現役日本語教師の日本語豆知識
横断歩道「で」歩きます?
公開日:2015.09.18 更新日:2024.08.29
監修者情報
ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
新米先生:ジョンさん、この作文の日本語は変ですよ。
「私は横断歩道で歩きます」って・・・。
ジョンさん:え?どうしてですか?
だって、「ご飯をレストランで食べます。」、
「テレビを家で見ます。」、「本を図書館で読みます。」・・。
先生は「場所の言葉+で+動詞」と教えましたよ。
「歩く」は動詞だから、「横断歩道で」でしょう?
新米先生:う~ん。そうですが・・・。
日本人は普通「横断歩道を歩きます」と言います。
ジョンさん:横断歩道「を」?
どうして???
さて、皆さん。
どうして「横断歩道で歩く」というと変な感じがするのでしょうか?
実はこの場合、ポイントになるのは、「どんな動詞を使っているか」
という点です。
確かに、新米先生がジョンさんに教えたように、何かの動作をする場所を
表す時は、「場所の言葉+で+動詞」で日本語は表現します。
しかし、その「+動詞」が、「渡る、通る、歩く、走る・・・」など移動を
表す動詞の場合、その移動する場所は「で」ではなく、「を」を使って示す
というルールが日本語にはあります。
例えば、
「川を渡る」とは言いますが、「川で渡る」とは言いませんよね。
また、「道を通る」とは言いますが、「道で通る」とは私たち日本人は
言わないはずです。
なぜなら、「渡る」も「通る」も、ある地点からある地点への移動を表す
動詞だからです。
私たち日本人はこういった「を」や「で」などの「助詞」の使い方を
子供の頃から体得的に身につけてきていますので、いざ説明する
となると「え~っと・・・。」と困ってしまうのですが、だからといって、
日本人は適当に助詞を選んで使っているわけではありません。
「助詞」というと、国語の時間の文法を思いだし、苦手意識を持つ日本人も
多いですが、「どんなルールで使い分けているんだろう」という視点から
見ると、今までとは違う世界が見えてきて、面白いかもしれませんよ。
◆◇◆ 次回(9/28)予告 ◆◇◆
ジョンさん:先生!
昨日、日本人の友達から「日本語が上手になったね」
と言われました。
新米先生:そう!それは良かったわね。
ジョンさん:はい!先生のせいです。ありがとうございます。
新米先生:・・・・。先生のせい?
ジョンさん、そういうときは「先生のおかげ」でしょう?
ジョンさん:せんせいのおかげ?どうして?
皆さん。
確かに「先生のせい」は変ですね。
「せい」と「おかげ」何が違うのでしょうか。
答えは、9月28日(月)に!
この記事の監修者
ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格
《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。
《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。
《監修者からのコメント》
日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。