コラム

「日本語教育能力検定試験は役立たない」は本当なのか?

2023.09.08

26800112_m.jpg

「日本語教育能力検定試験は役に立たないって本当?」
「日本語教育能力検定試験のメリット・デメリットを知りたい」
「日本語教育能力検定試験の勉強方法は?」

昨今、外国人に日本語を教える職の需要は高まっています。
本記事では、日本語教育能力検定試験は役に立たないという言説について解説していきます。
日本語教師が国家資格(登録日本語教員)へ移行することも決定しました。
不安や悩みを抱えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

【基礎知識】日本語教育能力検定試験とは?

日本語教育能力検定試験は公益財団法人日本国際教育支援協会実施の試験で、日本語教員となるために学習している者、日本語教員として教育に携わっている者を対象として、日本語教育の実践につながる体系的な知識が基礎的な水準に達しているかどうか、状況に応じてそれらの知識を関連付け多様な現場に対応する能力が基礎的な水準に達しているかどうかを検定することを目的としています。
(参考:JEES 日本語教育能力検定試験ホーム

日本語教育に関する基礎的知識から、異文化理解、そしてコミュニケーション論まで、日本語教育において必要な能力を問う内容が出題され、合格することで日本語教育を行うために必要な能力が備わっているかを証明することができます。
また、合格した場合、海外の大学の日本語教育での採用条件や、日本での就職先での有利な評価・待遇を期待できるなどのメリットがあります。

試験は毎年1回、10月に実施されており、昨年2022年の合格率29.8%、2021年の合格率は28.9%と、徐々に合格率が高くなってきたとはいえ、比較的難易度の高い試験と言われています。
今年の実施日は10月22日(日)ですが、来年以降も実施されるかどうかは現時点では未定です。(2023年9月時点)

日本語検定試験と日本語教育能力検定試験の違いは?

日本語検定試験は、日本語での語彙や文法、読解・聴解・作文などの総合力を測定するものであるのに対し、日本語教育能力検定試験は、日本語教育に携わる人が必要とされる日本語教育能力を測定する試験です。
前者は、日本語を使うすべての人が対象で、自己の日本語レベルを確認するために受験する場合が多いのに対し、後者は、日本語を外国語として教える人、海外の留学生を対象とした日本語教育を担当する人、外国人に対してビジネス日本語などを教える人など、日本語「教育」に必要な知識と技術を持った人々の能力評価や自己スキルアップのために受験されます。

どちらも合格率は高くありませんが、「外国人への日本語教育」が求められる職の場合、日本語教育能力検定試験の受験を選ぶ方が多いです。

「日本語教育能力検定試験は役に立たない」は本当なのか?

「日本語教育能力検定試験は役に立たない」という言説については、ある種間違いといえない側面もあります。
しかし、それは「弁護士資格は経理上役に立たない」というようなもので、的外れといって良いでしょう。
たしかに、純粋な日本語力を示すのであれば、先述の「日本語検定」の1級を取得している人の方が説得力があります。
日本人でもその合格率は1%台であり、合格者には高い語彙力や文法・表記の正確性が担保されます。

しかし、日本語教師を目指す場合や、日本語教育に興味のある場合には、日本語教育能力検定試験の合格はそれ以上に説得力があり、日本語教育業界での信頼性を高めることができます。
また、日本語教育能力検定試験を受けることで、日本語教育に必要な基礎的な知識や技能が身につけられます。

ただし、試験の合格だけで実践的な指導力が身につくわけではなく、実際に授業を行いながら、自分自身で日々学び続けることが重要です。
先ほども述べましたが、日本語教育能力検定試験の合格によって、日本語教育を行うために必要な能力が備わっていることの証明になります。
それに加え、実践的な経験を積むことがより高度な専門性や能力を身につけるための大切な要素となるのです。

日本語教育能力検定試験のメリット

ここからは、日本語教育能力検定試験のメリットとして、一般的に言われてきたことについて解説していきます。
主なメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

