現役日本語教師の日本語豆知識

「ひらがな」と「カタカナ」

公開日:2015.07.29 更新日:2023.04.26

「わたしは ジょンです。」

皆さん。ミスタイプではありません。
実際に日本語を勉強する学習者(特に、独学)によくある書き方です。


多くの初級テキストでは、表紙を開くと、当たり前のように
「ひらがな」表と「カタカナ」表があります。
そして、第1課から
「わたしは たなかです。あなたは ジョンです。」
何の説明もなしに、「ひらがな」と「カタカナ」の区別をつけて
書いています。

実は、これは とても危険なことです。
私たちが教える学習者の中には、「ひらがな」と「カタカナ」を独学で事前に
勉強してくる方が多くいます。それはそれでいいのかもしれませんが、
問題は字形と読み方」しか覚えてこないことです。

そういう学習者の場合、「カタカナ」は「ひらがな」を忘れたときの代わり
(または、その反対)という感覚を持っていることが多いです。

だから、「じょン」とか、「ビーる」とか、日本人から見たら、「・・・」の
表記をします。

カタカナを教えるときは、「字形や読み方」を教えるのは当然ですが、
それ以上に大切なのは、「カタカナは何を表記する時に使うのか
ということです。

日本人の名前は「たなか たろう」、「やまだ はなこ」と「ひらがな」で
書くのに、なぜ、外国人の名前は「ばらく おばま」とか、「ぱく くね」と
書かないのか?

なぜ、中華料理店の漢字のふりがなは「ちんじゃおろーすー」ではなく、
「チンジャオロースー」なのか・・・ということです。

これをきちんと教えないと、「カタカナ」を教えたことにはならないと
私は思うのです。

しかし、そんな説明が書いてある初級のテキストは、ほとんどありません。
だから、学習者の中には、『どうしてカタカナで書いてあるの?』というような
質問をしてくる人もいます。
いきなり第1課から「ひらがな」と「カタカナ」を使い分けるのであれば、
「カタカナ」は何に使うのか?の説明ぐらいあってもいいと思うのですが・・・。

そんなこと習うより慣れろ!ってことでしょうか。

将来、日本語を教える皆さん。
カタカナを教えるときは、何をカタカナで書くのかもセットで教えてあげて
ください。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。