現役日本語教師の日本語豆知識
日本語教師ってどんな仕事?第16回 日本語は本当に難しいのか?
公開日:2015.08.03 更新日:2023.04.26
監修者情報
ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
「日本語教師をしています」と日本人に話すと、よく返ってくる反応が、
「日本語って難しいですよね~」というもの。
正直なところ、この反応には戸惑ってしまいます。
「そうかな・・??日本語って、本当に難しいのかな?」と。
日本語教師であり、フランス語教師でもある野口恵子さんが、ご自身の著書
「かなり気がかりな日本語」(集英社新書)でこんなことを書いています。
「日本語が難しい」というのは神話である。
(以下、本文から引用)
「日本語が難しい」というのは、一部の日本人が信じている、あるいは
信じたいと思っている神話の一つである。
(中略)
「外国語としての日本語」という視点から母語を眺めたときに、それまで
知らなかった、というより意識していなかった日本語のしくみに目を開か
されることはありうる。その感想が「日本語は難しい」「日本語は奥が深い」
ではあまりにも短絡的だ。
(中略)
また、まことしやかに伝えられる「日本語は世界で一番難しい言語」という
虚妄を信じることは、たとえ本人が意識していなくても、
「外国人にはこの奥深い日本語をマスターすることは到底無理だろう」という
優越感の裏返しである。その証拠に、
外国人学習者は「日本語はそんなに難しくない。(後略)」と話す
(中略)
この「難しい」という形容詞は、十分に理解しているつもりだったことを
実はよく把握していなかったとわかったショックから出た言葉であり、
一種の照れ隠し、もしくは責任転嫁ともとれる。
う~ん。同感です。
日本語教師になる前、そして、日本語教師の勉強をしている時、
何度も「日本語は難しい」と思い、口にしました。でも、そういう時は
確かに「日本人なのに答えられなかった自分への照れ隠し」が多分にあった
と思います(今でも、「難しい」と思うときは、そういう心境の時です)。
実際、私の教えてきた生徒たちも「日本語は簡単」、「英語よりはるかに簡単」
という人は多いです。
日本語教師は、この「難しい」という言葉に表現される「自分自身への言い訳(?)」をせず、「外国語としての日本語」を考えていくことが、求められる
のかと思います。
この記事の監修者
ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師
《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格
《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。
《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。
《監修者からのコメント》
日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。