  • ・日本語学校などで勤務をする場合の3つの要件の一つであること
  • ・費用が安い
  • ・独学の場合は学習時間を調整できる

それぞれ解説していきます。

メリット①日本語学校などで勤務をする場合の3つの要件の一つであること

国内の法務省告示の日本語学校で日本語教師として働く場合は、一般的に次の3つの要件のうち1つを満たす必要があります。その3つはこちらです。

  1. ①4年制大学を卒業し、日本語教師養成講座420時間カリキュラムを受講し修了する。
  2. ②日本語教育能力検定試験に合格する。
  3. ③大学または大学院において「日本語教育に関する教育課程」を主専攻(45単位)または副専攻(26単位)し、卒業する。

①と③には4年制大学、または大学院の卒業が求められます。
しかし、「②日本語教育能力検定試験の合格する」は4年制大学を卒業していない方も受験可能です。
日本語教育能力検定試験には必要な受験資格がなく、出願手続きを行えば誰でも受験できるので、「文化庁届出受理日本語教師養成講座420時間コースを修了する」ことが難しい方や4年制大学を卒業していない方で、日本語学校に勤務する形で仕事を行うことを検討している方にとっては日本語教育能力検定試験の合格は大きなメリットとなります。

<関連記事> 日本語教師の基礎知識

メリット②費用が安い

日本語教育能力検定試験は、一般的な語学試験よりも受講費用が安いというメリットがあります。
たとえば同じ国家資格の弁護士資格の受験料金は2万7,200円です。
対して、日本語教育能力検定試験の受験料は1万7,000円(2023年)と比較的安価といえます。
もちろん、試験勉強として事前にテキストを購入する必要がありますので、実際の費用はもう少しかかるでしょう。

このように、日本語教育能力検定試験は、比較的低コストで受験をすることができるため、日本語教育に興味がある人や、日本語教師として活動する人にとってはメリットといえます。

メリット③独学の場合は学習時間を調整できる

日本語教育能力検定試験は年1回しか受験の機会がなく、比較的難易度の高い試験ではありますが、現在は多くの問題集も出版されているため、しっかり対策すれば、独学で合格を目指すことも可能です。
日本語教育能力検定試験の合格に向けた効果的な学習方法として、過去問を解くことと苦手分野の把握と克服が挙げられます。

まず、過去問を何年分も繰り返し解いていくことで、試験の出題傾向が把握できるようになります。
出題傾向が見えることで、試験日までの少ない期間の中で、どの部分を意識的に学習したらよいかわかるようになってきます。
また、問題集や過去問を繰り返し解いていると、おのずと自分の苦手分野が見えてきます。
苦手分野を把握することで、試験日までの学習計画を立てやすくなり、効率的に試験勉強を行うことができます。

独学で日本語教育能力検定試験の合格を目指す最大のメリットは、このように、自分の生活スタイルに合わせて学習時間を調整したり、苦手なところを重点的に学習したりするなど、自分のペースで、自分に合った学習計画で、無理なく試験勉強を進められることです。

日本語教育能力検定試験のデメリット

ここまで日本語教育能力検定試験のメリットを解説してきました。
では、日本語教育能力検定試験のデメリットはどのような点が挙げられるのでしょうか。

  • ・実践的なスキルを学べない
  • ・比較的難易度が高い
  • ・1年に1回しか試験がない

それぞれ見ていきましょう。

デメリット①実践的なスキルを学べない

日本語教育能力検定試験は、教えるために必要な理論的な知識や知見を問うものであるため、実践的なスキルに直結するというわけではありません。
実践的なスキルや技能を身につけるためには、実際に学習者と接し、指導する経験や実践的なトレーニングが必要です。
そのため、日本語教育能力検定試験に合格をしても、実際に学習者に指導することが困難な場合があります。
学習者といっても、働いている人もいれば、大学などで学ぶ学生、日本で生活をしている人など、さまざまです。もちろん、日本語を学習する目的もさまざまです。
学習者一人一人の背景や学習目的、教える機関によって教え方も異なるため、日本語教育能力検定試験の合格だけで実践的なスキルを全て習得することはできません。
実際に日本語教育に携わる場合は、日本語教育能力検定試験で得た知識を活用しながら、自分自身で日々学び続けることが重要です。

