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「きれい」と「美しい」

お正月気分もすっかり抜けて、気づけば1月も下旬です。

2016年最初の「日本人が知らない日本語の仕組み」は何について書こうか
とあれこれ考えていましたが、今回は『「きれい」と「美しい」』について
書こうと思います。

1月は何か習い事を始めるたくなる月なのか、テレビのCMでも通信講座などの
案内をよく見かけます。
そして、この時期に多いのが「ボールペン字」や「ペン習字」の講座。
今では手書きの年賀状は少なくなりましたが、やはりこの時期に
「字が上手くなりたい」と考える人が多いのでしょうか。

そのボールペン字講座などの案内のキャッチコピーをよく見てください。
きれいに書けるボールペン字講座」とか、
美しい文字が書ける講座」とかありますが、
さて、皆さん。「きれい」と「美しい」は同じなのでしょうか?

では、次の例で考えてみてください。

① 「きれいな部屋」と「美しい部屋」
② 「きれいな人」と「美しい人」

どうですか?
「きれい」と「美しい」だけで比較すると、ちょっとわかりにくですが、
「きれいな部屋」、「美しい部屋」というように比較すると、それぞれ
聞いた時のイメージが違うのではないでしょうか。

「きれいな部屋」と聞いたときは、掃除がされてて、清潔で、整っている
部屋・・・というイメージ
が浮かびませんか?
一方、「美しい部屋」というのは、どうでしょうか?
以前、「美しい部屋」というタイトルの雑誌がありましたが、そこに出てくる
部屋は古い家屋にたくさんの花や人形、飾り物などが所狭しと置いてあり、
決して「整っている」というイメージのものではありません。しかし、
「あら、いいわね~」と心で感じる部屋ばかりでした。

ここに「きれい」と「美しい」の違いがあるのです。

「きれい」は、清潔さや、整然さなどが優れている様を表す言葉。
つまり、「表面的美意識」の言葉です。
「美しい」は、あるものに対し、話者の「心が奪われる」状態を表す言葉。
つまり、「内面的美意識」の言葉です。

そう考えると、「きれいな文字」を習得するのは簡単ですが、
「美しい文字」を習得するのは、そう簡単にはいかないと思うのですが、
どうなんでしょうか?

「きれい」と「美しい」。
最近は何でも「きれい」で済ませてしまうことが多いですが、
ぜひ、これを機会に使い分けてみてください。

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