日本語教師養成コラム
外国人を雇用する際の注意点と雇用時のポイントを紹介
公開日:2025.09.22 更新日:2025.09.30

監修者情報
ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
人手不足を解消するために「外国人を雇用したい」とお考えの企業の担当者様も、いらっしゃるのではないでしょうか。 外国人を雇用する際は在留資格やスキル、日本語能力の現状などの項目を確認する必要があります。
そこで本記事では、外国人を雇用する際の注意点を紹介します。 外国人の雇用を前向きに検討するために、ぜひご活用ください。
外国人を雇用する際に注意したいこと
外国人の雇用を検討する場合、どのようなことに注意しなければならないのでしょうか。 本項では、雇用時の注意点を詳しく紹介します。
注意点①在留資格と業務内容が一致するか
外国人を雇用する際の注意点としてまず挙げられるのが、在留資格と業務内容が一致しているかどうかをきちんと確認することです。 国内で職に就くことが認められている在留資格には、ワーキングホリデーなどの「特定活動」を除いて19の種類があり、それぞれ就業できる業務内容が異なります。
在留資格と業務内容が一致していない状態で雇用した場合は、企業が不法就労助長罪に問われ、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはその両方を科せられます。 在留資格は、外国人が保有している"在留カード"から確認することが可能です。
注意点②日本語能力に問題がないか
外国人の日本語能力の現状を確認することも、大切です。 日本語能力に問題があった場合は、コミュニケーションがうまく取れず、業務を遂行するうえで支障をきたすおそれがあります。
外国人の日本語能力がどの程度なのかを測る際は、"日本語能力試験(JLPT)"や日本での滞在期間が一つの基準になります。 日本語能力試験のレベルは高い順からN1~N5に分かれており、ビジネスの場ではこのうちN1またはN2程度を保有しているのが望ましいとされています。
注意点③日本人と同一の雇用条件になっているか
外国人の雇用を見据えて求人を出す際は、日本人と同一の雇用条件を提示しましょう。 これは労働基準法第3条によって、以下のように定められているからです。
""使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。""
上記の通り、外国人も日本人と同様、労働基準法の法令が適用されます。 そのため、外国人に向けて募集をかける際は、日本人への条件と同一にしなければなりません。
仮に国籍を理由に給与や労働条件に差をつけると、労働基準法に抵触し、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金を科されるおそれがあります。 なお能力によって給与に差をつけたり、在留資格の規定に則って労働時間を短くしたりすることは、労働基準法の違反にはなりません。
注意点④労働条件を明確に伝えられているか
労働条件通知書に記載した労働条件を明確に伝え、理解できているか否かの確認を取ることも大切です。 日本語を母語としない以上、日本語で記載された労働条件通知書を読んでも内容について理解を深められない可能性は十分にあります。
また文化の違いによって、労働時間や給与、社会保険の有無などに認識の不一致が生じることも懸念されます。 そのため、労働条件通知書の内容を明確に伝えられるように"時間をかけて確認し合う""書面で用意する"といったフォロー体制を整えましょう。
可能であれば母国語で内容を記載すると、よりスムーズな理解が得られます。
注意点⑤文化の違いを理解・共有できているか
国によって文化が異なるので、それぞれの違いを理解・共有することも重要なポイントです。 仮にそれぞれの文化を理解・共有できなければ、コミュニケーションや業務でトラブルが発生するケースも否定できません。
例として、時間にルーズな文化をもつ外国人を雇用した場合、時間を守らないことに対してほかの従業員が不満を感じ、衝突が起こる可能性があります。
こうした事態を避けるために有効な方法として、企業のルールの整備とともに、ルールを共有するための研修の実施などが挙げられます。 これらを行うことで、双方の文化への理解が進み、外国人にとってより働きやすい環境を構築できるでしょう。
注意点⑥適切な教育環境が整っているか
外国人がより高いパフォーマンスを発揮するためには、教育環境の整備も必要不可欠です。 業務の遂行や日常生活には支障のないレベルで日本語を理解できる外国人であっても、日本語の細かなニュアンスの違いを理解するのは難しいかもしれません。
そのため、ただマニュアルを渡すだけでは適切に業務を行ってもらえず、生産性が低下する可能性があります。 雇用した外国人にスムーズに業務を遂行してもらうためには、日本語研修の実施や上司による定期的な面談といった教育環境を整備することが重要です。
在留資格のなかには日本語能力が必要ないものもある?