デメリット②比較的難易度が高い

日本語教育能力検定試験は難易度が高いと言われますが、いったい合格率はどのくらいなのでしょうか。
2018年度から2022年度にかけての平均合格率は28.2%です。直近の2年(2022年度、2021年度)を比較すると合格率は0.9%増加しているとはいえ、2022年度に実施された社会福祉試験の合格率が31.3%であったことから、一部の国家試験と同じぐらいの難易度であるとも言えます。
そのため、特に独学の場合は、高いモチベーションを維持し、計画的に学習を進める必要があると言えるでしょう。

デメリット③1年に1回しか試験がない

日本語教育能力検定試験の実施は1年に1回です。そのため、試験に不合格だった場合、翌年まで受験の機会がなく、合格までの時間が長くなってしまいます。
先ほども述べましたが、来年以降、日本語教育能力検定試験が実施されるかどうかは2023年9月現在では発表されていませんが、もし来年も受験の機会があり、受験を希望される場合は、計画的に学習を進めることをおすすめします。

日本語教育能力検定試験の勉強方法

これまで日本語教育能力検定試験は1年に1回、10月に実施されてきました。
学習方法は独学と講座受講の2通りが一般的でした。
独学で勉強する場合は、自分自身で教材を選び、スケジュールを立てて計画的に勉強する必要があります。
自分自身で課題を設定し、それを克服することができる人にとっては、独学が向いているかもしれません。
日本語教育能力検定試験に限ったことではありませんが、独学にせよ、講座受講にせよ、自分に合った勉強方法で学習を進めることが大切と言えるでしょう。

日本語教育能力検定試験を役立てるには?

日本語教育能力検定試験の合格によって、国内の法務省告示の日本語学校で日本語教師として働く際に必要な要件の1つを満たすことができます。
また、日本語教育を行うために必要な能力が備わっているかを証明することができるため、国内外の就職先での有利な評価・待遇を期待できる可能性もあります。

「日本語教育能力検定試験が役に立たない」は誤り

今回は、日本語教育能力検定試験が役に立たないという言説について解説してきました。
たしかにそういった言説も聞かれますが、実際に日本語教師を目指す場合や、日本語教育に興味のある場合には、日本語教育能力検定試験は有用な試験です。
日本語教育能力検定試験で身につけた知識は、実際に日本語教師として学習者に日本語を教える際にも活かされるでしょう。
また、日本語教育機関へ就職の際に有利に働くことも期待できます。

日本語教師養成講座ならルネサンス日本語学院におまかせください!
日本語教師の国家資格「登録日本語教員」になるためのサポートをおこなっています。

日本語教師に興味はあるけど・・・
「どうやって日本語教師になれるかわからない」
「教えた経験がないけど大丈夫?」
「外国語がわからないけど日本語を教えることはできる?」
など、疑問をお持ちの方は、ぜひ一度、個別相談にお越しください。

皆さまのご質問に一つ一つお答えいたします!

お申し込みはこちら 個別相談フォーム | ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座 (rn-ac.jp)

<関連記事> 登録日本語教員とは 国家資格化に伴いどう変わる?
<関連記事> 日本語教師の資格は難易度が高い?試験の合格率やおすすめの勉強法を公開
<関連記事> 【2023年度版】日本語教育能力検定試験の合格点・合格率の傾向を徹底解説
<関連記事> 日本語教育能力検定試験はどんな試験?合格ラインや勉強方法を徹底解説