コラム

第3回:新しい法律「日本語教育機関認定法」で、日本語教師養成講座はどうなる?

2023.06.13

日本語教師の就職イメージ

2023年5月26日に「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」が成立してから、この新しい法律について2回にわたって解説してきました。

第1回記事「日本語教師が国家資格になる?」はこちら
第2回記事「新しい法律で、日本語教師の国家資格取得後の就職先はどう変わる?」はこちら

第3回では、新しい法律「日本語教育機関認定法」で、日本語教師養成講座はどうなるのか、について解説します。
日本語教師を目指そうと考えている皆さんにとって「今勉強を始めた方がいいのか、新しい法律が施行されてから勉強した方がいいのか」は悩みどころですよね。
そこで、今回は

  1. 1.「登録日本語教員養成機関」ってなに?
  2. 2.新しい法律で「日本語教師養成講座」はどう変わる?
  3. 3.現行の「420時間日本語教師養成講座」は受けてもムダになる?

の3つのポイントから、「新しい法律の下で、日本語教師養成講座はどうなるのか」について解説します。

1.「登録日本語教員養成機関」ってなに?

第2回コラムでこの新しい法律は「国が日本語教育機関を認定して教育の質を保つこと」が ポイントであり、その為に、国が「日本語教育機関」と「日本語教師」と「日本語教師養成機関」を一括して管理するということを下の図に示してお知らせしました。

「認定日本語教育機関」イメージ図

この「国が指定する日本語教師養成機関」が「登録日本語教員養成機関」です。

<関連記事>日本語教師になるにはどうすればいい?必要な条件や方法を解説
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2.新しい法律で「日本語教師養成講座」はどう変わる?

では、この「登録日本語教員養成機関」は、現行の日本語教師養成講座・養成課程とどう違うのでしょうか。

2024年4月1日以降は文化庁から文部科学省に登録先が変わる

現行の日本語教師養成講座や日本語教師養成課程は、文化庁の文化審議会国語分科会が平成31年3月に取りまとめた「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)改定版」において示された必須の教育内容に基づいて養成講座を設計し、受理申請して、その内容の審査を経た後で、「文化庁受理420時間日本語教師養成講座」として登録されています。

では、2024年4月1日以降は、どうなるのでしょうか。
新しい法律には次のように書かれています。

第六十一条 養成課程を実施しようとする者は、申請により、第二十三条第一号の登録(以下この節において「登録」という。)を受けることができる。
第六十二条 登録を受けようとする者は、文部科学省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書に、次項各号のいずれにも適合していることを証する書類その他の文部科学省令で定める書類を添えて、文部科学大臣に提出しなければならない。

引用元:法律本文

したがって、2024年4月以降は日本語教師養成機関は「文部科学省管轄」になります。
これまでは文化庁に登録申請をしていた日本語教師養成講座などは、新しい法律では、改めて文部科学省に登録申請が必要になり、登録先が変わります。

2024年4月1日以降は養成講座の内容はどうなる?

文化庁がこの法律を作るにあたって開催した有識者会議が2023年2月にまとめた「日本語教育の質の維持向上の仕組みについて(報告)」には、次のように書かれています。

平成 31 年審議会報告で示された「必須の教育内容」50 項目を網羅すること

引用元:文化庁「日本語教育の質の維持向上と仕組みについて(報告)」

この「『必須の教育内容』50項目を網羅すること』というのは、現行の文化庁受理420時間日本語教師養成講座や大学・大学院などの日本語教師養成課程でも求められているものですので、勉強する内容は大きく変わることはないと言えます。

但し、報告書では新しい内容も求めています。それは、

「日本語教育の参照枠」を踏まえ、言語教育法・実習などの教育内容を編成すること

引用元:文化庁「日本語教育の質の維持向上と仕組みについて(報告)」

というものです。

この「日本語教育の参照枠」というのは、2021年10月に文化庁が示した国としての統一的な日本語教育の指標で、

「国内外における日本語学習者の日本語の習得段階に応じて求められる日本語教育の内容及び方法を明らかにし、外国人等が適切な日本語教育を受けられるようにするため、学習、教授、評価に係る日本語教育の包括的な枠組みを示すもの」

引用元:文化庁

です。

つまり、新しい制度の下では、この「日本語教育の参照枠」に対応付けられた日本語教育についての勉強や教育実習を行うことになります。

ルネサンス日本語学院の日本語教師養成講座では既にこの「日本語教育の参照枠」に対応付けた教育実習を行っています。

3.現行の「文化庁受理420時間日本語教師養成講座」は受けてもムダになる?

現行の「文化庁受理420時間日本語教師養成講座」や「大学・大学院などの日本語教師養成課程」は受けてもムダになるのでしょうか?
それは、2023年2月に文化庁から出された報告に書かれています。

法施行前から大学、大学院、短期大学、文化庁届出受理日本語教師養成研修機関(420 単位時間)の日本語教師養成課程に在籍しているものについては、当該養成課程が、指定日本語教師養成機関(注1)と同等と認められる一定の要件(平成31年審議会報告で示された「必須の教育内容」50項目を既に実施していることなど)を満たす場合には、同様に筆記試験①(注2)の免除を認めるなどの経過措置について検討する

引用元:文化庁「日本語教育の質の維持向上と仕組みについて(報告)」

この文章では、法律が施行される前から行われている「文化庁受理420時間日本語教師養成講座」と「大学・大学院などの日本語教師養成課程」で勉強している人は、2024年4月1日以降に登録日本語教員養成機関(注1)で勉強した人と同じように、国が新しく行う試験の一つ、筆記試験①(注2)を免除するということが述べられています。

(注1)2023年2月の文化庁報告では「指定日本語教師養成機関」と表現されているものは、2023年6月に公布された新法律で「登録日本語教員養成機関」と表現されているものと同じものです。

(注2)2023年2月の文化庁報告では「筆記試験①」と表現されているものは、2023年6月に公布された新法律で「基礎試験」と表現されているものと同じものです。

つまり、現行の文化庁受理420時間日本語教師養成講座を勉強した人も、新しい法律の下での日本語教師養成講座で勉強した人と同じ扱いをするということですので、法律の施行前に日本語教師になるための勉強を始めた場合でも、ムダになるということはありません。

さて、法律成立後、3回に分けて法律の概要について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

まとめ

  1. 1.「登録日本語教員養成機関」とは、国が指定した日本語教師養成機関のこと
  2. 2. 新しい法律で「日本語教師養成講座」は登録先が文化庁から文部科学省に変更となる
  3. 3. 現行の「420時間日本語教師養成講座」は受けてもムダにならない

これから日本語教師を目指す皆さんは、「今勉強を始めた方が良いのか」それとも、「新しい法律が施行されてから勉強した方が良いのか」など、いろいろな心配や不安があるかもしれません。

そのため、私たちルネサンス日本語学院では、この法律が成立するまでの文化庁の会議と国会審議を全てリアルで傍聴してきた現役日本語教師がその皆さんの心配や不安に一つひとつ丁寧にお答えしています。

「百聞は一見に如かず」。
セミナーや個別相談でこの新しい法律がどういうものなのかをより理解して、ご自身の進路を一緒に考えてみませんか。

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