在留資格の申請の際に、日本語能力を必須としないものがあります。 その代表的な例として"技人国(ぎじんこく)"が、挙げられます。 技人国とは、"技術・人文知識・国際業務"の3つの在留資格の略称です。
これらの在留資格の取得には日本語能力の有無が問われないため、日本語能力が備わっていないことも考えられます。 企業としては、技人国を保有した外国人を雇用する場合には、在留資格を確認する以外の方法であらかじめ日本語能力を確認しておくと安心です。
外国人を雇用することで得られるメリット
外国人を雇用すると、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。 ここからは、外国人を雇用した際の3つのメリットを紹介します。
メリット①人手不足の解消につながる
外国人を雇用するメリットとして挙げられるのは、人手不足の解消です。 日本では出生率の低下と高齢化が原因で、生産年齢人口が年々減少しつづけています。 生産年齢人口とは15~64歳未満の人口のことで、1995年の8,716万人をピークに2024年には7,372万人にまで減少しています。
こうした現状を背景に、業種を限らず人手不足に悩まされているのです。 そこで人手不足の解消につながるのが、外国人の雇用です。 外国人を雇用する環境を整えられれば、日本の生産年齢人口の減少による影響を抑えられます。
参照元:総務省「令和6年 情報通信に関する現状報告(概要)」 総務省統計局「令和7年 人口推計」
外国人を雇用することで、優秀な人材を確保できる可能性が高まります。 "特定技能"や"高度専門職"などの在留資格を保有する外国人は、資格取得の際に一定の知識や技術を身につけているので、雇用すれば高いスキルを発揮してくれます。
また、海外にも拠点がある企業の場合は現地採用を導入すると、多言語対応や現地の文化・習慣に富んだ人材を確保することにもつながるでしょう。 このように、外国人を雇用することで即戦力となる優秀な人材の確保が可能で、ひいては自社の海外進出も図れます。
メリット③企業のグローバル化の強化につながる
多言語で対応できる外国人を雇用することは、自社のグローバル化にも期待がもてます。 海外の企業との商談を進めたい場合、現地の傾向や文化に対して知識がある人がいると、契約もスムーズに行える可能性があります。
現地の言語や文化を理解したうえで商談や契約を進めることで、自社のグローバル化を円滑に推進できるでしょう。
外国人を雇用するデメリット
外国人の雇用は、人手不足の解消や優秀な人材の確保といったメリットがある一方、デメリットが生じるのも事実です。
ここからは、雇用することで生じるデメリットを紹介します。
デメリット①文化の違いによるトラブルが起こる場合がある
日本との文化の違いによって、外国人とトラブルが生じることも考えられます。 日本と海外では、コミュニケーションや仕事の考え方などに対し、さまざまな違いが存在します。
場合によっては、文化の違いが原因でお互いの印象が悪くなるかもしれません。 これが原因で社内の雰囲気も悪化し、生産性の低下や企業全体の評判に悪影響を起こす可能性もあります。
こうしたトラブルを未然に防ぐために、外国人を雇用した際は、お互いの文化を理解する機会を設けてみてください。
デメリット②雇用までにコストや手間がかかる
日本人を雇用する場合よりも、コストや手間がかかることがあるのもデメリットの一つです。 日本在住の外国人を雇用する際は、在留資格の発行時や日本語研修にかかる費用が発生します。
また海外在住の外国人の場合は、渡航費用をはじめ、住宅を手配するための費用が必要です。 このほか、在留資格は業務内容と雇用する企業に紐づけて発行されるため、前職がある外国人を採用する場合は変更手続きが必要となります。
変更手続き中は働けないので、採用してもすぐに業務にあたってもらうことができません。 雇用後の業務をスムーズに進めてもらうためにも、この項目の内容は理解したうえで採用活動を進めましょう。
外国人を雇用するための条件は?
