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「~てくれる」と「~てもらう」の違い
オリンピック、終わってしまいましたね。
朝起きるたびに、「結果はどうなった?」、「何色のメダル?」と楽しい
17日間でした。
そのオリンピックの実況中継で、こんな表現がありました。
アナウンサーA 「う~ん。なかなか点をとらせてくれません。」
アナウンサーB 「う~ん。なかなか点をとらせてもらえません。」
「とらせてくれません」と「とらせてもらえません」。
日本語を勉強する外国人から「先生、どう違いますか?」と質問されそうな
表現です。
この二つはどう違うのでしょうか。
「~てくれません」は「~てくれる」の否定、「~てもらえません」は
「~てもらう」の否定ですから、
「~てくれる」と「~てもらう」の違いを考えてみます。
「~てくれる」と「~てもらう」は、日本語教育では「行為の授受」と言い
ます。つまり、何らかの行為を相手から受け取る際に使う表現です。
例えば、
① 田中さんは私に傘を貸してくれました。
② 私は田中さんに傘を貸してもらいました。
というように、「田中さん」と「私」の間で「(傘を)貸す」という行為の授受
が行われた時の表現です。
①と②の文では、どちらも「『貸す』という行為をしたのは田中さん」、
「『貸す』という行為を受けたのは私」です。
同じことを表してるようですが、実は違いがあります。
まず、表面的なルールとしては、
① 「行為をする人(▲▲)」は 「行為を受ける人(●●)」に ~てくれる。
② 「行為を受ける人(●●)」は 「行為をする人(▲▲)」に ~てもらう。
というように「▲▲」と「●●」の語順が違います。
しかし、それだけではありません。
「~てくれる」は、人の行為を受けて、感謝の気持ちを持っている時に
使います。
一方、「~てもらう」は、人に行為を頼んで、その行為に感謝の気持ちを
持っている時に使います。
ですから、急に雨が降って、困っている時、
① 頼んでいないのに、田中さんが傘を私に貸した + 私は「ありがとう」
と思った ⇒ 貸してくれました
② 私は田中さんに「傘を貸して」と頼んだ + 田中さんが傘を私に貸した
+ 私は「ありがとう」と思った ⇒ 貸してもらいました
という違いがあるということです。
そう考えると、実況中継も
「点をとらせてくれません」と言うときと、「点をとらせてもらえません」と
言う時では状況やアナウンサーの心情が違うということですね。
「~てくれる」と「~てもらう」。
違いを理解して、使い分けたいですね。