現役日本語教師の日本語豆知識
同じ「ん」でも、実は違うんです。
公開日:2016.03.14 更新日:2024.08.29

監修者情報
ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
さんま
かんだ(神田)
りんご
この三つの語には「ん」が使われています。
日本人は「ん」は同じ一つの音と考えているので、この三つの語の「ん」は、
同じように聞こえます。
しかし、この「ん」。日本語を勉強する外国人には違う音に聞こえるのです。
では、どう違うのか。
皆さんも下の①~③のグループの語を実際に発音し、その違いを体で感じてみて
ください。
ポイントは「唇がつくか、つかないか」、
「舌が口の中の上につくか、つかないか」です!
① さんぽ(散歩)/ほんばこ(本箱)/さんま
② はんたい(反対)/かんだ(神田)/あんな人/れんらく(連絡)
/こんざつ(混雑)
③ さんか(参加)/りんご
どうですか、違いを体感できましたか?
①は、唇を閉じて発音する「ん」 で、後ろにパ行の「p」、バ行の「b」、
マ行の「m」が続くときの「ん」です。
②は、唇を閉じずに、舌を口の中の上の方につけて発音する「ん」で、後ろに
タ行の「t」、ダ行の「d」、ナ行「n」、ラ行の「r」、ザ行の「dz」が続く
ときの「ん」です。
③の「ん」は、唇を閉じず、また舌も口の中の上の方につけずに発音する「ん」
で、後ろにカ行の「k」、ガ行の「g」が続くときの「ん」です。
他にも、細かく分類していくと、日本語の「ん」の発音の仕方はたくさん
あります。
同じ「ん」と書いて、同じように発音していると思っている「ん」ですが、
体はその違いをちゃんと理解して区別しているんですね。
(おまけ)
JRなどの駅名は、この「ん」の発音の違いを表記でも使い分けています。
しんばし(shimbashi):唇を閉じる「ん」
かんだ(kanda):唇を閉じない「ん」
皆さんも、注意して見てみてください。
この記事の監修者

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格
《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。
《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。
《監修者からのコメント》
日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。