現役日本語教師の日本語豆知識

外国人はどうやって「五段活用」などのグループ判別をしているか

公開日:2015.10.28 更新日:2024.05.27

今日はちょっと学生時代の国語の時間を思い出してください。

国語の「文法」の時間に「動詞の活用」というのを勉強し、その時、
「五段活用」、「上一段活用」、「下一段活用」といったグループを習います。

日本語を勉強する外国人もこれらの動詞のグループを学ばなくてはなりません。
そして、テキストに出てきた動詞がこれらのグループのどれに属する動詞なのか
を自分で判別できるようにならなければなりません。

私たち日本人にとって、このグループ分けは、そんなに難しいことでは
ありません。
なぜなら、「動詞+ない」の形に変化させれば、簡単に分かるからです。
具体的には、「動詞+ない」の形にした時、
(1)「ない」の直前の文字が「あ段」の文字なら、五段活用
  (例)立ない/読ない/書ない/泳ない/話ない
(2)「ない」の直前の文字が「い段」の文字なら、上一段活用
  (例)見()ない/起ない
(3)「ない」の直前の文字が「え段」の文字なら、下一段活用
  (例)寝()ない/食ない
というルールがあります。このルールに基づいて、日本人は動詞のグループ分けをしています。

だったら、日本語を勉強する外国人もこの(1)~(3)のルールを知れば、
簡単に動詞のグループ判別ができるのではないか?と思いがちですが、
ここに大きな壁があります。どんな壁かというと、
『そもそも、外国人はその「ない」の形自体を知らない』という現実です。

ですから、外国人に日本語を教えるときには、「ない」の形にしなくても、
動詞のグループが判別できる方法を教えなければなりません。

では、どう教えるか。

外国人はわからない単語があれば、それを辞書で調べます。
その「辞書に載っている動詞の形」で判別できることを教えます。

具体的には、こうです。

動詞の「辞書の形」の最後のひらがなが、
「う」、「つ」、「る」、「ぬ」、「む」、「ぶ」、「く」、「ぐ」、「す」
  の動詞
五段活用
「い段の文字+る」で終わっている動詞上一段活用
「え段の文字+る」で終わっている動詞下一段活用
という判別方法です。

更に、漢字を知っていると、そこからもアプローチできます。
A)五段活用の動詞は「漢字一文字+送り仮名一文字」
  (例)歌う/立つ/座る/死ぬ/読む/遊ぶ/書く/泳ぐ/話す
B)上一段活用、下一段活用の動詞は「漢字一文字+送り仮名二文字」
  (例)起きる/借りる/食べる/覚える
というパターンがあるのです。

但し、この辞書の形の最後のひらがなで判別する方法も、漢字と送り仮名の数
で見分ける方法も、例外が出てきます。
その例外については、残念ながら「覚えるしかない」のが現実ですが、ほとんど
の動詞はこの①~③+A)、B)のルールで判別できます。

今日のブログは少し専門的なお話になりましたが、同じ「日本語」を学ぶにも、
日本人が学ぶ「国語の文法」と外国人が学ぶ「外国語としての日本語の文法」は
アプローチの仕方が違うのだ
・・ということを感じてもらえれば、幸いです。

(余談)
国語の時間の「文法」に苦手意識がある日本の子供たちには、外国人が日本語を
学ぶ時の方法でアプローチしていけば、苦手意識が少しはなくなるのかな・・・
と思うこともあるのですが、どうなんでしょうかね。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。