現役日本語教師の日本語豆知識

学校「に」行きます。/学校「へ」行きます。

公開日:2015.10.13 更新日:2024.08.29

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

学校行きます。
学校行きます。

【問】この二つの文の違いを説明しなさい。

日本語教師になるための試験で見かけるような問題です・・・。

この二つの文の違いは「に」か、「へ」かですが、
皆さん、上手く説明できますか?

今まで色々な「日本人の知らない日本語の仕組み」をご紹介してきましたが、
この「に」と「へ」の違いは、日本人でも説明するのが難しいかもしれません。
(私たちの日常生活の中では「に」の方が優勢で、「へ」を使う場面は少なく
なってきているようですので・・・。)

しかし、日本語のテキストでは、「に」と「へ」は勉強しなければならない
項目として出てきますので、私たち日本語教師はこの違いを学習者に
教える必要があります。

では、「に」と「へ」は何が違うのか?

実は、
「に」は動作、移動の到達点
「へ」は動作、移動の方向

を示すという、本来の意味があります。

どういうことか、というと・・・

「私は学校行きます。」と言った場合は「学校」という場所が私の到達点
(ゴール)
であることを示しています。
それに対し、「私は学校行きます。」と言った場合は「学校」は私が「行く
方向」
であることを示しています。
(つまり、「学校」が到達点かどうかは示してません)

と、日本語教師は教えるのですが、こう話しても、「え~。そうかな~。」
という日本人は多いのも現実です。

しかし、「電車乗る」と言っても、「電車乗る」とはあまり言いません
よね。
他にも、「駅着いた」よりも、「駅着いた」の方が自然ですよね。

こういう「乗る」とか「着く」という「そこが行き止まり」というニュアンスの
ある動詞と一緒に使うときは「へ」より「に」を使う方が自然と感じるのは、
私たち日本人が無意識のうちに「に=到達点」というイメージを持っているから
ではないでしょうか。

現在は「へ」よりも、「に」の方が優勢な状況ですが、「へ」と言わずに
「に」と言ったほうが自然な感じがする(または、その反対)・・という
場合はどんな時だろう?と考えてみるのも、秋の夜長の楽しい過ごし方
かもしれません(楽しく感じるのは日本語教師だけですか?!?)。


◆◇◆ 次回(10/19)予告 ◆◇◆

ジョンさん:先生、今日先生が着ているズボンの色はいいですね。
新米先生:ジョンさん、「着ているズボン」ではありません。
     「履いているズボン」です。
ジョンさん:「履いている」?
      先生、「着ている」と「履いている」は何が違うのですか?


来週月曜日に訪問してくださることを楽しみにしています。

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。