日本語教師養成コラム

外国人に日本語を教える際のポイントは何?直接法・間接法を理解しよう

公開日:2023.04.25 更新日:2024.09.10

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

授業中の風景

「日本語を教えるときのポイントは?」
「日本語の教え方にはどんな手法がある?」
「直接法・間接法の特徴は?」

日本語を教えるときには、学習者の日本語レベルや学習環境にあわせ、教え方を使い分ける必要があります。
本記事では、外国人が日本語を難しいと感じる理由、直接法・間接法の違い、そして、日本語を教えるときに注意しなければならないポイントなどについて紹介します。

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外国人にとって日本語のどこが難しいのか

外国人が日本語を学ぶときにつまづきやすいポイントは「漢字を覚える」「一つの漢字に対する色々な読み方とその使い分けを 覚える」「助詞の使い分けを理解する」の3つです。
日本語は、漢字・ひらがな・カタカナの3種類の文字を使い分ける必要があり、多くの外国人にとって馴染みのない漢字はとくに覚えにくいものの1つです。
また、日本語においてはひとつの漢字に対する読みがいくつも存在することが多いので、一つの漢字についてもいくつもの読み方を覚える必要があります。

さらに、「レストランで食べます」と「フォークで食べます」の「で」は同じひらがなの「で」ですが、意味が違っていたり、「となりのトトロ」の「の」を「に」に変えて、「となりにトトロ」とすると意味が変わってしまうというように 、どの助詞をどう使うかによって文意が異なる日本語 では、助詞の使い分けをしっかり理解する必要があります。

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日本語の教え方

日本語の教え方には「直接法」「間接法」の2種類があります。
ここからは、日本語教育における「直接法」「間接法」の2種類の教え方について、比較しながら紹介します。

直接法

日本語教育における直接法とは、日本語のみを用いて日本語を教える方法です。
発音はもちろん、難解な日本語文法事項についての説明をするときにも、日本語のみを用いて行います。

直接法では、毎回の授業で日本語を多く聴き、発音の仕方や自然な言い方、話し方を経験として学びながら、日本語が習得できます。
直接法による日本語教育では、多くの場合ジェスチャーやイラストカードを用いて、学習者がその言葉の意味や、文の意味をイメージできるようにして教えていきます。

間接法

日本語教育における間接法とは、日本語以外の言葉を用いて日本語を教える方法です。
日本の中学校、高校などで英語の授業をする際、日本語を用いながら英語について教える方法も、この間接法にあてはまります。

海外における日本語教育では、現地の学習者の母語や、クラス全員が理解可能な言葉を用いて日本語の授業を行う場合は多く存在します。

直接法のメリット

直接法では日本語を用いて授業を行うことができるため、外国語が不得手な教師であっても日本語を教えられることが、教える側のメリットとして挙げられます。

また、学習者にとっては、毎回の授業を通して日本語を聴いたり、話したりする機会が増えるため、リスニングやスピーキングの能力を鍛えられるというメリットがあります。

間接法のメリット

間接法で日本語を教えるとき、日本語を勉強し始めて間もない初心者にとっては、授業中の説明や指示について内容を正しく理解することができます。
また、日本語を用いて日本語を教える際には、一定のスキルが必要とされますが、そのスキルが十分でない教師が直接法で教えると 、日本語をまだ理解できていない学習者は、授業中に教師が話す日本語が理解できず、そのまま聞き流してしまうリスクがあります。
そういった事態を避けたい場合に、間接法は有効です。

外国人に日本語を教えるポイント

ここからは、特に初級レベルの外国人 に日本語を教える際のポイントを以下の3つに絞って紹介します。

  • 長文を使わない
  • ジェスチャーを使う
  • アウトプットを促す

それぞれ解説していきます。

長文を使わない

「今日はお腹が痛いので、会社を早退して、病院に行ってから、家に帰って寝ます」といくつもの文をつなげて長い文にして話すと、初級レベルの学習者はどこに文の切れ目があるのか分からなくなり、理解できなくなります。
そのため、「今日はお腹が痛いです。/会社を早退します。/病院に行きます。/家に帰って寝ます。」というように、なるべく一文一文を短くすることを心掛け、細かく短文を並べて話すことが重要です。

ジェスチャーを使う

ジェスチャーを使うことで、日本語の意味を目に見えるようにしてわかりやすくしたり、実際にその日本語が使われる場面をイメージしながら学んでもらうために、ジェスチャーを用いて場面を再現しながら教えることも効果的な方法です。

ジェスチャーを用いることで、視覚的に日本語を理解できます。

アウトプットを促す

一方的に文法や言葉を暗記するだけでは、実際に日本語を話すためのスキルは身につきません。
初級レベルであっても、その日の授業で勉強したことを使って会話練習をしたり、日本語で意見をのべてもらったりするなど、アウトプットの時間を作ることが大切です。

日本語を教える際のポイントは学習者に合わせて一番適切な教え方を選択すること

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外国人に日本語を教える時には、学習者の日本語レベルや学習環境にあわせて、適切な方法を用いて授業を行うことが重要です。
日本語の教え方を正しく理解し、学習者に合わせて教え方を工夫しながら、効率的で効果的な授業ができる日本語教師を目指しましょう。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。