コラム

登録日本語教員の制度はいつから?資格の詳細や必要性を解説

2023.12.29

「登録日本語教員はいつから始まる?」
「そもそも登録日本語教員とは何?」
「現行の日本語教師制度からの変更点を知りたい」
日本語教育に関心のある方は、登録日本語教員という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

本記事では、登録日本語教員について、冒頭の疑問から国家資格化の背景やメリットを解説していきます。
日本語教師が国家資格へ移行することが決定し、それについて不安や悩みを抱えている方は、必見の情報満載です。
ぜひ、最後までご覧ください。

2024年4月から日本語教員師は国家資格になる

2023年5月26日、日本語教師の国家資格化や、日本語教育機関を国が審査して認定する制度を定めた「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」が参議院本会議で賛成多数で可決され、成立しました。
この法律によって、今まで民間資格でしかなかった日本語教師は2024年4月から文部科学大臣の登録を受けた国家資格になります。

これは、日本語教育の質を向上させるために導入される重要な措置です。
国家資格になることで、日本語教師養成過程では、

平成 31 年審議会報告で示された「必須の教育内容」50 項目を網羅すること

引用元:文化庁「日本語教育の質の維持向上と仕組みについて(報告)」

また、

「日本語教育の参照枠」を踏まえ、言語教育法・実習などの教育内容を編成すること

引用元:文化庁「日本語教育の質の維持向上と仕組みについて(報告)」

という内容が求められます。つまり、統一基準に沿った教育が行われるということです。

また、国家資格の取得には、一定水準の知識や教授方法に対する能力を証明する試験が必要となります。
登録日本語教員になるための試験については法律に次のように書かれています。

「第二十二条
日本語教員試験においては、基礎試験及び応用試験を行うものとし、基礎試験にあっては日本語教育を行うために必要な基礎的な知識及び技能を有するかどうか、応用試験にあっては日本語教育を行うために必要な知識及び技能のうち応用に関するものを有するかどうかを判定するものとする。」

引用元:文部科学省

大学や指定養成機関における日本語教師養成課程や研修プログラムもさらに充実されることで、より高度で専門的な教育が提供できるようになるでしょう。

国家資格化には、いくつかのメリットがあります。
まず、日本語学習者は 一貫した教育プログラムを受けることができ、質の高い教育が保証されます。
さらに、国家資格を持つ日本語教師は就職や転職に有利になる場合もあると言えるでしょう。

総じていえることは、2024年4月からの日本語教師の国家資格化は、日本語教育の品質向上と教師の専門性の向上を目指す重要な一歩となるでしょう。
これにより、将来の日本語教育がより一層発展することが期待されます。

登録日本語教員とは

登録日本語教員は、前述の「国家資格化した日本語教師」の名称です。
登録日本語教員は、国から認可を受けた有資格者として、日本国内外の日本語学習者や留学生、外国人労働者などを対象に日本語教育を行うことができます。
当然、資格取得過程での試験は、日本語の教育方法や指導技術、教材の選定などに関する知識や能力を評価するものです。

登録日本語教員の資格を持つことで、専門的な知識とスキルを持つ教師として日本語教育に従事することができるといえます。
時には、教材の作成や授業計画の立案、学習者への適切なフィードバックなど、日本語学習者の能力向上に向けたサポートを多く行うこともあるでしょう。登録日本語教員は、日本語学校、大学などのほか、個別指導やオンラインレッスンなどでの活躍も期待されています。

日本語教師制度の現状からの変更点

次に、日本語教師の現状からの変更点を解説していきます。
変更点は以下の3つです。

  • 民間資格から国家資格への格上げ
  • 資格取得要件の変更
  • 資格更新の有無

それぞれ順に見ていきましょう。

民間資格から国家資格への格上げ


現状では、民間資格として運用していた日本語教師の質やスキルに、大きな差があることが問題となっていました。
しかし、2024年4月からの登録日本語教員制度では、国家資格に格上げされることになります。
この格上げにより、日本語教師養成の基準が統一され、厳格な試験や教育プログラムが導入されると期待されます。

また、国家資格の取得には、より高い水準の知識や教授能力を評価する試験が必要となります。
そのため、国家資格の導入によって日本語教師のプロフェッショナリズムが高まり、より良質な日本語教育が提供されることでしょう。
日本語学習者にとっても、信頼性のある教育を受けられるようになるメリットがあります。

