現役日本語教師の日本語豆知識

訳せているようで、訳せていない現実

公開日:2015.07.22 更新日:2023.04.26


私たち日本語教師は「日本語を日本語で」教えていますが、
それには色々な理由があります。
一番の理由は、
ある日本語を他の言語に訳した場合、必ずしもそれと同じとは限らない
からです。

例えば、私たちは学校の英語の授業で「maybe=たぶん」と習いましたが、
ある英語の専門家に聞いた話では
日本語の「たぶん」と英語の「maybe」は同じイメージではない
そうです。

どういうことかと言うと、
私たちが「たぶん、行きますよ」と言う時は、
行く確率は「高い(80%くらい)」ですが、
英語で「maybe」を使うときは、
行く確率は「低い(50%以下」そうです。

うーん・・・。
そうなると、日本語を教えるときに「たぶん=maybeです」なんて教えたら、
大変なことになってしまいますね。
特に、仕事で日本語を使う人たちは、こんな風に教えられたら、
後々職場でトラブルになりそうです・・・。

以前、メジャーリーグのある日本人選手がTVのインタビューで、
アメリカ人の記者から「次は勝ちますか?」と聞かれ、
「たぶんね。Maybe」と答えていましたが、
これを聞いたアメリカ人は「頼りない答え・・・」と感じたでしょうね・・・。

この話を聞いて、
言葉はその言葉で勉強するのが一番
という直接法(他の言語に訳さないで教える方法)の大切さを痛感しました。

日本語を教えるときはもちろんですが、私たちが何か他の言語を学ぶときも、
この「訳せているようで、訳せていない現実」を常に意識しなくてはと、
自分に言い聞かせる毎日です。

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。