現役日本語教師の日本語豆知識

雨が「降り始める」と「降り出す」はどう違う?

公開日:2016.06.20 更新日:2023.04.26

梅雨になりましたが、雨の日が少なく、関東は水が心配ですね。
また、暑くなってくると、いわゆるゲリラ豪雨も心配です。

この「雨」にちなんで、今日は「降り始める」と「降り出す」はどう違うのか
をテーマに書きます。

雨が[降り始める/降り出す] 。
こう並べると、どちらも同じように思えます。
しかし、私たち日本人は無意識の内に使い分けています。

次のA)、B)の例文。
「始めた」と「出した」のどちらの方がしっくりくるか考えてみてください。

A)よく晴れていると思ったら、急に雨が降り[始めた/出した] 。
B)天気予報で言っていた通り、夕方から雨が降り[始めた/出した] 。

いかがでしょうか。
A)は『降り「出した」』の方が、B)は『降り「始めた」』の方がしっくり
きませんか?

実は、私たち日本人は、次のように使い分けています。
・「急に」とか、「突然」など、その行為・動作が予想外であったり、
 予測できない場合は「~出す」
を使う。
予測できる場合は「~始める」を使う。

辞書を見ると、「~出す」の説明には「~始める」と同じ・・という定義が
されていますが、実生活では無意識に使い分けているのです。

みなさん、今週は天気予報をよ~く聞いてみてください。
お天気キャスターも、無意識に使い分けているはずですよ。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。