現役日本語教師の日本語豆知識

先生、字引を貸してください。

公開日:2015.06.03 更新日:2023.04.26

私たちが日々日本語を教えている学習者の中には、日本に来る前に
自分の国で日本語を勉強してくる人たちも多くいます。

そういう学習者に教えていると、時々
「あなたはいったいどんな人に日本語を教えてもらったの?」と
思う時があります。

ある国の外交官たちに日本語を教えていた時のことです。

外交官たち:「先生、字引を貸してください。」
私    :「えっ?!字引?!?!」
外交官たち:「はい。字引です。」

「字引」って・・・。間違ってはいませんが、あまり使いませんよね・・・。

更に続きます。
外交官たち:「先生、コートはこの衣紋掛けにかけてください。」
私    :「衣紋掛け・・・(これまた、古風な言い方ですねぇ)。」

今の日本人の若者は「衣紋掛け」といっても、分からないかもしれません。

他に、こんなこともありました。
来日前に、同じ学校で日本語を勉強してきたというある国の学習者たちは、

あたしの名前は ○○です。あたしは ○歳です。
 あたしの趣味は ○○です・・・。」

となぜか全員「わたし」ではなく、「あたし」と言います。
しかも、全員男性だったので、聞いている私は段々妙な気分に・・・。


学習者の使う日本語を通して、
「この人たちの先生は ○○な人だったのかな~」と
色々想像してしまいます。

こう書くと笑い話ですが、自分も他の先生方にそう思われないように
気をつけなければ!!

(余談)
以前、イギリスに行った時、ロンドンのJapan Centerに
ゴルゴ13で学ぶ日本語
というテキストが売れ筋商品としてありました。
このテキストを買った人たちは、いったいどんな日本語を
勉強するのでしょうか・・・・。

→ルネサンス日本語学院の法人向け日本語研修はこちら

この記事の監修者

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松田 良子 Ryoko Matsuda

ルネサンス日本語学院 日本語教師養成講座講師

《資格》日本語教師養成課程修了・日本語教育能力検定試験合格

《経歴》日本語教師養成講座を修了後、約30年に渡り、大使館、留学生、インターナショナルスクール、企業などで日本語教育に従事。また、(社)国際日本語普及協会の「地域日本語教育コーディネーター研修」修了後は、地域の日本語教育、ボランティア支援や教育委員会日本語研修プログラム、NHK文化センター、一部上場企業などへの日本語教育コーディネイトや日本語教師養成に携わり、日本語教育総合支援など多方面で活躍中。

《専門分野》就労者・生活者・年少者に対する日本語教育。

《監修者からのコメント》

日本語教師の勉強は、「知識」だけでも、「技術」だけでもだめです。 両方揃って初めて「学習者」という同乗者が安心して授業を受けられます。単なる知識の講座ではなく、皆さんより少し先を歩く私たち現役日本語教師が考え、悩み、苦労してたどり着いた答えを多く取り入れた「現場目線」を意識しています。
私自身、国語教師を目指し、日本語の文法にも自信があったにもかかわらず、「こんにちは。」の使い方を外国人に教えられなかった…というショックから、「日本語」に興味を持ち、日本語教師になりました。日本語教育業界は、わかりやすそうでわかりにくいですから、この業界の専門知識のある人に相談することがおすすめです。ぜひお気軽にお問い合わせください。