収は、大学を卒業した日本語教師と比較しても大差はなく、どの日本語学校でも概ね同じような金額と言えます。
つまり、大学院を卒業したとしても、日本語学校に就職すると、その学位の恩恵が受けられない可能性があるというわけです。
教師としてのスキルが高かったとしても、学習者が支払う金額が変わらないことが大きな理由です。
なお、国家資格を取得して、文部科学省の認定日本語教育機関で働くことができれば、年収アップが望めるかもしれません。

参照:文化庁:令和2年度日本語教師の資格創設に係る状況調査 結果概要

大学院で学ぶメリットはさまざま

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いかがでしたでしょうか。 日本語教師を目指すにあたり、大学院に通うメリットやデメリットを紹介しました。
日本語教師にとって大学院の卒業は必須ではありませんが、問題意識を持ったり研究活動を行い修士や博士論文を執筆する経験は他では得られない経験になります。
一方、大学や大学院での講座を受けたことだけでは実務経験が不足するとも言われています。
日本語教師は、日本語に関する専門性の高い仕事であるため、専門機関の講座などで教育実習を実施することも重要です。

もし日本語教師を目指すのであれば、「日本語教師養成講座」があるルネサンス日本語学院にご相談ください。
日本語教師養成講座ならルネサンス日本語学院にお任せください。
国家資格である「登録日本語教員」を取得するためのサポートを行っています。
日本語教師として即戦力になり得るカリキュラムで学べるので、実際の現場で活躍する知識を身につけたい方にもぴったりです。
ルネサンス日本語学院の日本語教師養成講座を詳しく知りたい方は、個別相談フォームよりお気軽にお問合せください。

お申し込みはこちら 個別相談フォーム | ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座 (rn-ac.jp)

この記事の監修者

監修者の写真

松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。