現役日本語教師の日本語豆知識

立ちています?書きています?

公開日:2015.10.26 更新日:2023.04.26

日本語を勉強する外国人は動詞を勉強し始めると、急におしゃべりになります。
それまでは、「~は~です。」といった文が中心なので、自分の行動などが
表現できないのですが、「動詞(文)」という手段を手に入れると、今までの
ストレスを発散するかのように、積極的に日本語でコミュニケーションをとって
くるようになるのです。

そんな彼らが乗り越えなければならない大きな山があります。
それが「動詞の変化」です。

私たち日本人も国語の文法の時間に「五段活用・上一段活用」や、
「未然形、連用形、終止形」などといった動詞の変化の勉強をしますが、
日本語を勉強する外国人もこの変化を学ばなければなりません。

外国人に日本語を教える場合は、私たち日本人が勉強してきたような
「未然形、連用形・・」というような方法では教えません。
例えば、「立ちます、読みます」といった「動詞+ます」は「ます形」、
「立つ、読む」というように辞書に載っている形のものは「辞書形」と
いうように教えます。

その動詞の変化の中でも、「ひええええ~」と学習者が思う一番高い山が、
「立っています」とか、「書いてください」の「動詞+て」の変化です。

これの何が「ひええええ~」なのかというと、
って/書/話して/読んで・・・というように「って」、「いて」、
「して」、「んで」と色々な変化をするからです。
何も知らない外国人は『動詞一つひとつの「~て」の形を覚えなければならないのか!!』と青ざめるのです。

しかし、私たちの母語である日本語にはこの複雑そうな「~て」の変化にも
きちんとルールがあります

このルールは動詞の辞書の形(立つ/書く・・など)の最後のひらがなに
注目します。
そうすると、最後のひらがなが

「う・つ・る」の動詞+「て」「って」になる。
 (例)歌→歌って/立→立って/座→座って
「ぬ・む・ぶ」の動詞+「て」「んで」になる。
 (例)死→死んで/読→読んで/遊→遊んで
「く」の動詞+「て」「いて」「ぐ」の動詞+「て」「いで」になる。
 (例)書→書いて/泳→泳いで
「す」の動詞+「て」「してになる。
 (例)話→話して

という大きなルールが見えてきます(注1)。

こんな風に、「外国語としての日本語」という視点から見ると、日本人でも、
なかなか気づかないルールがあり、面白いのです。

国語で勉強した「文法」が苦手だったという方。
外国人が勉強する「外国語としての日本語」という視点から日本語を考えると、
「文法」も楽しくなるかもしれませんよ。

(注1)
「見る」、「起きる」、「寝る」、「食べる」など「る」で終わっても
「って」にならないものもありますが、これはまた、ちょっと違う
グループの動詞なので、次の機会(水曜日)にお話します。


◆◇◆ 次回(11/2)予告 ◆◇◆

次回から、数回はこの「動詞の変化のヒミツ」をご紹介していきたいと
思います。
この動詞の変化。日本人も「あっ!」と驚くヒミツがあるのです。

「未然、連用、終止、連体・・・」なんて呪文のように唱えて、覚えた記憶が
ある方。
もっと早く知っていれば、文法アレルギーにならなかったかもしれません。

では、また来週月曜日に。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。