現役日本語教師の日本語豆知識

自分のことに置き換えてみると・・・

公開日:2015.09.16 更新日:2023.04.26

仕事でAJLTAの日本語教師の方と話す機会がありました。

その方が「日本で日本語が話せるようになると、外国人はどのぐらい
自由になるか」ということを次のような例え話で話してくれました。

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私は免許がないので、車の運転ができませんでした。
だから、家から遠いスーパーで安売りをしている時、「あー、これ欲しいな」
と思っても、ずっと我慢してきました。

どうしても欲しいときは、主人の都合を伺いながら「車、運転して」とお願い
して、買い物に行きました。こうすれば、確かに物は手に入るけど、主人に
気を遣いながら、お願いするという点では不自由でした。
そして、主人がいない時は、やはり我慢しなければなりませんでした。

でも、最近、運転免許をとったんです。
そうしたら、自分が「こうしたい」と思ったときに、自由に行動できるように
なって、とてもうれしかったです。30年間我慢していたことから解放される
喜びですね。


この話の
「運転できない私=日本語が話せない外国人」、
「主人=通訳してくれる日本人」、
「運転できるようになった私=日本語が話せるようになった外国人」

と置き換えてみてください。

そうすると、日本で暮らす外国人の気持ちが少し想像できるでしょう?

私の場合は、「車」だったけど、
外国人は「言葉」。24時間、365日、「我慢」が続くかもしれないのよね。

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この話を聞いたとき、「あ~、なるほど!」と思いました。
実は私もペーパードライバーの為、運転できません。
だから、この先生の「我慢」が良く分かるのです。
そして、これが「言葉」となったら・・・と考えたら、日本で生活する外国人の
気持ちが、前よりも想像しやすくなりました。

「通訳」もいいかもしれないけど、それは結局、その場しのぎ。
本当の便利さや自由はな
んだなぁと。

皆さんも、
「自分のできないこと」、
「だれかに頼まないとできないこと」、
「自分でできるようになったこと」
に置き換えてみると、日本で暮らす外国人の気持ちがリアルなものとして、
感じられるかもしれません。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。