現役日本語教師の日本語豆知識

感動を「与える」?

公開日:2016.04.04 更新日:2023.04.26

オリンピックイヤーということもあってか、様々なスポーツの選手の特集記事や
番組が見られるようになりました。
そんな中で、私たち日本語教師の間で気になる表現としてあげられるものが
あります。それは、
「感動を与える」
という表現。

今では、多くの選手がインタビューなどでよく使うので、「何が気になるの?」
という方も多いかもしれません。
しかし、言葉を仕事とする日本語教師としては、この「与える」というのが
気になるのです。

「与える」を手元の辞書で調べると、
① 自分の物を目下の相手にやる。
② (影響・効果などを)相手にこうむらせる。
③ 相手に施す
とあります。

つまり、「与える」というのは、自分のものを目下の相手にやるという言葉
なのです。

確かに、そのスポーツを極めて、日本代表などになる方々ですので、凄い方だ
と思うのですが、「与える」という言葉をご本人が使うと、上から目線で発言
しているよう
に感じる方もいると思うのです。
恐らく、「与える」と発言している選手の方々は、そのような意識を持たず、
慣用的に発言しているのだと思いますが・・・。

いつの間にか市民権を得た「感動を与える」という言い方。
皆さんもちょっと気にしてみてください。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。