現役日本語教師の日本語豆知識
「隣」と「横」と「側(そば)」の使い分け
公開日:2016.05.30 更新日:2024.08.29
監修者情報
ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
「~が ~に あります。/います。」という表現を教えるときに、
「位置」の言葉を教えます。例えば、「上」、「中」、「下」などのように。
その中で、教師の提示の仕方が悪いと、外国人が混乱する言葉があります。
それが「隣」、「横」、「側(そば)」です。
例えば、
A)私の隣にジョンさんがいます。
B)私の横にジョンさんがいます。
C)私の側(そば)にジョンさんがいます。
といった場合、「隣」、「横」、「側」はどう違うのでしょうか。
「隣」と「横」と「側」。
実は、明確な違いがあります。
「隣」というと、自分のすぐ近くの位置を思い浮かべる方が多いかと思います
が、実は、近い・遠いの距離は問題ではありません。
例えば、「韓国は日本の隣にあります。」といった場合を考えてみてください。
「距離」で言うなら、日本と韓国は明らかに「遠い」はずです。
また、牧場が多い場所に住んでいる人たちが、「ちょっと隣の家まで行って
くる」と言って、車で移動する・・という映像をテレビや映画などで見たことが
ありませんか?
これも「距離」で言うなら、明らかに「遠い」はずです。
しかし、私たち日本人はこれらの場面で「隣」と言っても、なんら不自然さを
感じません。
つまり、「隣」というのは、自分から見て横列にある「第一障害物のある位置」であって、「距離」は関係ないのです。
では、「横」はというと、自分から見て左右の横線上すべての位置を言います。
「隣」とは違い、ある一点の場所ではなく、線上の全ての場所が「横」になり
ます。
また、距離も関係ありません。自分からどんなに遠い場所でも、それが横線上の
場所なら「横」と表現できます。
(例)地図で見ると、日本の横に韓国と中国とアメリカがあります。
最後に「側(そば)」ですが、これは「隣」、「横」と異なり「距離」が関係
します。
側は自分から近い範囲(手が届くぐらいの範囲)の場所を表す言葉です。
しかし、「隣」や「横」と違い、横列ではなく、自分を中心とした360°の範囲
全てです。
「隣」、「横」、「側(そば)」。
簡単にまとめると、次のように表すことができます。
隣:図の赤丸の位置。横線上にある第一障害物のある位置。「点」の言葉。
横:図の緑の横線の位置。横線上の全ての場所。「線」の言葉。
側(そば):図の青い丸の範囲。自分から近い範囲。「面」の言葉。
人や建物が密集している場所に住んでいると、「隣」、「横」、「側」は
同じように感じてしまいがちですが、実は、こんな違いがあるんですね。
この記事の監修者
ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格
《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。
《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。
《監修者からのコメント》
日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。