現役日本語教師の日本語豆知識

それは「アイ」です。~ありがた迷惑なローマ字ルビ~

公開日:2015.08.05 更新日:2023.04.26

ある授業の1コマです。

教師:(ひらがなの「い」のカードを持って)これは なんですか。
学習者:それは 「アイ」です。
教師:??? いいえ、「アイ」ではありません。
学習者:??? 「アイ」です・・・。

さて、皆さん。
このやり取り。教師も、学習者もお互いに「???」と感じていますが、
理由がわかりますか?

実は、これ。
ひらがなをローマ字ルビ付きで覚えてきた学習者によく反応なのです。

日本語のひらがなを勉強するための教材には、ひらがな文字の横にローマ字が
振ってあることがよくあります。

でも、い」の横に「i」とあった時、それが「い」と読めるのは日本人だけ
です。

「なぜ?」と思った方。ちょっと、考えてみてください。
「i」と単独表示されていたら、「アイ」と読みませんか?
私たちはアルファベットを習ったとき、「i」は「アイ」と読むと教えられた
はずです。
ですから、外国人は「い(i)」と書かれていたら、「い=アイ」と読んでしまうのです。

本当に、ありがた迷惑なローマ字ルビです。

実際に、ローマ字ルビ(?)が振ってあるテキストを読ませると、
ゆき(YUKI:雪)」は「ユーカイ 、
あお(AO:青)」は「エイオ
と読みます・・・。

ちなみに、先生の話した言葉をアルファベットでメモをしている学習者の
ノートを見ると、いいえ」は「EEAと書いたりしています・・・。

これから日本語を教えようと考えている皆さん。
ローマ字でルビを振ってあげれば、読める」なんて、
決して思わないでください

ローマ字が読めるのは日本人だけです!!

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。