現役日本語教師の日本語豆知識

日・日通訳

公開日:2015.07.08 更新日:2023.04.26

日本語教師を長くしていると、特殊な(?)能力が身につきます。
その一つが「日・日通訳」。

日本語の勉強を始めたばかりの学習者は、語彙や文型などが少ないため、
日本語で十分に意思表示できません。
それでも、勉強した文型、語彙を駆使して、日本語でコミュニケーションを
とろうとしてきます。

例えば、
覚える」を知らなければ、「ひらがなを頭に入れます。」と言ったり、
「頭の中が混乱している」ということを言いたい時に「私の頭は台風です。」と言ったりというように。

日本語教師になりたてのころは、こういう学習者が話す日本語を理解することが
できないことも多かったのですが、いつの間にか、
「あー、こういうこと言いたいんだな」と分かるようになりました。

そうしたら、「通訳」のようなことが増えました。

日本語教師と学習者が日本語で話しているのを見ると、
周りの日本人も「日本語わかるんだ!」と思って、彼らに日本語で話しかけて
きます。

もちろん、日本人はなるべくやさしい日本語で、ゆっくりと話しかけるのですが、学習者には通じない・・・ということが多いです。

そこで、日本語教師が「あのね・・」ということで話すと、
なぜか通じてしまうのです。
周りの日本人は「どうして、先生が話すと、通じるんですか??」と
とても不思議な顔をします。

この「日・日通訳」。ちょっとしたコツがあります。
それは、できるだけ「単文で話す」ということ。

頭が痛いから、家に帰って、病院に行きます」と文をつなげて言わずに
頭が痛いです。」
家に帰ります。」
病院に行きます。」
とできる限りシンプルな単文で伝えます。
そうすると、大体の学習者は理解できます。

これから日本語教師を目指そうという方。
職場の同僚や知り合いに日本語があまり話せない外国人がいるという方。

ぜひ、この「単文 日・日通訳」を使って、困っている外国人と日本人を助けて
あげてください★

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この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。