現役日本語教師の日本語豆知識

「そして、」と「それから、」は何が違う?

公開日:2016.05.23 更新日:2024.05.27

先生:「あなたは昨日何をしましたか?」
学生A:「私は朝7時に起きました。そして、散歩に出かけました。」
学生B:「私は朝7時に起きました。それから、散歩に出かけました。」


「そして、」と「それから、」。
私たちは行為を順番に列挙する時、この二つの言葉をよく使います。
日本語教育でもこの二つの言葉は初級レベルの日本語として教えます。
そうすると、必ず外国人から出てくるのが、
「そして、」と「それから、」は何が違うのですか?
という質問です。

上の学生Aと学生Bの答えを見る限り、「そして、」と「それから、」は同じ
ように感じる人も多いかと思われます。
しかし、次の例文ではどうでしょうか。

①-A 昨日は朝7時に起きました。そして、夜10時に寝ました。
①-B 昨日は朝7時に起きました。それから、夜10時に寝ました。

①-Bの文は、変な感じがしませんか?

では、この①-Bの文を次のように変えると、どうでしょうか?
①-B 昨日は朝7時に起きました。それから、すぐ寝ました。

日常のシチュエーションとしてはあまりないことかもしれませんが、
文としては、「夜10時に寝ました」よりは、「すぐ寝ました」の方がしっくり
きます。

ここに「そして、」と「それから、」の違いがみえます。

「そして、」と「それから、」はどちらも行為の順序を表しますが、
「それから、」の方は、「前の行為のその次に、●●をする」ことを表す時に
使います。
「朝7時に起きる」の次に続く行為が「夜10時に寝る」ということは、通常
ありませんから、ここでは「それから、」を使うと、変な感じがする・・という
わけです。


こんな話をすると、「そんなこと考えて話してないよ!」という方もいるか
もしれません。
しかし、私たち日本人は、何かを根掘り葉掘り聞きだしたい時は、相手に
「それから、それから」
と言って話を促し、そんなに詳しく知る必要がない時
は、「そして
、どうしたの?」と言っていませんか?
(ちなみに、興味がないと、「それで、」と一気に結論を求める言葉を投げかけ
ていますね・・・)

普段意識していなくても、日本人はきちんと使い分けているんですね。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。