日本語教師養成コラム
外国人労働者の推移は?受け入れで生じる課題はある?
公開日:2025.09.22 更新日:2025.09.30

監修者情報
ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
外国人労働者の受け入れは、労働力不足の改善やグローバル化への取り組みとして、近年注目を集めています。
実際に受け入れを検討する際は、日本の外国人労働者の現況や課題を把握しておくことが重要です。
そこで本記事では、日本で働く外国人労働者の推移と、受け入れ時に生じる課題を詳しく解説します。
自社の成長に向けて外国人労働者の受け入れを検討する事業者様は、ぜひご一読ください。
外国人労働者の推移
厚生労働省が発表した"「外国人雇用状況」の届出状況"によると、日本の外国人労働者数の推移は以下のようになっています。
|
2015 |
2016 |
2017 |
2018 |
2019 |
2020 |
2021 |
2022 |
2023 |
2024 |
専門的・技術的分野の在留資格 |
167 |
201 |
238 |
277 |
329 |
360 |
395 |
480 |
596 |
719 |
特定活動 |
13 |
19 |
26 |
36 |
41 |
46 |
66 |
73 |
72 |
86 |
技能実習 |
168 |
211 |
258 |
308 |
384 |
402 |
352 |
343 |
413 |
471 |
資格外活動 |
192 |
240 |
297 |
344 |
373 |
370 |
335 |
331 |
353 |
398 |
身分に基づく在留資格 |
367 |
413 |
459 |
496 |
532 |
546 |
580 |
595 |
616 |
629 |
日本で働く外国人労働者の数は2015年~2024年までの10年間で急激に増加しており、その2024年10月末時点では約230万人にのぼります。
参照元:厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)p2」
産業別で見た外国人労働者の数
厚生労働省によると、2024年時点で日本に在留する約230万人の外国人労働者のうち、もっとも多く従事しているは"製造業"で、約60万人にのぼります。
これに続き、"サービス業"が約35万人、"卸売業、小売業"が約30万人となっています。
製造業の仕事は、相応の体力を求められるというイメージから若い世代に敬遠されがちな傾向があり、慢性的な人手不足を課題としているケースが多いといわれているのです。
このような状況を打開する対策として、製造業全体が外国人労働者を積極的に受け入れているため、ほかの産業と比べて外国人労働者が多い傾向にあることが伺えます。
参照元:厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)p6」
外国人労働者が増えている理由
先述したように、日本における外国人労働者は年々増加しており、2024年には過去最多を更新しています。
こうした背景には、以下の要因が挙げられます。
人手不足の深刻化により外国人労働者の受け入れが活発化している
外国人労働者の受け入れが増加する理由には、人手不足を補うための外国人労働者の積極的な採用が挙げられます。
日本は少子高齢化に伴い、製造業や農業といったさまざまな産業で人手不足が深刻化しており、国内の労働力だけで補うことが困難なケースは珍しくありません。
こうした状況を解決するための新たな労働力として、外国人労働者が注目され始めたわけです。
外国人労働者の自国よりも給与水準が高いため
日本の給与水準の高さも、外国人労働者が増加する理由の一つです。
特に、東南アジア出身の労働者にとっては、自国と比べて給与水準が高いことから、就労先として日本を選ぶことが多いといわれています。
たとえば、ベトナムの平均年収は日本円で48万円程度、インドネシアの場合は38万円程度で、日本で働いた場合の年収と比べて低い水準にあることがわかります。
政府の支援が充実しているため
外国人労働者が増加する要因には、外国人を雇用する事業者に対する政府の支援制度が充実していることも挙げられます。
事業者は外国人労働者の受け入れに際し、労働環境の整備をはじめとするコストがかかる場合があります。
しかし、政府の支援制度を利用すれば、事業者の負担を軽減できるほか、外国人労働者の受け入れにより助成金も受け取れるのです。
外国人の雇用時に利用できる政府の支援制度の一例として、以下のようなものがあります。
【支援制度の例】
- ・人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
- ・トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
- ・キャリアアップ助成金
"人材確保等支援助成金"は、就業規則の多言語化や相談体制の構築といった外国人労働者の職場定着に取り組む経費を助成する制度です。
また"トライアル雇用助成金"は、職業経験の浅く就職が困難な求職者をトライアル雇用した際に事業者が利用できる制度で、外国人も対象に含まれます。
このほか"キャリアアップ助成金"は、永続的な在留資格を持つ非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを支援した場合に助成金を受け取れる制度です。
