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「どうぞ」と「どうか」

相手に何かを頼む時に、私たちはこんな風に言います。

どうぞよろしくお願いします。」
どうかよろしくお願いします。」

さて、皆さん。この「どうぞ」と「どうか」、どのように使い分けていますか。

お願いの度合いの違いでしょうか。
それとも、丁寧さの違いでしょうか。

「う~ん・・・」と考え込んでしまった方は、次の例を見て、考えてみて
ください。

(例1)スーパーの試食販売で店員が客に呼びかける場合
    A)「どうぞ召し上がってみてください」
    B)「どうか召し上がってみてください。」

(例2)退社時間間際に、明日の午前中に必要な書類作成をお願いする場合
    A)「どうぞお願いします。」
    B)「どうかお願いします。」

いかがですか。
(例1)ではB)の方に、(例2)ではA)の方に不自然さを感じたのでは
ないでしょうか。

「どうぞ」と「どうか」。
両方とも、単なる「お願いします」と言う時より、お願いの度合いや丁寧さを
高める表現です。
しかし、お願いする時の状況によって、使い分けがあります。

「どうか」は、困難なことは分かっているが、そこをどうにか、という場合に
使います。

つまり、話し手が「どうか」を使うのは、困難な状況を承知の上で懸命に頼む、
懇願する時です。

一方、「どうぞ」には「困難な状況」というものがありません。単に、相手に
対して、自分の希望を丁寧に依頼する時
に使います。

ですから、(例1)のように、試食販売という場面では、普通「困難な状況」
は想定できませんから、「どうか」ではなく、「どうぞ」の方を自然だと感じ
ます。(その商品を試食するのに20分ぐらいかかるので、客が嫌がって
誰も試食してくれず、困っているという場面なら、「どうか」を使っても不自然
ではありませんが・・・)

また、(例2)の場合は、「退社時間間際に、相手に無茶なお願いをする」と
いう困難な状況ですから、「どうか」がベストです。反対に、こんな場面で
「どうぞお願いします」なんて言われたら、依頼された方は頭にきますよね。

「どうぞ」と「どうか」。
似ている言葉ですが、場面や自分の心情に合わせて使い分けたいもの
です。

そして、お願いを受ける側になった時も、依頼主がどちらを使ってお願い
してくるかで、その人のおかれた状況や今の心情を読み取れるように
なりたいものです。

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