現役日本語教師の日本語豆知識

「~なければいけない」と「~なければならない」

公開日:2016.07.04 更新日:2024.05.27

投票日が近づくにつれ、街頭演説も盛んになりますね。
その街頭演説でよく使われる言葉に
「~なければいけない」と「~なければならない」があります。

「~なければいけない」と「~なければならない」。
いったい何が違うのか?

こういった似ている表現の違いを考えるとき、日本語教師は「同じところは
同じ意味。違うところにその差がある。」
と考えます。
つまり、「~なければ」までは両方とも同じですから、ここは同じ意味。
違うのは「いけない」と「ならない」の部分。
だから、この違いを考えよう!となるのです。

辞書で調べると、「いけない」も、「ならない」も「禁止・義務・必要」という
意味があり、この部分では同じです。
しかし、「いけない」には、「話者がそれを好ましくないと思う」という意味が
ある
のに対し、「ならない」にはその意味はなく、「当然」という意味がある
ことが分かります。

つまり、
「ならない」は、ルールや社会の慣習などに基づき「当然である」ということを言いたいときに使う客観的な表現で、
「いけない」は、話し手が好ましくないと思うことを言うときに使う主観的表現
であると言えます。

「~なければいけない」と「~なければならない」。
日常生活でこれを頻繁に使うと、人に嫌われてしまいますが、今は選挙期間中。
耳にする機会が、いつもより多いです。

「投票に行かなければいけない」と「投票に行かなければならない」。
「●●を変えなければいけない」と「●●を変えなければならない」。

こんな風にニュアンスの違いを意識して聞いてみると、
面白いかもしれませんね。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。