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米洗う前[に/を/へ/で]蛍が・・・

8月から色々なテーマで「日本語の仕組み」をご紹介してきましたが、
皆さまいかがでしたでしょうか。
「へ~。日本語ってこんなルールがあるんだ」とか、
「日本語って面白い」とか思っていただけたら、一人の日本語教師として
とてもうれしく思います。

さて、今日は「日本人の知らない日本語の仕組み」シリーズの今年最後の
更新です。
2015年の「まとめ」として、こんな問題はいかがでしょうか。
ぜひ、皆さん、考えてみてください。

【問題】次のA)~D)の情景の違いを説明してください。
A)米洗う前蛍が一つ、二つ
B)米洗う前蛍が一つ、二つ
C)米洗う前蛍が一つ、二つ
D)米洗う前蛍が一つ、二つ

この俳句は、日本語の助詞の面白さを理解してもらうために、小学校の国語の
時間でも、よく使われる有名なものです。
私たち日本語教師も、養成講座受講生の時に、この俳句で「助詞」の大切さを
学びました。

前回のブログに書いたように、こういった問題の場合は
「同じところは同じ意味。違うとことにその意味の違いがある。」の法則
に従い、まず同じ部分を消去してみます。
そうすると、残ったのは「に/を/へ/で」という、たった一字の部分です。
この一字が、A)~D)の情景をガラリと変えているんですね。

では、どう違うのでしょうか。
「う~ん・・・」と唸ってしまう方は、「一つ、二つ」の後ろには
どんな動詞が続くかを考えてみてください。

A)米洗う前蛍が一つ、二つ・・・・いる/とまっている/飛んできた
B)米洗う前蛍が一つ、二つ・・・・通過する/飛んでいく
C)米洗う前蛍が一つ、二つ・・・・飛んでくる/向かってくる
D)米洗う前蛍が一つ、二つ・・・・飛んでいる

というような動詞が頭に浮かんでくるでしょうか。

では、どうしてA)~D)それぞれの後ろにつながる動詞が違うのでしょうか。
これは、「所の言葉+に/を/へ/で」のそれぞれが、どういう意味を持つのか
を日本人は体得しているからなのです。

「所の言葉+」は「存在する場所」、「到達点」を、
「所の言葉+」は「通過する場所」を、
「所の言葉+」は「向かう方向」を、
「所の言葉+」は「その動作をする場所」を表すことを、
私たち日本人は上手く説明できなくても、知っているのです。

ですから、A)~D)の俳句に続く動詞もそれぞれ違うものを選ぶことができ、
更に、このA)~D)の情景の違いもイメージできるのです。

日本語を勉強する外国人だけでなく、日本人からも「難しい」と言われることの
多い助詞ですが、たった一字でその情景を変えてしまうのが「助詞」です。

こういった「助詞」の持つパワー(?)を、「難しい」ではなく、「面白い」
と思ってくれる外国人・日本人が増えることを願っています。

それでは、皆さま、良いお年をお迎えください!!

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