現役日本語教師の日本語豆知識

「令夫人」の男性版は何?

公開日:2016.06.15 更新日:2023.04.26

ある国の大使館員に日本語を教えていた時のことです。

その方は外交の仕事を日本語でするので、日本語はペラペラなのですが、
ある日、「先生!助けて!!!」と電話をしてきました。

大使館員:今度、大使館のパーティーに●●大臣を招待します。
     その招待状を書くのですが、とても困っています。
私:どんなことに困っているのですか?
大使館員:私が日本に来てから今まで、日本の大臣は男ばかりでした。
     しかし、今回の大臣は女性です。
     パーティーには大臣の配偶者も招待します。
     今までは大臣の名前の後に「令夫人」と書けばよかったのですが、
     今回は配偶者が男
です。
     男の時は何と書けばいいのですか??
私:・・・・・。

この質問には、困りました。
日常的な会話でしたら、「ご主人様」とか、「旦那様」だと思うのですが、
招待状などの改まったものの宛名にはもっと硬い表現があるような気がした
のです。

そこで、辞書や手紙の書き方辞典、ビジネス文書辞典などを調べたのですが、
「令夫人」の使い方は書いてあっても、男性版は説明がありません。
色々探して、外務省の文書に「●●国首相■■閣下 および 同夫君」と書いてある
のを見つけました。

「夫君」
言われてみれば、なるほど・・ですが、使うことがほとんどない言葉。
いい勉強になりました。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。