現役日本語教師の日本語豆知識

「させていただく」の使い方

公開日:2016.02.01 更新日:2023.04.26

最近、TVを見ていて、気になることがあります。

それは、「させていただく」の使い方

「させていただく」は謙譲語で、自分の行為が相手の許容の内にあるという、
へりくだった遠慮がちな気持ちを表します。
ですから、本来は相手に同意・許可を求める場面で使う言葉です。

しかし、最近はそうではない場面で使われることが多くなってきているように
思います。

例えば、
「(私は)今度、○○さんと結婚させていただくことになりました」
「私は○○を卒業させていただきます
「(私は)○○賞をとらせてただきました
のような使い方です。

「させていただく」という謙譲語を使うことによって、丁寧な感じを出そうと
しているのかと思われますが、こういう使い方を聞くと、
「いったい誰の許可を求めているの?」と違和感を覚えます。

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結婚の許可を親にもらう場面では、「結婚させていただけますか」というよう
に、「させていただく」を使うのは不自然ではありませんが、結婚することが
決まってから、それを周りに伝える際に「結婚させていただく」というのは
「???」ではないでしょうか。

他にも、「金メダルをとらせていただきました」というのも、変ですよね。
金メダルは誰かの許可を得て、とるものではありませんから。

「させていただく」は日本人の価値観が詰まった、日本人らしい表現です。
単に「とにかく語尾につければ、丁寧な感じになる」というような曖昧な感覚
ではなく、場面に応じて使いたい
ですね。

この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。