資格取得要件の変更

現状では、日本語教育能力検定試験に合格することで、日本語教師としての活動することも可能でした。
しかし、登録日本語教員制度では、その要件が変更されます。
変更される要件のひとつには、国家資格試験の受験が必要という点が挙げられます。
日本語教育能力検定試験について、文化庁は「日本語教育能力検定試験は民間団体が行っている試験であるため、2024年以降も続けるかどうかは、その民間団体が考えて決めることで、国は関係ない」と話しています。

また、登録日本語教員制度では、所定の教育プログラムの修了や研修の履修も要件に含まれることが予定されています。
これにより、日本語教師の教育レベルが向上し、統一された基準に沿った質の高い日本語教育を提供することが期待されます。

資格更新の有無

最後に解説するのが「資格更新の有無」ですが、こちらは文化庁の日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議での見解が大きく揺れていました。 ですが結論からいえば、有識者会議でまとめられた報告では 「更新は不要」とのことです。
ただし、文化庁有識者会議の報告には

国が創設する資格を有する者として国に登録した日本語教師(以下、「登録日本語教員」という。) に対して(中略)登録後のキャリア形成に資する仕組みとして検討する

引用元:文化庁

と書かれていますので、登録日本語教員としてのキャリアアップのためにも継続的な自己研鑽が求められています。

ちなみに、現行の日本語教師制度では、一度資格を取得した後も更新手続きは必要ありません。

現役日本語教師への影響はあるのか

登録日本語教員制度の施行により、現役の日本語教師にはどのような影響が出るのでしょうか。
とはいえ、現職教師が国家資格の登録日本語教員になれず、日本語教師の数が減るようでは、資格創設の目的に反してしまいます。
新たな制度への円滑な移行と負担の軽減の観点から、一定の要件を満たす場合には、日本語教員試験や実践研修を免除する経過措置を設けられています。経過措置は、対象となる方の属性に応じ、全部で6つのルートがあります。
各経過措置ルートについて、該当者の要件と措置の内容は2023年12月28日に公開された「登録日本語教員の登録申請の手引き」に書かれています。ご自身がどのルートになるのは、該当手引きの「参考資料2:経過措置ルート判定ガイド」のページで確認することができます。
現役の日本語教師だからといって、試験も講習も受けることなく登録日本語教員になることができる人はいないのです。
これにより日本語教師のスキルや知識がより高度化して、教育品質の向上につながることは容易に想像できます。

日本語教師が国家資格となることで、教師のプロフェッショナリズムが高まることは期待できるでしょう。
自身のさらなる成長とともに、より質の高い日本語教育を提供できるよう努めていく必要があります。

日本語教師が国家資格になった背景とは

次に、日本語教師が国家資格になった背景について紹介しましょう。 背景としては、以下の2つが起因しています。

  • 教育の質の向上と均一化が求められている
  • 在留外国人の増加にともなう日本語教師の必要性が増している

それぞれ解説していきます。

教育の質の向上と均一化が求められている

日本語教師の国家資格化の背景には、まず教育の質の向上と均一化が求められているという要因があります。
近年、日本語教育の需要が増加しているなかで、日本語教師の質や教育内容の統一性が重要視されてきました。
現状では、民間の日本語教師養成講座や大学などで学び、修了することで日本語教師としての活動が可能でしたが、教育の質にばらつきが見られるという欠点もありました。

しかし、国家資格化によって教員養成の基準や評価基準が統一され、日本語教師の資質や能力が一定水準以上を満たすことが求められます。
資格の取得には、国家試験の合格や実践研修の履修が必要となり、経験や知識に基づく教育の質が向上することが期待されます。
また、日本語教師養成のプログラムや研修の充実により、教師間の共通理解や知識共有が進み、教育の均一化が図られることで、学習者への教育の質の高さが確保されると期待されています。
全国的な基準を持つ国家資格は、日本語教育の信頼性や国際的な評価の向上にも寄与すると考えられており、当制度はまずは、教育の質向上と均一化を目的としたものとなります。

在留外国人の増加にともなう日本語教師の必要性が増している

2つ目は、在留外国人の増加にともなって日本語教師の必要性が増していることです。 これについては、さらに以下の2つに分けて解説していきます。

  • 日本語教師が不足している背景
  • 日本語教師の不足を解消する施策

それぞれ詳しく見ていきましょう。

日本語教師が不足している背景

在留外国人の増加により、日本語教師の需要は急速に増えていますが、その需要に対して日本語教師の数は不足していると言われています。
また、在留外国人の増加により、日本で働く人の配偶者と子どもたちも増えていますが、その子どもが満足な日本語教育を受けることができていないという現状も問題です。
国としては「在留外国人の子ども18人に対して1人の日本語教師を配置すること」を定量的な指標として定め、改善を目指していまが、日本語教師の数不足が続くと、子どもたちにとって十分な日本語教育を受けられず、その後の進学や就職に問題が起こる可能性があります。

