現役日本語教師の日本語豆知識

「~のほう」は敬語?

公開日:2015.09.24 更新日:2023.04.26

皆さん、シルバーウィークは楽しく過ごされましたか?
(「シルバーウィーク」という言葉はすっかり市民権を得たようですね)

さて、「日本語教室からこんにちは!」は昨日が祝日だったので、
今日更新です。

あるネパール人学習者のインタビューテストをしていた時のことです。

私はネパールのほうから参りました。
今、●●(会社名)のほうで働いています。
「みんなの日本語」の第20課のほうまで勉強しました。
・・・・と「~のほう」を連発する学習者がいました。

テストの後で「~のほう」の使い方がおかしいことを指摘すると、
『え?!「~のほう」は敬語ではありませんか?日本の店でよく聞きます。』
との返事が返ってきました。

う~ん・・・・。
確かに店ではこの「~のほう」を聞きますよね。
一部マスコミでは「バイト敬語と呼ばれているぐらいですから、
何も知らない外国人が聞いたら、「~のほう」をつけると丁寧な表現になると
勘違いしても仕方ないのかもしれません。

「~のほう」はTVや新聞などで「気になる日本語」として取り上げられる言葉
ですが、何も「~のほう」を使った表現の全てが間違いというわけではあり
ません。
「物事をぼかして言ったり、遠まわしに言ったりする」時や
「何かと比較して一方を選ぶ」時に使うのは本来の使い方で、正しいのですが、
そういう必要・対象がない時に使うと、いわゆる「耳障りな日本語」と指摘
されてしまうのです。

ネパール人の彼の場合は、正しい使い方も知っていましたが、普段利用する
スーパーや飲食店でよく耳にする「~のほう」を聞いて、
「~のほう」=「店員が使う言葉」=「敬語」と勘違いしてしまったようです。

外国人に勘違いされるほど日本の店で「~のほう」が使われているのか
わかりませんが、皆さんも機会があれば、気をつけて聞いてみてください。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。