日本語教師養成コラム

【2024年最新版】国家資格「登録日本語教員」になるには?

公開日:2024.01.30 更新日:2024.11.14

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

2023年5月26日「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律(通称:日本語教育機関認定法)」という長い名前の法律が成立し、6月2日に公布されました。これにより、今まで民間資格しかなかった「日本語教師」は、「登録日本語教員」という新たな国家資格を得ることになります。

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「登録日本語教員」はいつから始まるの?だれが目指せるの?どうすればなれるの?

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今、日本語教師にご興味を持ち始めた方や、日本語教師を目指そうと考えている皆さんが気になるのは「いつからこの制度が始まるの?」「どうすれば登録日本語教員になれるの?」「私でも国家資格がとれるの?」ではないかと思います。
まず初めに、そこからズバッとお話します。

いつから始まるかというと、今回公布された法律には「この法律は令和6年4月1日から施行する。」とありますので、今年2024年4月1日から国家資格「登録日本語教員」の制度がスタートします。

誰が登録日本語教員になれるかというと、法律には、「日本語教員試験に合格し、かつ、実践研修を終了した者」と書かれています。
つまり2024年秋ごろに行われる「新しい国の試験『日本語教員試験』という試験に合格して、国が指定する場所で『教育実習をした』人が登録日本語教員になれる」ということです。
そして、この日本語教員試験と実践研修を受けられる人は「日本語教師を目指す者であれば、年齢・国籍・母語・学歴は問わない」と文化庁が2023年12月28日に公開した資料に書かれています。
「国家資格」というと4大卒以上でなければならないなどの条件がつくイメージがありますが、この「登録日本語教員」の資格は、学歴条件はありませんので、覚えておいてください。

登録日本語教員になるためには、「試験に合格して、教育実習をする」必要があります。どこで、どのように勉強をするかによって、受験する試験の数などが変わってきます。ですから、ここでの「どうやって」というのは、「どんな勉強をして、いくつの試験を受けるのか」という意味で説明します。

国家資格「登録日本語教員」になるための3つのルート

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こちらをご覧ください。これが文化庁が2023年12月28日公開した資料に書かれている「登録日本語教員になるためのルート」です。

A・B・Cと3つのルートがありますが、AルートとBルートの間に線が引いてあるように、この3つのルートは大きく2種類に分かれます。どう分かれるかというと、「学校等に通わずに勉強する」Aルートか、「学校等に通って勉強する」Bルート、Cルートかという分類です。

はじめに、Aルートについてお話します。Aルートは大学や民間の日本語教師養成講座に通わずに勉強する場合です。
このルートで勉強する人は、ご自身で勉強が終わったと思ったところで、国が実施する「基礎試験」を受験します。基礎試験に合格すると、二つ目の試験である「応用試験」に進めますので、こちらも受験し、合格する必要があります。更に、国が指定した「登録実践研修機関」で教育実習を受けてもらい、修了すると登録日本語教員になれます。つまり、学校等に通わずに勉強するAルートの方は、2つの国家試験を受けて合格し、国が指定した機関で教育実習を行うという3ステップで登録日本語教員になれるということです。

次に、「国が認定した『登録日本語教員養成課程』に通って勉強するBルートとCルート」です。BルートとCルートの違いは、勉強した養成機関が「教育実習もしているかどうか」の違いです。
では、先にBルートです。こちらは「教育実習もしている大学や民間の登録日本語教員養成課程」で勉強する場合です。
教育実習もしている登録日本語教員養成課程で勉強する人は、養成課程を修了後、「応用試験」という1つの国家試験に合格すると登録日本語教員になれます。
それはなぜかというと、養成課程の中で、「基礎試験に相当する試験に合格して、教育実習をしてから修了」しているためです。

