現役日本語教師の日本語豆知識

辞書から分かる日本語の語彙の特長

公開日:2016.10.17 更新日:2023.04.26

読書の秋ですね。
皆さんはどんな本を読んでいますか?

「本」と言って良いのかは「?」マークのつくところですが、今日は
「辞書を読む」ことでわかる「日本人の知らない日本語の仕組み」を
ご紹介したいと思います。

皆さんのお手元にある国語辞書は、言葉の意味や使い方を知りたい、
確認したいときに使われることが多いかと思います。
しかし、ちょっと見方を変えると、日本語の特長が分かる面白い書籍です。

では、どう見るのかというと「日本語は何行の言葉の数が多いのか」という
視点です。

辞書の側面(辞書を引くときに見る背表紙の反対側です)を見てください。
行ごとに灰色などで色を付けて分類されていると思います。

そうすると、あることに気づきます。

それは、
「日本語はア行からサ行までの言葉のページが多い
ということと、
ヤ行以下の言葉のページは少ない
ということです。

ちなみに、私の手元にある明鏡国語辞典は、語彙の総ページ1784ページの
963ページまで、つまり全体の半分以上が「ア行~サ行」の言葉で占められて
います

一方、ヤ行以下の語彙のページはたった137ページ。全体の約8%です。

更に、面白いのは、「ヤ行~ワ行」のなかでもラ行の語彙は漢語と外来語
ばかりで、和語はほとんどありません

つまり、昔の日本語は「ラ行の音で始まる語彙はほとんどなかった」ということが分かります。

辞書もこういった見方をすると、日本語の特長が分かる面白い「読み物」に
なります。

秋の夜長。
皆さんのお手元にある辞書を「読んで」みてはいかがでしょうか。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。