日本国内の事業者は、外国人労働者の受け入れや処遇改善に伴う経費の一部を、政府に支援してもらえるため、外国人を積極的に雇用できるのです。
参照元:
厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」
厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」
厚生労働省「キャリアアップ助成金」
グローバル化が進んでいるため
外国人労働者が増加する理由には、日本企業のグローバル化の進展も挙げられます。
事業を世界的に展開するには、海外市場の把握が不可欠です。
このような場合に、国際的な視点を持った外国人労働者を受け入れることで、事業展開の足がかりにしようとする動きがあるのです。
こうした動きは大手企業に限らず、海外展開を見据える多くの企業で見られています。
国際化を試みる日本企業の取り組みも、外国人労働者の受け入れ増加の一因といえるでしょう。
外国人労働者を受け入れる際に生じる課題
外国人労働者の受け入れは、人手不足の解消に寄与する有効な手段です。
その一方で、いくつかの課題も指摘されているため、以下で詳しく解説します。
コミュニケーション
外国人労働者の受け入れにおいて、多くの事業者が課題として挙げるのがコミュニケーションの問題です。
たとえば、特定技能外国人を受け入れる場合、在留資格の取得に必要な日本語試験を通過していることから、コミュニケーションに問題はないと考えてしまうかもしれません。
しかし、実務に必要な会話や適切な言葉づかい、慣習的なやりとりなどに慣れるには時間がかかるものです。
そのため、外国人労働者の採用を予定、もしくは検討している事業者は、あらかじめ既存の社員と情報を共有し、円滑なコミュニケーションが可能な体制を整えておきましょう。
労働環境の整備
外国人を採用する際の課題として、労働環境の整備も挙げられます。
たとえば、安全への配慮が必要な作業現場では、注意喚起のために標識を設置していることが一般的です。
しかし、このような注意喚起が日本語のみで表示されている場合、外国人労働者が作業に伴う危険を正しく認識できない可能性があります。
そのため、外国人労働者を雇用する際は、その労働者の母語に合わせた標識の設置など、労働災害の防止に努めなければなりません。
居住地域のルール・文化に対する理解
外国人労働者を雇用する事業者は、採用した外国人労働者に対し、居住する地域のルールやマナー、文化の違いを理解できるようにサポートすることが重要です。
具体的には、ごみの分別や生活音への配慮などが挙げられます。
日本では、燃えるごみやペットボトル、缶などを分別して捨てることは一般常識として知られています。
しかし国によっては、そもそもごみを分別する習慣がない場合があるのです。
また日本には、生活音に配慮することが社会通念として存在していますが、これを知らない外国人労働者が、意図せず騒音を出してしまうケースもあります。
こうしたルールへの理解がされていない場合、近隣との生活トラブルにつながり、会社としての責任が問われることにもなりかねません。
そのため、外国人労働者を採用する事業者は、採用者が居住する地域のルールや文化の違いを理解して問題なく生活できるように、教育や指導に努めることが必要です。
今後予想される外国人労働者の動向
2024年時点で最多を更新した日本の外国人労働者の数は、"特定技能制度"の拡張に伴い、今後も増加していくことが見込まれています。
特定技能制度とは、国内で人材を確保するのが困難な産業において、特定の技能を持った外国人を雇用できる制度のことです。
2019年から始まったこの制度は、少子高齢化に伴う人手不足の影響から、利用する事業者が増え始めています。
在留期間が5年までの特定技能1号と、上限がない特定技能2号の2種類に分けられており、当初は対象産業が限られていました。
しかし、2024年に自動車運送業・鉄道・林業・木材産業が特定技能1号の対象産業として追加され、国内の労働力不足のさらなる改善に向けた動きがあるのです。
さらに政府は2027年を目標に、特定技能の対象とする産業に倉庫管理や廃棄物処理、リネン供給の追加を検討しています。
こうした動向から、外国人労働者は今後も増える見込みがあるといえます。
日本の外国人労働者は増加傾向で推移しており、今後も増加が見込まれる
今回は、外国人労働者数の推移と受け入れ時の課題を解説しました。
日本における外国人労働者数は急激に増加し、2024年時点でおよそ230万人が在留しています。
外国人労働者の受け入れは、事業者にとって人手不足の解消に有用な対策である一方、コミュニケーションや異文化への理解といった課題に対応することが必要です。
こうした背景から、近年外国人向けの日本語研修の需要が高まっています。
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この記事の監修者

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格
《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。
《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。
《監修者からのコメント》
日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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