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「ここ/そこ/あそこ」の使い分けのルール
皆さん、こんにちは。
お盆休みはゆっくりと過ごすことができましたでしょうか?
さて、先週の予告通り、今日から毎週月曜日は
「日本人が知らない日本語の仕組み」をご紹介していきます。
ぜひ、皆さんも「外国人に日本語を教える」つもりで、考えてみてください。
今日は、「ここ/そこ/あそこ」の使い方です。
ここは教室です。/そこは廊下です。/あそこはトイレです。
多くの日本語のテキストでは、非常に早い段階でこの「ここ/そこ/あそこ」を
教えます。
では、皆さん。日本語教師になったつもりで、考えてみてください。
ジョンさん:先生、「ここ/そこ/あそこ」はどう違うのですか?
新米先生:「ここ=近い所/そこ=中くらいの所/あそこ=遠い所」ですよ。
ジョンさん:そうですか。
(数日後。ジョンさんは今、ブラジルを旅行中で、日本にいる新米先生に電話を
かけてきました)
ジョンさん:先生。こんにちは!ここは今午前8時ですよ。
あそこは何時ですか?
新米先生:あそこ?ジョンさん、「あそこ」ってどこ?
ジョンさん:??? もちろん、日本ですよ。
新米先生:・・・。ジョンさん。
そういう時は、「あそこ」ではありません。「そこ」です。
ジョンさん:「そこ」?どうして?日本はブラジルからとても遠い所ですよ。
先生は「あそこ=遠い所」と教えました。
だから、「あそこ」でしょう?
新米先生:・・・・・。
さて、皆さん。新米先生の教え方。どこが悪かったのでしょうか?
日本人に「ここ/そこ/あそこ」はどう違いますか?と質問すると、
多くの場合、新米先生同様、
「ここ=近い所/そこ=中くらいの所/あそこ=遠い所」という答えが
返ってきます。
しかし、実は、
ここ=話し手(自分)の周囲
そこ=聞き手(相手)の周囲
あそこ=話し手(自分)からも、聞き手(相手)からも離れている所
という使い分けのルールがあるのです。
ですから、ブラジルにいるジョンさん(話し手)は、今自分がいる所を
「ここ」と言いますが、聞き手である新米先生がいる日本は「聞き手(相手)の
周囲」ですから、「あそこ」ではなく、「そこ」と言わないと、変な日本語になってしまうのです。
「ここ/そこ/あそこ」のような言葉を「こそあど言葉」と言います。
例えば、「これ/それ/あれ」や、「こちら/そちら/あちら」なども
そうです。
言葉自体は変わっても、
「こ」=話し手(自分)の周辺の事柄
「そ」=聞き手(相手)の周辺の事柄
「あ」=話し手(自分)からも、聞き手(相手)からも距離がある事柄
という「こ・そ・あ」の使い分けのルールは変わりません。
今日は、皆さんもぜひ、自分が無意識に使い分けているこのルールを意識して
みてください。
◆◇◆ 次回予告 ◆◇◆
ジョンさん:先生、公園に子供がいますね。犬もいますね。
あ、チューリップもいます。
新米先生:ジョンさん、「チューリップもあります」ですよ。
ジョンさん:???どうしてですか。
先生は、「生き物」は「いる」と教えました。
チューリップは「生き物」ですよ。
さて、皆さん。
どうして、「チューリップもいます」では間違いなのでしょうか。
答えは、1週間後(8月24日)に。