続いて、Cルートです。Cルートは「教育実習はしていない大学や民間の登録日本語教員養成課程」で勉強する場合です。
こちらは、養成課程を修了後、「応用試験」という1つの国家試験だけ受験し、合格してもらいます。そして、国が指定した登録実践研修機関で教育実習を受け、修了すると、登録日本語教員になれます。
3つのルートのうち、どれをとるかは、これから日本語教師を目指そうとする皆さんが ご自身の状況に合わせて選択することではありますが、大切なのは「その道の専門家に自分の耳で聞いてから、自分にとってはどのルートで勉強して、試験などを受けるのが合っているのかを、納得して決める」ことです。

ところで、この3つのルートですが、実際に始まるのは2024年の秋頃からです。なぜかというと、法律が施行される2024年4月1日以降に国は登録日本語教員養成課程の登録申請の受け付けを開始して、養成機関の登録を始めるのが2024年秋頃を予定しているからです。では、みなさん、2024年の秋まで勉強を始めるのを待ちますか?ちなみに、第1回国家試験は2024年の秋頃実施予定と文化庁が発表していますので、新しい「登録日本語教員養成課程」の開講を待っていると第1回国家試験には間に合わない、ということになります。

第1回国家試験を挑むにあたり、どう勉強すればいい?

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2024年の秋から勉強を始めたら、第1回国家試験が行われるのも同じ2024年秋なので、間に合いません。また、試験は2024年度は1回しか実施しないと文化庁は言っていますので、次の第2回国家試験を受験しようとなると、2025年4月以降まで待たなくてはならなくなります(ちなみに、2025年度はどのように国家試験を実施するかはまだ発表されていません)。

更に、今現在、大学や文化庁届出受理420時間日本語教師養成講座で勉強している人達も大勢いるわけです。
ですから、国は、今勉強している方、2024年の秋から始まる「登録日本語教員養成課程」の受講を待たずに勉強を始める方々には、特別ルートを用意しています。それが、こちらです。

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現在の大学や、文化庁届出受理420時間養成講座を修了または、勉強している四年制大学卒業以上の学歴(学部・専攻は問いません)を持つ方は、その学校・機関の養成課程が文化庁の示す教育内容の基準を満たしている講座だと認定された場合、養成課程修了後は「応用試験」だけを受験し、合格すれば「登録日本語教員」になれるというルートです。この特別ルートは「民間の養成講座を修了した方は2029年3月31日まで有効(大学の養成課程を勉強している方は2033年3月31日まで有効)」ですから、例えば2023年度中に民間の養成講座で勉強を始めた人は、2029年3月31日まではこの特別ルートで「登録日本語教員」を目指せるというわけです。

ただし、この特別ルート、少し注意が必要です。先にご説明したように、このルートが使えるのは4年制大学卒業以上の学歴をお持ちの方だけですので、4年制大学を卒業されていない方は、この特別ルートを使うことができません。

4大卒ではない場合の方が、今から勉強を始めるにはどんなルートがある?

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では、4年制大学を卒業していない方はどうすればよいのでしょうか。
4年制大学を卒業されていない方には2つのルートがあります。

1つ目は、2024年秋から始まる新しい法律の下での「登録日本語教員養成課程」で勉強するルートです。この「登録日本語教員養成課程」というのは、今の「文化庁届出受理日本語教師養成講座」とは別の養成課程で、この「登録日本語教員養成課程」を受講された方は、学歴問わず終了後「応用試験」という1つの国家試験に合格すれば登録日本語教員になれます(勉強した「登録日本語教員養成課程」に教育実習課程がない場合は、講座修了後、別途国が指定する「登録実践研修機関」で教育実習を受けていただく必要があります)。

2つ目のルートは、「2024年の秋まで受講を待てない!2024年秋の第1回国家試験を目指したいんだ!」という方のルートです。この場合は、現在行われている大学の日本語教員養成課程で勉強するか、民間の文化庁届出受理420時間日本語教員養成課程で勉強していただきます。そして、修了後に「基礎試験」を受験し、合格したら「応用試験」を受験、合格していただきます。そして、ご自身の居住地に近い場所にある国が認定した「登録実践研修機関」で教育実習を受けて修了すると、国家資格「登録日本語教員」になれます。

