現役日本語教師の日本語豆知識

「先生のせい」?「先生のおかげ」?

公開日:2015.09.28 更新日:2024.08.29

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

ジョンさん:先生!
      昨日、日本人の友達から「日本語が上手になったね」
      と言われました。
新米先生:そう!それは良かったわね。
ジョンさん:はい!先生のせいです。ありがとうございます。
新米先生:・・・・。先生のせい
     ジョンさん、そういうときは「先生のおかげ」でしょう?
ジョンさん:せんせいのおかげ?どうして?


皆さんが新米先生だったら、「先生のせいです」と言われた時
やはり「ん?」と思いますよね。
そして、少し嫌な気持ちになるかもしれません。

では、なぜ「嫌な気持ち」になるのでしょうか。

実は、この「~せいで」というのは、
自分以外の人・物事が原因で自分が被害や不利益を被った時に使う言葉です。
つまり、「よくない結果、悪い結果の原因はあなただ」と言いたい時に、
私たち日本人は「~せいで」を使っています。
ですから、Aさんが「あなたのせいで」とBさんに言った時、
Aさんのマイナスの心情を聞き手であるBさんは感じ取って、
嫌な気持ちになるのです。

それに対して、「~おかげ」は、「~せいで」と同様、
「自分以外の人・物事が原因」であることを表しますが、
よい結果がもたらされた時に使う言葉です。
つまり、「~せいで」の正反対にあるのが「~のおかげ」というわけです。

ということは、今回のジョンさんの場合、「日本語が上手になったね」と
褒められた(よい結果)→その原因は「先生」ということを言いたいわけですから、「先生のせいです」ではなく、「先生のおかげです」というのが正解です。


最近は、「~おかげ」と「~せいで」の使い方が変な会話を耳にすることも
増えてきました。
しかし、この二つの言葉はどちらも「自分の心情」を表す言葉で、
聞き手も無意識にその心情をキャッチしますから、正しく使い分ける方が、
人間関係がスムーズに行くかもしれませんね。


◆◇◆ 次回(10/6)予告 ◆◇◆

ジョンさん:先生。
      辞書で「~ので、・・」と「~から、 ・・」を調べましたが、
      両方「原因・理由」と書いてあって、分かりません。
      例えば、会社に遅刻した時、
      「電車が遅れたので、遅刻しました」と言うのと、
      「電車が遅れたから、遅刻しました」と言うのは同じですか?
新米先生:ええ。同じですよ。
ベテラン先生:ちょ、ちょっと待って!新米先生!!
      「ので、」と「から、」は同じではありませんよ!!
      「ので、」と「から、」。どちらを使うかで、
      上司に怒られる場合があるんですよ!!
新米先生:えっ!!そうなんですか・・・・。


さて、皆さん。
「ので、」と「から、」。
何が違うのでしょうか。

答えは、来週月曜日に。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。