現役日本語教師の日本語豆知識

犬と話す?

公開日:2016.03.28 更新日:2023.04.26

先日、実家に帰った時のことです。
孫も大きくなって、あまり遊びに来なくなった両親の関心事はペットの犬。

そんな両親曰く、「最近は、チョコ(犬の名前)話してばかりだね」。

「犬話す」

この表現に「ん?」と違和感を覚えた方は、日本語教師の素質があるかも
しれません。
「犬と話す」というのは、とても変な表現です。

日本語の「~と+動詞」の文の場合、「~と」で示されるのは、その動作を
共に行う相手
です。
ということは、「犬と話す」という場合、犬も「話す」ことが要求されます。
しかし、犬は「話す」ことはできません

ですから、ここは、動作を共に行う相手を表す「と」ではなく、
動作の向けられる対象を表す「に」を使って、
「犬話す」
とするのが、正しい日本語です。

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・・・と両親に言おうかと思いましたが、やめました。
私が見る限り、実家の犬は「お犬様」で、まるで人間のように
両親が接しています。
ですから、きっと両親は「犬語」が分かって、「話している」のだろう・・・
と思うことにしました。

皆様はどうですか。
話していますか?
話していますか?

この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。