現役日本語教師の日本語豆知識

「~ので、」と「~から、」

公開日:2015.10.05 更新日:2023.04.26

ジョンさん:「電車が遅れたので、遅刻しました」と
      「電車が遅れたから、遅刻しました」は同じですか?
新米先生:ええ。同じですよ。
ベテラン先生:ちょ、ちょっと待って!新米先生!!
      「ので、」と「から、」は同じではありませんよ!!
新米先生:えっ!!そうなんですか・・・・。


「~ので、」と「~から、」。
どちらも原因や理由を言うときに使う言葉です。

日本人に「~ので、」と「~から、」はどう違いますか?と質問すると、

・「~ので、」の方が、改まった場面で使っているように思う。
・「~ので、」は丁寧な感じがする。
・「~ので、」は何か説明をする時や書く時によく使っているかなぁ。

という反応をよくいただきます。

では、「~ので、」と「~から、」の違いは「丁寧さ、フォーマルさ、
書き言葉・話し言葉」の違いか?と言うと、実はそうではありません。

「~ので、」は原因を表す言葉
      前に述べたことと後ろで述べることの客観的因果関係を表す言葉
「~から、」は理由を表す言葉
      前に述べることと後ろで述べることを(話し手の)主観的な
      立場で、結びつける
言葉
という違いがあります。

と、定義しても、分かったような、分からないような・・・という方も
いらっしゃるかもしれません。

では、こんなシチュエーションで考えてみてください。

インフルエンザになった(当然、自宅待機) 

会社を休む(でも、熱は下がって、暇だ)

テレビでも見よう。
 

これを「ので、」と「から、」を使って、文にしてみます。

A)インフルエンザになったので、会社を休んだから、テレビでも見よう。
B)インフルエンザになったから、会社を休んだので、テレビでも見よう。

さて、このA)とB)の文。B)の文を読んだときに何か違和感を覚える方は
多いのではないでしょうか?
ここに「ので、(原因)」と「から、(理由)」の違いがあるのです。

つまり、「会社を休む」ことになった原因は「インフルエンザになった」こと。
「インフルエンザになった」場合は、当然自宅待機ですから、「会社を休む」
ことは客観的な因果関係があります。

一方、「テレビでも見よう」と思った理由は「会社を休んだ」こと。
しかし、「会社を休んだ」ことと「テレビでも見よう」と思うことに客観的な
因果関係はありません。
これは、あくまでも話し手である「私」がそう結びつけたこと(主観)であり、
他の人は「本でも読もう」と思うかもしれないし、「おとなしく寝ていよう」と
思うかもしれません。
ですから、この「会社を休んだ」と「テレビを見よう」を「ので、」で結び
つけたB文に「何か違和感を覚える」のです。

ここで、最初のジョンさんの質問です。

「電車が遅れたので、遅刻しました。」といった場合と、
「電車が遅れたから、遅刻しました。」とでは大きな違いがある
ということです。

「ので、」の方は、「電車が遅れた」ことと「遅刻したこと」は客観的な
因果関係があることを示しています。
(30分前に着くように家を出たのに、電車が1時間も遅れて、遅刻した
とか、電車以外の移動手段がなかったとか・・・)

それに対し、「から、」の方は「電車が遅れた」ことと「遅刻したこと」は
ジョンさんの主観で結び付けられた関係ですから、聞き手から
「じゃあ、なんでもっと早く家を出なかったんだ!」と突っ込まれる可能性が
あるのです。

最近は、「ので、」と言ったほうがいい場合でも、「から、」を使う方が
多いように感じますが、「ので、」を使うか、「から、」を使うかで、
そこには大きな違いが生じます。
「原因」か、「理由」かを考えて、使い分けてみてください。


◆◇◆ 次回(10/13)予告 ◆◇◆

ジョンさん:先生、日本語のテキストには「学校行きます」と書いて
      ありましたが、日本人は「学校行きます」と言います。
     「学校行きます。」と「学校行きます。」は同じですか。
新米先生:え~っと・・・(困ったなぁ・・・)。


答えは、来週13日(火)に!

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。