現役日本語教師の日本語豆知識

「~にくい」と「~づらい」

公開日:2016.06.06 更新日:2024.05.27

関東も梅雨入りしましたね。
一年で一番うっとうしい季節です。
この季節は洗濯物が乾きにくい

・・・ということで、今日のテーマ。
「~にくい」と「~づらい」です。

皆さんは「乾きづらい」という言い方を聞いたことがありますか。
私は最近耳にしたり、目にしたりします。

この「乾きづらい」という表現。実は、間違いです。

「~にくい」と「~づらい」は「~するのが難しい」とか、「~するのが困難
だ」という時に使う表現という点で同じですが、使い方に違いがあります。

「~にくい」というのは、「~難い」という漢字が当てられることで分かる
ように、「~するのが難しい」という意味です。

一方、「~づらい」は「~辛い」という漢字を使うので、「難しい」というより
は、「~することを精神的、肉体的に負担に思う」という時に使います。
つまり、「~づらい」の方が「ストレスがかかる時に使う」と言えます。

更に、「~」の部分に入る動詞にも違いがあります。
「~づらい」は話者がその行為をすることを負担に思うということですから、
「~」に入る動詞は「書く」、「食べる」、「読む」などの話者の意図的な動作
である必要があり、「降る」とか、「乾く」、「破れる」というような、
自然現象を表す動詞や非意図的な動詞と結びつけることができないのです。
それに対し、「~にくい」は意図的な動詞、非意図的な動詞の両方につくことが
できます。

「洗濯物が乾きづらい」という間違った言い方。
ストレス過多の現代は「~づらい」と言う場面が多いのでしょうか。
「~にくい」と「~づらい」の区別がつきにくなって、出てきたのかも
しれませんね。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。