現役日本語教師の日本語豆知識

「できるだけ」と「なるべく」

公開日:2016.05.09 更新日:2024.08.29

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

皆さま、GWはどう過ごされましたか?
10連休だった方も、カレンダー通りだった方も今日から「仕事モード」に
頭を切り替えなければなりませんね。

そこで皆さんに質問します。
あなたは、
A)できるだけ早く頭を切り替えます。
B)なるべく早く頭を切り替えます。
のどちらですか?

この「できるだけ」と「なるべく」は、大変似通った意味を持っていて、
どちらも「可能な限り」ということを伝えたい時に使います。
しかし、100%同じか?というと、少し違うようです。

まず、「できるだけ」ですが、これは可能を表す「できる」と、範囲・限度を
表す「だけ」で構成された言葉
です。
したがって、「できるだけ」は、「これ以上はできないという可能の限界まで」
という意
があります。

一方、「なるべく」は、動詞「なる」に古語の助動詞「べし」の連用形がついた
言葉
です。
動詞「なる」は「人為的ではなく、自然の成り行きで変化し、別の状態が
現れる」が根本的な意味です。
そこに、「可能・実現が見込まれる意」を表す「べし」がついています。
ということは、「なるべく」は「周りの状況、成り行きに応じて可能な限り」
という意
であることが分かります。

このように分解して比較すると、「力の及ぶ限り、努力して可能な限り」という
主体的・積極的なニュアンスの「できるだけ」に対し、「なるべく」は「状況や
成り行きに応じて可能な限り」とちょっと頼りないニュアンスであることが
わかります。

「できるだけ」と「なるべく」。
ニュアンスの違いを理解して、心情や場面に応じて「できるだけ」使い分けたい
ですね。

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。