現役日本語教師の日本語豆知識

チョコレートは「枚」?「個」?「本」?

公開日:2015.09.07 更新日:2023.04.26

新米先生:今日は「数」の勉強です。
     鉛筆は「1本」、「2本」、「3本」・・・「本」です。
     は「1枚」、「2枚」、「3枚」・・・「枚」です。
     りんごは「1個」、「2個」、「3個」・・・「個」です。
ジョンさん:うわ~。「本」、「枚」、「個」・・・。難しそうです。
新米先生:そうですね。でも、覚えましょう!
     ボールペンは「●本」です。マーカーも「●本」です。
ジョンさん:書く物は「本」ですか?
新米先生:書く物だけではありませんよ。傘も「●本」です。
ジョンさん:ええっ!?傘も?!


「数」の言葉の勉強。大変そうですね・・・。
この「本」、「個」、「枚」などは「助数詞」と言います。
「助数詞」は「1(一)」、「2(二)」、「3(三)」などの数字の後ろに
ついて、その数字が何の数量を表すかを示す言葉です。

ということは、私たち日本人は「本」、「個」、「枚」という言葉を聞いて、
「あ~、○○の数だね」ということが分かるということです。
しかし、何も知らない外国人は「1本」と言われても、「○○の数」という
ことが分かりませんから、私たち日本語教師はこの「○○の数」は
どういうルールで分類されているかを教える必要があります。

では、皆さん。
「本」、「個」、「枚」はどんな物を数えるときに使っていますか?

こう質問すると、日本人からは次のような答えがよく返ってきます。

「本」・・・細長い物
「個」・・・小さい物
「枚」・・・薄い物

なかなかいい線をいっていますが、こう教えると、実際の生活では不都合な
場面も出てきます。

例えば、「丸太」。私たち日本人は「1、2・・」と数えますが、
丸太を「細長い物」というのは抵抗がありませんか? 
他にも「サッカーボール」は「1、2」と数えますが、
「小さい物」でしょうか?

また、「布団」。「1、2」と数えますが、
「薄い物」と言えるかは「・・・」ではないでしょうか?

こういったこともあり、私たち日本語教師はもっとシンプルに教えます。

「本」・・・長い物
「個」・・・かたまり(の物)
「枚」・・・平たい物

そして、ここでのポイントはこの「本」、「個」、「枚」の使い分けは、
その物の「形状」で分類されているということを理解させることにあります。
(だから、同じチョコレートでも、板チョコだと「枚」、チロルチョコだと「個」、フィンガーチョコレートだと「本」と私たち日本人は無意識に言って
いるんですね)


更に、もう一つ重要なことを教えなければなりません。
日本語の助数詞は約500あると言われています。
しかし、それを全部覚えるのは日本人でも難しいですし、実生活ではほとんど
使われていないものもあります。

では、どうするか?
それは、「本」、「個」、「枚」と色々あるけれど、「物」を数える時には
全て「つ」が使える
(但し、9まで)ことを教えます。

そうすると、外国人も勉強した助数詞を忘れても、とにかく「つ」を使えば、
日本人に「物の数」を伝えることができます。
(日本人も小さい子供は何でも「つ」で数えてますよね)

このように一見難しい「助数詞」ですが、その使い分けにはきちんとした
「分類のルール」があります。
そして、私たち日本人はそれを知らない間にきちんと理解し、使っている
のです。面白いですね。

◆◇◆ 次回(9/14)予告 ◆◇◆

ジョンさん:先生。その赤いスカート、素敵ですね。
新米先生:ありがとう。ジョンさんの緑のシャツも素敵ですよ。
ジョンさん:「緑のシャツ」?「緑いシャツ」ではありませんか?
新米先生:いいえ、ジョンさん。「緑いシャツ」ではありません。
     「緑のシャツ」です。
ジョンさん:先生。
      「赤+い」はいいのに、どうして、「緑+い」は違うのですか?
新米先生:えっ?!?!それは・・・。

さて、皆さん。
「赤い●●」は言えるのに、どうして「緑い●●」は言えないのでしょうか?

答えは、来週月曜日に!

→ルネサンス日本語学院の法人向け日本語研修はこちら

この記事の監修者

監修者の写真

松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。