ちなみに、この国家試験「基礎試験」と「応用試験」の問題は、現在行われている大学の日本語教員養成課程と民間の文化庁届出受理420時間日本語教員養成課程で学習している範囲から出題されますので、受ける試験の数は増えますが、文化庁届出受理420時間日本語教員養成課程などで勉強したことが全く役に立たないということはありません。むしろ、現在の文化庁届出受理420時間日本語教員養成課程で2024年秋までにしっかり勉強し、終了しておけば、第1回国家試験の受験を目指すのには十分であるといえるのではないでしょうか。

国家試験「登録日本語教員試験」と「日本語教育能力検定試験」は同じ?

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ところで、「日本語教師の試験」というと、「日本語教育能力検定試験」というのを思い浮かべる方もいるかもしれません。
ここでこの「日本語教育能力検定試験」と、2024年秋から始まる国家試験「日本語教員試験」の違いについてお話させてください。

日本語教育能力検定試験と2024年秋から始まる登録日本語教員になるための国家試験「日本語教員試験」は全く別のものですので、注意してください。
日本語教育能力検定試験が2024年以降も行われるかについては、文化庁は「日本語教育能力検定試験は民間団体が行っている試験であるため、2024年以降も続けるかどうかが、その民間団体が考えて決めること」と話しています。

また、「登録日本語教員」になる際に、日本語教育能力検定試験に合格した人が、国家試験の「日本語教員試験」の一部受験を免除されるルートもありますが、日本語教員試験合格者で、国家試験の一部を免除されるのは、以下の(1)(2)の両方を満たした方だけです。

  • (1)昭和62年度~令和5年度(つまり、2023年10月22日に実施された検定試験)に合格している方
  • (2)現職日本語教※である方。
    ※「現職日本語教師」とは、2019年4月1日から2029年3月31日の間に、法務省告示機関(いわゆる「日本語学校」)や、国内の大学、2024年秋以降に始まる認定日本語教育機関で認定を受けた課程、文部科学大臣が指定した日本語教育機関(認定を受けた日本語教育機関が過去に実施した課程)で日本語教員として1年以上勤務した者を指します。

ということは、まず、このコラムを読まれている時点で「2023年10月22日までに実施された日本語教育能力検定試験」に合格されていない方は、国家試験の一部免除は受けられません。また、もし、2023年10月22日までに実施された日本語教育能力検定試験に合格していても、法務省告示校(いわゆる「日本語学校」)や、大学などで1年以上日本語を教えた実績がない方は、国家試験の一部免除は受けられませんので注意してください。

2024年4月1日以降、日本語教師の活躍の場はどう変わる?

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では、新しい法律が施行された2024年4月1日以降、日本語教師の活躍の場は変わるのでしょうか。

まずは、今現在の日本語教師の活躍先を見てみたいと思います。それがこちらです。日本語教師はいわゆる日本語学校だけでなく、国内、海外合わせて、これだけ色々な場所で、いろいろな人たちに日本語を教えています。そして、新しい法律が施行されても、これら「日本語教師が活躍する場所」は変わりません。

ただし、この場所で「働くことができる日本語教師の条件」は2024年4月1日以降変わります。では、どう変わるのでしょうか?見てみましょう。

2024年4月1日以降、国家資格「登録日本語教員」が必須の職場はどこ?

