現役日本語教師の日本語豆知識

「ある」と「いる」の使い分けのルール

公開日:2015.08.24 更新日:2024.05.27

ある」と「いる
日本語を話す人であれば、この二つの言葉を使わない日はないといっても
過言ではない基本的な語彙です。

皆さんは、英語を勉強したとき、「女の人がいます。」も、
「鉛筆があります。」も全て「There is a ・・・・」の文になることに、
『英語は「います」と「あります」は同じなの?」と不思議に思った記憶が
ありますか?

反対に、外国人は『どうして、「います」と「あります」があるの?」と
不思議に思っている
のです。

では、この「ある」と「いる」。
日本人はどのように使い分けているのでしょうか。
新米先生の授業を覗いてみましょう。

新米 先生:「教室に椅子があります。」、「机の上に鉛筆があります。」
      「教室にジョンさんがいます。」、「庭に犬がいます。」
ジョンさん:先生!「あります」と「います」は何が違いますか?
新米先生:います」は「生き物に使います。
     あります。」は「生き物ではないものに使います。

(数日後。ジョンさんと新米先生が公園を歩いています)

ジョンさん:先生、公園に子供がいますね。犬もいますね。
      あ、チューリップもいます
新米先生:ジョンさん、「チューリップもありま」ですよ。
ジョンさん:??? どうしてですか。
      先生は、「生き物」は「いる」と教えました。
      チューリップは「生き物ですよ。
新米先生:そうですが・・・。「チューリップ」は「あります」です!!!
ジョンさん:え~っ??? どうして???

新米先生、すいぶん乱暴な教え方をしてしまいました。
ジョンさんも納得できない様子です。

では、皆さんも日本語教師になったつもりで考えてみてください。
どうして、「チューリップ」は生き物(生物)なのに、「います」ではなく、
「あります」なのか?

実は、このある」と「いる
単に、「生物」か、「無生物」かという単純な使い分けではありません。
私たち日本人は、動くのか、動かないのかで、この「ある」と「いる」を
無意識に使い分けています。

例えば、次の例文を読んで、その場面をイメージしてみてください。

① 寿司屋の張り紙
   A)マグロ、あります
   B)マグロ、います

② ロボット博物館に行った子供の話
   A)博物館にロボットがたくさんあったよ!
   B)博物館にロボットがたくさんいたよ!

③ 道路でお母さんが子供に注意する場面
   A)ほら!自転車あるから、気をつけて!
   B)ほら!自転車いるから、気をつけて!

この①~③の例文。
A)のある」を使っている時は、「マグロ、ロボット、自転車」は
動いていなと感じますが、
B)のいる」を使っている時は、それぞれが動いている場面をイメージ
しませんか?

ここまで考えると、なぜ、「チューリップがいます。」ではないのかも、
納得できますよね。
植物は「生き物」ですが、「動かない」ので、「いる」ではなく、「ある」を
私たち日本人は使うのです。

毎日必ず使っている「ある」と「いる」。
今日は、自分がどう使い分けているかを「動く?動かない?」という視点で
意識してみてください。

(おまけ)
特に、慌てて電車のホームや、バス停に駆け込む時や、タクシー乗り場に行く
時がお勧めです。無意識に
「あ~!電車(バス)、まだいる!よかった~」とか、「タクシー、いる?」
なんて私たち日本人は話していますよ♪


◆◇◆ 次回(8/31)予告 ◆◇◆

ジョンさん:鉛筆が1ぽん、2ほん、3ぼん、4
新米先生:ジョンさん。「4ぽん」ではありません。「4ほん」です。
ジョンさん:4ほん、5ぼん
新米先生:ジョンさん。「5ぼん」ではありません。「5ほん」です。
ジョンさん:うわー!!! ぽん、ほん、ぼん」、分かりません

さて、「ほん、ぽん、ぼん」。どんなルールがありますか?答えは1週間後に。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。