外国人を雇用するためには、以下の条件を満たしている必要があります。
【外国人を雇用するための条件】
- ・在留カードを保有している
- ・在留期限が切れていない
- ・保有している在留資格と雇用後の業務内容が一致している
- ・業務が在留資格によって定められた範囲内である
上記の条件を満たしていない外国人を採用した場合、企業は"不法就労助長罪"に問われ、3年以下の懲役または300万円以下の罰金を科されるかもしれません。 企業のイメージを守るためにも、これらの項目はきちんとご確認ください。
外国人を雇用する際のポイント
ここからは、外国人を雇用する際に気をつけるべき4つのポイントを紹介します。
ポイント①教育環境を整える
外国人を雇用する際は、業務のフォローだけではなく日本語研修の機会を設けることが大切です。 先述の通り、日本語能力に問題がない外国人でも日本語の細かなニュアンスやあいまいな表現をすべて理解するのは困難です。
業務を滞りなく遂行してもらうために、こうした実践的な日本語を学べる日本語研修は、積極的に行うとよいでしょう。
ポイント②サポート体制を整備する
業務面や生活面のサポートを行うこともおすすめです。 例えば、在留資格に関する手続きや社内文書の翻訳などが挙げられます。 生活面では必要に応じて日本の文化・習慣を学ぶ研修を行うことで、文化的なギャップが少なくなるので、外国人は安心して働くことができます。
また、外国人の雇用が初めてであれば、相談窓口の設置や業務をサポートする担当者を配置するとよいでしょう。 これらのサポートを行うことで、生産性の向上や離職率の低下につながります。
ポイント③自社の従業員に外国人の雇用への理解を深めてもらう
自社の従業員の、外国人の雇用に対する理解を深めておくことも重要です。 業務途中での日本語研修の必要性や、受け入れ体制に対する準備を事前に共有しておくなど、双方の理解を深めることが必要です。
また、外国人には、宗教を信仰している方が多く存在します。 宗教のなかには、特定の飲食物を摂取しなかったり、礼拝の時間が必要だったりするものもあります。
これらの習慣への理解が足りないと、宗教に関するハラスメントを指す"レリジャスハラスメント"を悪気なく行ってしまうかもしれません。 日本人社員と外国人社員の双方理解ができていないと、ストレスやモチベーション低下の原因となり、生産性の低下や早期離職につながるおそれがあります。
上記の事態を避けるために、あらかじめ社内研修やガイダンスを設けて海外の文化や習慣などを学ぶ機会を設け、自社の従業員の理解を深めましょう。
外国人を雇用する流れ
ここからは具体的に、外国人を雇用するまでの流れを紹介します。 日本人を雇用する際と手順が大きく異なるため、きちんと確認しておいてください。
ステップ①取得見込みのビザを調査する
内定を出す前に、取得見込みのビザの調査が必要です。 外国人が保有している在留資格によっては、就労が認められていないケースや、職種制限が設けられているものもあります。
そのため、取得見込みのビザはあらかじめ調査し、内定を出しても問題ない人材かどうかを見極めましょう。 問題がなければ内定を出し、次のステップへと進みます。
ステップ②雇用契約書を作成する
次に、雇用契約書の作成に移ります。 外国人を雇用する際も、日本人と同様に雇用契約の締結が求められます。 雇用契約書を作成する際は、以下の点に気をつけましょう。
【雇用契約書を作成する際に注意したい点】
- ・日本の法律に準拠した雇用契約書を作成する
- ・外国人が理解できる言語で作成する
- ・雇用契約書の記載が完了したら、労働条件について本人に説明し、了承を得てから就労ビザの申請を行う
雇用契約書は就労ビザを申請する際に必要な書類であるため、申請前にあらかじめ作成しておかなければなりません。
雇用契約書には、雇用期間や就業場所、就業時間などを外国人にわかりやすいように明確に記載することが重要です。
ステップ③就労ビザの申請手続きを行う
雇用契約書の内容に了承を得たあとは、就労ビザの申請手続きを行います。 その際は、日本在住の外国人を雇用する場合と、海外在住の外国人を雇用する場合で申請手続きの手順が異なります。
