現役日本語教師の日本語豆知識

「○」と「×」

公開日:2015.08.19 更新日:2023.04.26

私が日本語教師になったばかりの頃のある授業での出来事です。

その日はテストの返却日だったのですが、タイから来た学習者が
返却された答案用紙を見て、ちょっとびっくりした顔をしました。

その学習者のテストは正解率80%以上で、とても素晴らしいもの
だったのですが、彼の顔は「喜び」というより、「戸惑い」の顔でした。

そして、とても不安そうな声で、
「先生、これはどこが正しくないのですか?」と
正解の「○」がついている答えを指差し、聞いてきたのです。

私は『その答えは正しいですよ。「○」のマークがあるでしょう』と
返事をしたら、
彼が『えっ?? 「○」は正しいマークですか?? 』と驚きの発声。

なんでも、タイでは「○=正しくない答え」の意味なのだそうです。

つまり、正解率80%以上の解答用紙は「○」がたくさん並んでいますから、
それを見たタイの学習者は正反対の意味で捉えて「戸惑い」の表情を浮かべたと
いうわけです(相当ショックを受けたようです)。

私もびっくりしました。
「○」と「×」は世界共通の採点記号だと思っていたので。

日本語教師になって知ったのですが、
「○=正しい答え」は世界では少数派のようです。
多いのは「✔=正しい答え」または、正しい答えには何もマークをつけなで、
間違っている答えに「×」や「○(ここは正しくないの意味でつけるようです)」
をつけるというパターンが多いようです。

「✔」マークを見たら、日本人は「ガーン・・。間違っている」と
思ってしまいますよね・・・。

日本人の皆さん。
海外でテストを受ける機会があったら、「✔」マークを見ても、
ショックを受けないでくださいね♪

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。