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新しい法律の影響を受けるのは国内の日本語教育機関で働く日本語教師たちですので、国内の日本語教師の活躍の場について、確認していきます。

まず「日本語学校」で留学生に日本語を教えて働きたい場合です。留学生に日本語を教える機関は2029年3月31日までに文科大臣が認定する「認定日本語教育機関」になっている必要があります。そして、この「認定日本語教育機関」で日本語を教える先生は「国家資格『登録日本語教員』であることが必須」と法律で定められています。ですから、いわゆる日本語学校で留学生に日本語を教えたいと考えている方は、登録日本語教員の資格を取得する必要があります。

次に、日本の大学、高校、中学校、小学校で日本語を教えたい場合です。こちらは「登録日本語教員であることが望ましい」とされていますので、必須ではありませんが、「望ましい」ですので、同じ条件を日本語教師がいた場合は、国家資格を持っている方が有利になると言えます。(ちなみに、日本の高校、中学校、小学校で正規の教員として働きたい場合は、それぞれの教員免許が必要です)

3つ目はインターナショナルスクールや、企業の日本語研修、特定技能などの技能実習生、自治体の日本語教室で日本語を教えたい場合です。これらの日本語教育実施機関は、日本語学校とは違い、文部科学大臣が認定する「認定日本語教育機関」になるか、ならないかは、それぞれの機関の判断にゆだねられています。したがって、もし、働いている機関が文部科学大臣の「認定日本語教育機関」になったら、教える教師は国家資格「登録日本語教員」を取得した方でなければなりませんが、「認定日本語教育機関」にならなかったら、国家資格は必須ではありません。

最後に、「私塾・家庭教師」というところですが、こちらは個人で生徒を募集してオンラインや対面で教える場合です。個人で教える場合は、国家資格がなくても、問題ありませんが、やはり、「日本語を知っていること」と「日本語を教えられること」は全くの別物ですので、生徒を募集して教える限りは、文化庁届出受理420時間養成講座などで専門の勉強をされることをお勧めします。

このように国内の場合、将来どこで働きたいかによって、登録日本語教員の資格を持っている必要があるのか、持っていなくても教えられるのかは変わってきますが、「活躍の場を広げたいなら、『登録日本語教員』の資格を取っておくほうが良い」といえるのではないでしょうか。

海外で教える場合、国家資格「登録日本語教員」は必要?

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では、最後に海外で活躍したい方の場合です。
実は、海外の場合は「必ず登録日本語教員でなければならない」という縛りがある教育機関はひとつもありません。なぜなら、そもそもこの新しい法律は「日本の法律」ですか、外国には関係がないわけです。

但し、もし、この先海外の教育機関が「私たちは日本の文部科学大臣が認定する『認定日本語教育機関』になりたい!」と言って、申請してきて、認定された場合は、そこで働く教師は「登録日本語教員」である必要があります。ただ、海外の教育機関が日本政府に申請してくるというのは、今はあまり現実的ではないのではないでしょうか。

では、海外での活躍を目指す人は、登録日本語教員という国家資格は無視して良いかというと、そうともいいきれません。
なぜなら、法律が施行される2024年4月1日以降、国は、文部科学省は日本語教育に関する情報発信をする多言語ポータルサイトを開設します。そこで国家資格を持っている登録日本語教員や、文科大臣が認定した認定日本語教育機関などの情報を、世界中の日本語教育機関や、日本語を学びたい人、日本語を学ばせたい企業などに向け発信していくことになっています。そうすると、海外で日本語を勉強したい、勉強させたい人たちは、日本語教師を探す時、文部科学省のポータルサイトを見て探す可能性があります。

そう考えると、海外を目指す人も、登録日本語教員の資格を持っていた方が、情報検索にひっかかりやすくなると言えるかもしれません。

このように2024年4月1日から施行される「日本語教育機関認定法」によって、日本語教師だけでなく、日本語教育業界全体が大きく変わりますが、これから日本語教師を目指す皆さんは、「私の場合はどのルートで国家資格が取得できるのか」について、インターネット上の情報だけでなく、必ず専門家に相談して、ご自身に一番合っていると思うルートを選ぶことが大切です。
ルネサンス日本語学院では個別相談を実施し、お話を伺った上で、お一人おひとりにあったルートをご提案しておりますので、ぜひ、気軽にお声がけいただければと思います。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。