現役日本語教師の日本語豆知識

外国人が「???」と思う日本人の日本語

公開日:2016.06.29 更新日:2023.04.26

授業後、学生たちと駅まで一緒に帰っていたときのことです。
駐車場に「子供は危険ですから、ここで遊ばないでください。」という看板が
ありました。
これを見て、カナダ人の学習者がこんな質問をしてきました。
「先生、日本の子供はそんなに悪いことをするのですか?」と。

日本人は、この看板に書かれている文の意味は「ここは危ないから、子供は
遊ぶな」ということだと分かります。
しかし、外国人はこの文の書き方だと「子供=危険。だから、ここで遊ぶな!」
という意味で解釈してしまう可能性があるのです。
彼らに正しく文意を伝えたいなら、「危険ですから、子供はここで遊ばないで
ください」と書く必要があります。

こんなふうに、私たち日本人にとっては、何でもない文が、外国人にとっては
「???」となるものが多くあります。

例えば、嘘をついた人に向かって「嘘つけ!」と言うこと。
これを聞いた外国人は「?!?!嘘をつきなさいという命令?!?!」
驚きます。

更に、「やれるものなら、やってみろ!」と言う場合。
日本人なら、「やるな!」と言われていると理解できますが、外国人は
「やってみろ」と許可を得たと勘違いしてしまいます。

他にも、ダイエットのキャッチコピーにある「こんにゃくは太らない」という
日本語。
これも外国人には「日本では、こんにゃくは太ったり、痩せたりするの??」
と意味不明な文に聞こえます。
(この文は日本語教師の間では「こんにゃく文」と呼ばれているんですよ)

この「こんにゃく」の文と似ているのが、「うなぎ文」と言われるもの。
レストランで、何かを注文するときに
「俺はカツ丼!」
「俺はうなぎ!」

というのも、外国人にとっては「???」です。
「えっ?あなたはうなぎなの?人間じゃないの?」というように。
(この文も日本語教師なら誰でも知っている有名な文です)

日本人にとっては何でもない表現(言い方)ですが、指摘されてみると、
「う~ん。なるほど。そう理解するのか・・」と考えてしまいますね。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。