コラム

第1回:日本語教師が国家資格になる

2023.05.31

日本語教師授業イメージ

2023年5月26日「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」が成立し、日本語教師が国家資格になることが決定しました。
このコラムでは、これから日本語教師を目指そうと考えている方々に向け、

  1. 1.日本語教師が国家資格になる
  2. 2.なぜ、この法律が必要だったのか?
  3. 3.いつからなるの?
  4. 4.だれがなれるの?
  5. 5.どうすれば国家資格「登録日本語教員」になれる?

の5つのポイントから、国家資格「登録日本語教員」について解説します。

1.日本語教師が国家資格になる

2023年5月26日、日本語教師の国家資格化や、日本語教育機関を国が審査して認定する制度を定めた「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」が参議院本会議で賛成多数で可決され、成立しました。
この法律によって、今まで民間資格でしかなかった日本語教師は文部科学大臣の登録を受けた「国家資格」となります。

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2.なぜ、この法律が必要だったのか?

近年、日本で生活する外国人の数は急増しており、2022年12月末現在、世界175か国から来日した307万人の外国人たちがこの日本で暮らしています。
こうした外国人の中には、日本語能力が不十分な方も多く、日常生活や社会生活を円滑に営むことが難しい状況におかれています。
こういった現状について、日本政府は「外国人を我が国の社会に包摂し、共生社会を実現する観点から、我が国において生活するために必要な日本語能力を身に付けられる環境の整備が必要になっている 」と考え、この法律を作りました。

では、なぜ国は「必要な日本語能力を身に付けられる環境の整備が必要になっている」と考えたのでしょうか。
それには、「教育内容の質」「日本語教師の質」「日本語教師の数」という問題があるからです。

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教育内容の質

現在日本には日本語の指導を行う教育機関が多数存在しますが、その「教育内容の質」については管轄する官庁もなく、十分な監督が行われていない状況にあります。
留学生が日本語を勉強する日本語学校等は法務省告示基準という基準を定めたものに則って運営されていますが、これはあくまでの学校の設備や、学生の人数、そこで働く日本語教師の採用条件などハード面を定めたものであって、「教育の中身」について定めたものではありません。
そのため、「教育内容の質の保証」についてしっかり取り組んでいる教育機関がある一方で、知識や技術が十分でない人たちが日本語の指導を行っているケースも散見され、問題になっています。

日本語教師の質

今の日本で生活する外国人は留学生だけでなく、「就労者」「生活者」「児童・生徒」「難民」など多種多様であり、それぞれが必要とする日本語学習の内容も多種多様になってきています。
そのため、今までのように留学生を対象にした日本語の教え方では対応できなくなってきており、多種多様なニーズに対応できるよう「日本語教師の質」を向上させることも課題となっています。

日本語教師の数

現在でも日本語教育を求めている外国人に対して、その地域ではボランティア教室もない、日本語を教える教師もいないという「日本語教育空白地域」が全国に存在しています。
そして、今後も増え続ける外国人に対して、日本語教師の数が増えなければ、日本語の学習を必要としている人たちに十分な対応を国としてできなくなる、つまり、日本という国としての言語保障ができなくなるわけです。
その事態になることを避けるために、「日本語教師の数」を増やす必要にも国はせまられているのです。

3.いつからなるの?

法律には

 「この法律は令和6年4月1日から施行する。」(附則:第1条)

引用元:文部科学省

とありますので、2024年4月1日から国家資格「登録日本語教員」制度が始まります。

4.だれがなれるの?

法律には

 「日本語教員試験(*1)に合格し、かつ、実践研修(*2)を終了した者」(第17条)
(*1)日本語教育を行うために必要な知識及び技能を有するかどうかを判定するために行う試験
(*2)認定日本語教育機関において日本語教育を行うために必要な実践的な技術を習得するため
の研修

引用元:文部科学省

とあります。
つまり、国が実施する試験に合格して、国が指定する機関で教育実習を修了した人が、登録日本語教員になれるということです。

では、この試験や教育実習を受けられる人はどんな人たちなのでしょうか。
2023年1月に文化庁から出された報告書には

「日本語教師を目指す者(年齢、国籍、母語を資格取得要件としない)」

引用元:文化庁

と書かれています。

また、気になる学歴ですが、こちらも2021年8月の文化庁報告によると

「日本語教師が必要とする上記の幅広い教養と問題解決能力は必ずしも大学・大学院のみで培われるものではない点や、内閣提出法として成立した類似の名称独占国家資格においても、学士以上の学位を資格取得要件にしている例がない点等から、学士以上の学位を資格取得要件にはしないこととする 。」

引用元:文化庁

とされています。

まとめると、年齢、国籍、母語、学歴に関係なく日本語教師を目指す人は、国が実施する試験に合格して、国が指定した機関で教育実習を行えば、「登録日本語教員」の国家資格が取得できるということです。

5.どうすれば国家資格「登録日本語教員」になれる?

では、これから日本語教師を目指す方たちが「登録日本語教員」になるにはどうすればよいのでしょうか。
文化庁は大きく2つのルートを示しています。

文化庁登録日本語教員になるためのルートイメージ図

Aルート:大学や民間の日本語教師養成講座に通わずに勉強する場合は、2つの試験に合格し、教育実習を修了すると登録日本語教員になれます。

Bルート:大学や民間の日本語教師養成講座で勉強した場合は、1つの試験に合格すると登録日本語教員になれます。

Aルートをとるか、Bルートをとるかは、これから日本語教師を目指そうとする皆さんが ご自身の状況に合わせて選択することではありますが、大切なのは「その道の専門家に自分の耳で聞いてから、どのルートにするのか納得して決める」ことです。

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まとめ

さて、今回は「日本語教師が国家資格になる?」という視点でポイントを解説しましたが、次回(6月13日更新予定 )は、「新しい法律で、日本語教師の国家資格取得後の就職先はどう変わるのか?」について解説したいと思います。

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