日本語教師の不足を解消する施策

日本語教師の不足を解消する施策こそが日本語教師の国家資格化ですが、具体的には何が望まれているのでしょうか。
そのひとつが、日本語教師の養成体制の充実です。 養成・試験プログラムは、より実践的な指導法やカリキュラム開発の能力を身につけるような教育プログラムになります。

また、国家資格の整備以外にも日本語教師のキャリア開発支援や奨学金制度の充実など、なるためのモチベーション向上策も考慮すべきでしょう。
さらに、日本語教師の採用および雇用の環境改善も不可欠です。
教師の給与や労働条件を改善するため、教育機関や日本語教育関連団体などとの連携が求められます。
これらの施策を総合的に推進することで、日本語教師の不足を解消し、より質の高い教育環境を整えることができるでしょう。
在留外国人の日本語習得の支援を進めることで、多文化共生の実現にも一役買うことができます。

日本語教師が国家資格になるメリット

ここからは、日本語教師の目線で語る「日本語教師が国家資格になるメリット」について解説していきます。 一般的には以下の3つが挙げられます。

  • 日本語教師の待遇の改善
  • 日本語教育の質の向上と均一化
  • 日本語教師の認知度の向上

それぞれ見ていきましょう。

メリット①日本語教師の待遇の改善

日本語教師が国家資格になることで、日本語学習の重要性が認識され、教師の待遇が改善されることが期待されます。
給与や労働条件の面での安定や福利厚生の整備により、教師の専門性を高めるための研修や教育環境の充実も期待できるでしょう。
これにより、高いモチベーションを持った日本語教師が増え、質の高い教育が提供されると考えられています。

メリット②日本語教育の質の向上と均一化

日本語教師の国家資格化は、教育の質の向上や、教育水準の均一化も期待できます。
統一された基準や試験により、教師の知識や技術レベルが確認され、継続的な専門研修の必要性も高まります。
これにより、日本語教育の品質が向上し、学習者にとってより信頼性のある教育環境が提供されることとなるでしょう。

メリット③日本語教師の認知度の向上

国家資格の取得はその職業人の信頼性と専門性を示すことにもつながります。
社会的な評価が高まり、日本語教育の地位や認知度は向上することが期待できるでしょう。
日本語教師に対する注目度が高まり、需要が増え、教師としてのキャリアや雇用の機会も拡大する可能性があります。

登録日本語教師の取得要件

ここからは、実際に登録日本語教員資格を取得する際の3つの要件を見ていきましょう。

  • 日本語教員試験「基礎試験」の合格
  • 日本語教員試験「応用試験」の合格
  • 実践研修の受講・修了

参照:登録日本語教員の登録申請の手引き(2023年12月28日文化庁)

それぞれ解説していきます。

日本語教員試験「基礎試験」の合格

基礎試験は、日本語教育を行うために必要な基礎的な知識及び技能について判定する試験です。
必須の教育内容で定められた5区分において、各区分で約7割程度の得点があり、かつ総合得点で約8割程度の得点があることが合格基準示されています。
区分ごとのおおよその出題割合の案として、文化庁より以下のように示されています。

  • (1)社会・文化・地域 ...約1割
  • (2)言語と社会 ...約1割
  • (3)言語と心理 ...約1割
  • (4)言語と教育(教育実習を除く) ...約4割
  • (5)言語 ...約3割

また、試験時間、問題数の目安としては、次のように示されています。
試験時間:120分、問題数:100問、配点:1問1点、出題形式:選択式

日本語教員試験「応用試験」の合格

応用試験は、出題範囲が複数の領域・区分にまたがる横断的な設問により、実際に日本語教育を行う際の現場対応や問題解決を行うことができる基礎的な知識及び技能を活用した問題解決能力を測定する試験とする。と書かれています。
合格基準は、総合得点で約6割の得点があることです。 また、試験時間、問題数の目安としては、次のように示されています。
試験時間:音声による出題(45分)、文章題(120分)、問題数:音声による出題(50問)、文章題(60問)、配点:1問2点、出題形式:選択式

実践研修の受講・修了

実践研修とは、実際に外国人に日本語を教える教育実習のことです。
教育実習は次の6つのステップからなることが発表されています。

  • (1)オリエンテーション
  • (2)授業見学
  • (3)授業準備
  • (4)模擬授業
  • (5)教壇実習
  • (6)教育実習全体の振り返りを学習すること

