現役日本語教師の日本語豆知識

「久しぶり」はどのぐらいの長さ?

公開日:2016.05.16 更新日:2024.08.29

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

「2年ぶりに故郷に帰った。」
「1週間ぶりの雨です。」
など、「~ぶり」という言葉を私たちはよく使います。

この「~ぶり」は、時間や期間を表す語に付いて、以前そのようなことがあっ
て、今回また同じ状態になるまでに、どのぐらいの時間・期間が過ぎているかを表す言葉
です。
日本語を勉強する外国人たちも、もちろんこの「~ぶり」という言葉を勉強
します。その際、外国人が困るのが「久しぶり」という表現です。

「2年ぶり」や、「1週間ぶり」などは「2年」・「1週間」とどのぐらい時間
が経過しているかがはっきり示されているため、そう難しくはありません。
しかし、「久しぶり」はどのぐらいの時間・期間なのかが示されていないため、
外国人たちは「久しぶりはどのぐらいの時間の時に使うの?」と疑問に思うの
です。

手元の辞書で「久しぶり」を調べると、「前にそのことがあってから長い時間が
経過していること」とあります。この「長い時間」が曲者です。

一般的に「長い時間」と言われたら、3ヶ月とか、半年、1年などを思い浮か
べるでしょうか?
しかし、私たち日本人は、会社の同僚が1週間休んで出社してきた時に、
「お!久しぶり!」と言ったり、恋人同士で毎日電話している場合、
2日ほど連絡しなかった時に、「なんだか、久しぶりだね~」と言ったり
していないでしょうか?

つまり、この「長い時間」というのは、絶対的な長さではなく、状況や人間関係
に応じた相対的な長さ
なのです。
ですから、外国人にはこの「長い間」というのは、主観の長さであることを
理解してもらう必要があります。

毎日会社で顔を合わせることが当然な同僚であれば、1週間合わないことは
「長い間」と感じるから、「久しぶり」と言い、
一方、あまり会いたくない人に対しては、1週間ぶりにあったときに
「久しぶり」ではなく、「また、会った・・・」と思う。

言葉は自分の価値観を表すと言いますが、誰に、どのぐらいの期間で
「久しぶり」と思うかを考えると、自分の本音が見えて、面白いかもしれ
ませんね。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。