現役日本語教師の日本語豆知識
「~ので、」と「~から、」
公開日:2015.10.05 更新日:2024.08.29

監修者情報
ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
ジョンさん:「電車が遅れたので、遅刻しました」と
「電車が遅れたから、遅刻しました」は同じですか?
新米先生:ええ。同じですよ。
ベテラン先生:ちょ、ちょっと待って!新米先生!!
「ので、」と「から、」は同じではありませんよ!!
新米先生:えっ!!そうなんですか・・・・。
「~ので、」と「~から、」。
どちらも原因や理由を言うときに使う言葉です。
日本人に「~ので、」と「~から、」はどう違いますか?と質問すると、
・「~ので、」の方が、改まった場面で使っているように思う。
・「~ので、」は丁寧な感じがする。
・「~ので、」は何か説明をする時や書く時によく使っているかなぁ。
という反応をよくいただきます。
では、「~ので、」と「~から、」の違いは「丁寧さ、フォーマルさ、
書き言葉・話し言葉」の違いか?と言うと、実はそうではありません。
「~ので、」は原因を表す言葉
前に述べたことと後ろで述べることの客観的因果関係を表す言葉
「~から、」は理由を表す言葉
前に述べることと後ろで述べることを(話し手の)主観的な
立場で、結びつける言葉
という違いがあります。
と、定義しても、分かったような、分からないような・・・という方も
いらっしゃるかもしれません。
では、こんなシチュエーションで考えてみてください。
インフルエンザになった(当然、自宅待機)
↓
会社を休む(でも、熱は下がって、暇だ)
↓
テレビでも見よう。
これを「ので、」と「から、」を使って、文にしてみます。
A)インフルエンザになったので、会社を休んだから、テレビでも見よう。
B)インフルエンザになったから、会社を休んだので、テレビでも見よう。
さて、このA)とB)の文。B)の文を読んだときに何か違和感を覚える方は
多いのではないでしょうか?
ここに「ので、(原因)」と「から、(理由)」の違いがあるのです。
つまり、「会社を休む」ことになった原因は「インフルエンザになった」こと。
「インフルエンザになった」場合は、当然自宅待機ですから、「会社を休む」
ことは客観的な因果関係があります。
一方、「テレビでも見よう」と思った理由は「会社を休んだ」こと。
しかし、「会社を休んだ」ことと「テレビでも見よう」と思うことに客観的な
因果関係はありません。
これは、あくまでも話し手である「私」がそう結びつけたこと(主観)であり、
他の人は「本でも読もう」と思うかもしれないし、「おとなしく寝ていよう」と
思うかもしれません。
ですから、この「会社を休んだ」と「テレビを見よう」を「ので、」で結び
つけたB文に「何か違和感を覚える」のです。
ここで、最初のジョンさんの質問です。
「電車が遅れたので、遅刻しました。」といった場合と、
「電車が遅れたから、遅刻しました。」とでは大きな違いがある
ということです。
「ので、」の方は、「電車が遅れた」ことと「遅刻したこと」は客観的な
因果関係があることを示しています。
(30分前に着くように家を出たのに、電車が1時間も遅れて、遅刻した
とか、電車以外の移動手段がなかったとか・・・)
それに対し、「から、」の方は「電車が遅れた」ことと「遅刻したこと」は
ジョンさんの主観で結び付けられた関係ですから、聞き手から
「じゃあ、なんでもっと早く家を出なかったんだ!」と突っ込まれる可能性が
あるのです。
最近は、「ので、」と言ったほうがいい場合でも、「から、」を使う方が
多いように感じますが、「ので、」を使うか、「から、」を使うかで、
そこには大きな違いが生じます。
「原因」か、「理由」かを考えて、使い分けてみてください。
◆◇◆ 次回(10/13)予告 ◆◇◆
ジョンさん:先生、日本語のテキストには「学校へ行きます」と書いて
ありましたが、日本人は「学校に行きます」と言います。
「学校へ行きます。」と「学校に行きます。」は同じですか。
新米先生:え~っと・・・(困ったなぁ・・・)。
答えは、来週13日(火)に!
この記事の監修者

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格
《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。
《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。
《監修者からのコメント》
日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。