実践研修は、日本語教員試験「基礎試験」と「応用試験」に合格した人が受講できます。また、「登録日本語教員養成機関の養成課程を修了した又は修了見込みの者」も受講可能です。
この実践研修は、文部科学大臣の登録を受けた登録実践研修機関で行われます。
そして、この「登録実践研修機関」は令和6年夏頃から登録の申請受付が始まり、令和6年秋以降に登録が行われる予定です。

受験費用はかかるのか

受験費用の有無についても簡単に触れておきましょう。
費用は以下のように発表されています。

  • 基礎試験・応用試験 18,900円
  • 基礎試験免除 17,300円
  • 基礎試験・応用試験免除 5,900円
  • 実践研修 50,900円

そのほか、試験合格後の登録料(4,400円)が別途必要になります。

これから日本語教師を目指すタイミングとは?

日本語教師に興味を持ち始めた人、これから日本語教師を目指そうという方はいつから勉強を始めたら良いのでしょうか?

日本語教師は2024年4月から国家資格になります。そして、新しい「登録日本語教員養成課程」が実際に始まるのは、2024年秋頃からです。では、それまで勉強を待ちますか?

今現在、大学や文化庁届出受理420時間日本語教師養成講座で勉強している人達も大勢います。そのため、今勉強している方、2024年の秋から始まる「登録日本語教員養成課程」の受講を待たずに勉強を始める方々には、国が特別ルートを用意しています。

現在の大学や、文化庁届出受理420時間養成講座を修了または、勉強している四年制大学卒業以上の学歴(学部・専攻は問いません)を持つ方は、その学校・機関の養成課程が文化庁の示す教育内容の基準を満たしている講座だと認定された場合、養成課程修了後は「応用試験」だけを受験し、合格すれば「登録日本語教員」になれるというルートです。
この特別ルートは「民間の養成講座を修了した方は2029年3月31日まで有効(大学の養成課程を勉強している方は2033年3月31日まで有効)」ですから、例えば2023年度中に民間の養成講座で勉強を始めた人は、2029年3月31日まではこの特別ルートで「登録日本語教員」を目指せるというわけです。

ただし、この特別ルート、少し注意が必要で、このルートが使えるのは4年制大学卒業以上の学歴をお持ちの方だけです。4年制大学を卒業されていない方は、この特別ルートを使うことができませんので、ご注意ください。

では、4大卒ではない方は、どのタイミングで勉強を始めたら良いのでしょうか。

1つ目は、2024年秋から始まる新しい法律の下での「登録日本語教員養成課程」で勉強するルートです。
この「登録日本語教員養成課程」で勉強する方は、学歴問わず、修了後に「応用試験」という1つの国家試験に合格すれば登録日本語教員になれます。
※勉強した「登録日本語教員養成課程」に教育実習課程がない場合は、講座修了後、別途国が指定する「登録実践研修機関」で教育実習を受けていただく必要があります。

2つ目は、2024年秋の第1回国家試験を目指したい方のルートです。
現在行われている大学の日本語教員養成課程か、民間の文化庁届出受理420時間日本語教員養成課程で勉強をし、修了後に「基礎試験」を受験します。基礎試験に合格したら「応用試験」を受験。応用試験も合格後に、ご自身の居住地に近い場所にある国が認定した「登録実践研修機関」で教育実習を受けて修了するというルートです。
国家試験「基礎試験」と「応用試験」の問題は、現在行われている大学の日本語教員養成課程と民間の文化庁届出受理420時間日本語教員養成課程で学習している範囲から出題されます。そのため、受験する試験の数は増えますが、文化庁届出受理420時間日本語教員養成課程などで勉強したことが全く役に立たないということはなく、むしろ現在の文化庁届出受理420時間日本語教員養成課程で2024年秋までにしっかり勉強し、修了しておくことで、第1回国家試験の受験を目指すのに十分であるといえるのではないでしょうか。

ご自身の状況に合わせて、勉強を開始するタイミングを検討されることをお勧めします。

登録日本語教員制度の施行はいつから?:2024年4月から

登録日本語教員制度の施行は2024年4月から始まります。
日本語教育の質の向上と均一化が図られ、国家資格化により教員の専門性も高まると考えられています。

また、給与や労働条件の改善や研修の充実も期待できるでしょう。
これにより高いモチベーションを持った教員が増え、より質の高い日本語教育の提供が期待されます。

ルネサンス日本語学院は文化庁指針420時間カリキュラム対応の日本語教師養成講座420時間コースを通して、これから日本語教師(登録日本語教員)を目指す方を応援しています。