現役日本語教師の日本語豆知識

「~ごとに」と「~おきに」

公開日:2016.06.13 更新日:2024.05.27

今年はオリンピックイヤーですね。
オリンピックは4年ごとに開催されます。

・・と当たり前のことから始まった「日本人が知らない日本語の仕組み」。
本日のテーマは「~ごとに」と「~おきに」です。

「~ごとに」と「~おきに」は、行為・状態が繰り返されることを表す言葉です
が、全く同じ使い方というわけではありません。
むしろ、外国人に教えるときは、注意が必要な言葉です。

これは、私がまだ駆け出しの日本語教師だった頃に、実際にあった外国人からの
質問です。

学生:先生。「バスは10分ごとに来ます」と「バスは10分おきに来ます」は
   「10分に1本バスが来る」という意味ですね。
先生:そうですよ。
学生:では、「1週間ごとに病院に行きます」と「1週間おきに病院に行き
   ます」は「1週間に1回病院に行く」という意味ですね。
先生:う~ん。違いますね。
   「1週間ごとに病院に行きます」は「1週間に1回病院に行く」という
   意味ですが、「1週間おきに病院に行きます」は「2週間に1回病院に
   行く」という意味です。
学生:え?!?!?!
   どうしてですか??
   「10分ごとに」と「10分おきに」は同じ意味なのに、どうして
   「1週間ごとに」と「1週間おきに」は違う意味になるんですか?
先生:ええっと・・・。(汗)

この質問を受けるまで、私は「~ごとに」と「~おきに」の違いなんて、
考えたこともありませんでした。

学生の質問に答える為に、違いについて手元の辞書を引いても、何も書かれて
いません。
当時はインターネットなんていう便利なものもありませんでしたから、自力で
答えを見つけるしかありませんでした。
結局、いろいろ例文を考えて気づいたのが、私たち日本人は
①「秒・分・時間」+「~ごとに/~おきに」は同じ意味として使っている。
②「日・週間・月・年」+「~ごとに/~おきに」は違う意味として使って
  いる。

ということです。

例えば、
・ 30秒ごとに音がなるタイマー
・ 30秒おきに音がなるタイマー
は、両方共「30秒に1回音が鳴るタイマー」ということを言っています。

しかし、
・ 1日ごとに音がなるタイマー は「1日1回音がなるタイマー」という意味
  ですが、
・ 1日おきに音がなるタイマー は「2日に1回音がなるタイマー」という
  意味です。

どうやら、「~ごとに」と「~おきに」は小さい時間の単位では同じ意味となり
ますが、「日」以上の大きい時間の単位では違う意味で使われるようです。

ということは、
オリンピックは4年ごとに開催されます。
= オリンピックは3年おきに開催されます。
と外国人に教えなければなりませんね。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。