それぞれの手順は、以下の通りです。
【就労ビザを申請する際の手順】
|
日本在住の外国人の場合 |
海外在住の外国人の場合 |
手順 |
①出入国在留管理局で事前相談を行う ②申請書や採用理由書などの書類を作成する ③作成した書類に署名する ④出入国在留管理局での申請を行う ⑤就労資格証明書が交付される |
①出入国在留管理局で事前相談を行う ②申請書や採用理由書などの書類を作成する ③作成した書類に署名する ④出入国在留管理局での申請を行う ⑤在留資格認定証明書が交付される ⑥就労ビザを受け取り、内定者に送付したあと、日本に入国してもらう |
ステップ④雇用する
就労ビザが取得できたら、社内で受け入れ準備を整えて雇用開始となります。 具体的な受け入れ準備には、自社の従業員への周知や日本語研修の実施などが挙げられます。
また、なんらかの宗教を信仰している外国人を雇用する際は、不適切な対応を取らないよう事前に社内研修を実施しておくのも一つの方法です。 雇用したあとは、ハローワークへの届け出や雇用保険の加入手続きも必要となるため、忘れずに行ってください。
外国人の雇用が進むなかで日本語教師の需要は高まっているって本当?
先述の通り、日本は現在少子高齢化の影響によって生産年齢人口の数が減少し、人手不足が社会問題となっています。 人手不足の解決策として、外国人の労働力を取り入れているのが現状です。
そして外国人が日本で働く際に重要となるのが、日本語能力です。 一定のレベルの日本語ができなければ、日本で働くのは難しいといっても過言ではありません。
外国人の日本語能力を向上させるために、日本語教育を行う環境が必要となるので、必然的に日本語教師の需要が高まっているのです。
外国人の雇用が増えている今、日本語教師として働くにはどうしたらよいのか
日本語教師としての信用度を高めるなら、国家資格「登録日本語教員」の取得がおすすめです。 登録日本語教員になるには、大きく2つのルートがあります。
【登録日本語教員になるための2つのルート】
- 1. 養成機関ルート 文部科学省に「登録日本語教員養成機関・実践研修機関」として登録されている日本語教師養成講座を受講し、「日本語教員試験」の応用試験に修了する
- 2. 試験ルート 「日本語教員試験」の基礎試験と応用試験に合格し、実践研修を修了する
なかでもおすすめなのは、養成機関ルートです。
第1回「日本語教員試験」基礎試験の合格率は9.3%とかなり低く、基礎試験と応用試験ともに合格が必要な試験ルートは難易度が高いと考えられます。
特に、ルネサンス日本語学院の「登録日本語教員養成・実践研修コース」は、講座の約7割がオンラインのため、働きながらでも無理なく日本語教師を目指すことが可能です。
外国人を雇用する際は、在留資格と業務内容が合っているかどうかを確認することが大切
今回は、外国人を雇用する際の注意点や雇用までの手順を紹介しました。 外国人を雇用する際は、在留資格と業務内容が一致しているかどうかを確認する必要があります。
仮に一致していなかった場合は、不法就労助長罪に問われるかもしれません。 また、日本語教育の環境を整えることも大切です。 社内で継続的に日本語研修を実施すれば、より円滑に業務を進められるようになるでしょう。
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この記事の監修者

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格
《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。
《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。
《監修者からのコメント》
日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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